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#4‐04 ルークタラス城の新住人①

 ゲネンドル王ならびにマイテ王妃たちとの話し合いの結果、ゲネンドル王とマイテ王妃― いや、彼らは「もう私たちは王でも王妃でもないので、その敬称は使わないでください」と頼まれたので、ゲネンドル殿、マイテさま、ラーニアさま、モナさまと呼ぶことになったのだが。

 

 ゲネンドルとマイテはヤーダマーの塔に住み続けることになった。

ゲネンドルは、今さら私がルークタラス城などに行けば、元ブレストピア国の貴族たちがブレストピア国を再興しようなどと言い出すかも知れないので、出来るだけ人目につかず穏便に暮らしたいというのがゲネンドルの考えで、マイテたちも彼の考えに同意した。

 

 ルークの妻になることが決まったルナレイラ王女はルークタラス城に住むことになり、弟のカレブも勉学のためにルークタラス城に住むことになった。

「ルナレイラとカリブと離れるのはさびしいですけど、たまに会いに来てもらえるのなら我慢できますわ」

マイテはそう言って微笑んだ。

 あとで知ったことだが、ゲネンドル王には五つ年下のクレメアという、王がとても愛していた王妃がいたそうだが、三人目の子どもを産む時に難産で母子とも死んでしまったそうだ。


 さらにゲネンドル王の悲運は続き、長男のジルド王子と次男のクリュード王子を相次いで病気で亡くした。悲嘆にくれるゲネンドル王を慰めたのが、クレメア王妃の侍女であったマイテだった。 

マイテは侍女たちの中ではもっとも若く、マイテ自身、妃になろうなどという下心などもってなかった。

 しかし、若く美しく心優しいマイテを見て年配の侍女たちは「ゲネンドル王陛下がクレメア王妃さまと王子さまたちを失われた悲しさを少しでも忘れることができるように」と言って、ゲネンドル王の愛妾とならせた。


 そのあとで、年配の侍女たちはラーニアとモナもゲネンドル王の愛妾にし、マイテがルナレイラを産んだ時に正式にマイテとラーニアとモナを王妃にしたのだそうだ。

周囲の者は、侍女を王妃にするなどとんでもない!と猛反対したそうだが、「マイテたちの献身に対して王妃にするのが当然である!」との一言でゲネンドル王は反対意見を抑え込んで簡単に結婚式をして、王妃にしたそうだ。


 東ディアローム帝国への亡命に失敗し、ヤーダマーの塔に住むことになったゲネンドル王は、つくづく王として暮らすのが嫌になり、庭いじりを楽しみにするようになり、妻のマイテもルナレイラとカレブも両親といっしょに庭の手入れをするようになった。

 また、使用人も少ないこともあり、ラーニアとモナも娘たちといっしょに、炊事や洗濯などをするようになったという。



 ルークタラス城の中にそれぞれ部屋をあたえられたゲネンドル元王の第三王妃ラーニアと第四王妃モナと彼女たちの子どもたち。

ルークの許嫁となったルナレイラは別格で広い部屋をルーク王の王妃たちと同じ区域にあたえられたが、カリブはルークタラス城にいる間はラーニアが面倒を見ると言うので、ラーニアたちといっしょに暮らすことになった。ラーニアの二人の娘― アリシアとビアとはおたがい異母兄妹なので仲がいいのでまったく問題がない。


 ラーニアとモナは城で半年間教師としての訓練を受け、王室専用教師になることが決まった。

当面の間はアマンダの息子ルファエルとプリシルの娘マイレィの教育を担当することになるが、ほかの大臣の子どもたち、それに彼女たちの子どもにも教えることになった。


 ラーニアもモナもまだ若いので、週末には子どもたちを連れてドコデモボードでヤーダマーの塔へ行き、そこでゲネンドルやマイテたちと家族そろって団らんを過ごすことになった。

 ルナレイラも2週間に一度は両親を訪問するようになったが、その時は“将来のルーク王妃”として、20騎のガバロス騎士たちが護衛について来た。


 ゲネンドルもマイテも驚いたが、ルーク王がそれほどわが娘を大事にしてくれていると知って、感涙を抑えきれなかった。

「ルーク王の軍がブレストピア国に攻め入って来た時は、どこの馬の骨とも知らん強欲なヤツに歴史あるブレストピア国を占領されてなるものか!と思った。そして、不運にもブレストピア国が占領されたあとも、ルーク王が憎くてしかたがなかったが、こうして後生をここで愛する妻たちといっしょに、毎日花や木などと話しながら平穏に暮らすようになると、これが本当の幸せと言うものかもしれないと思えるようになったよ...」


 ある週末に一家そろって楽しい夕食をしながら、ゲネンドルはしみじみと言った。

「デルンさま、後生などという言葉を使わないでください。デルンさまは、まだお若いのですし、ルナレイラがルーク王さまと結婚し、子どもが生まれたら孫も見れるのですから」

「そうですわ。ルークタラス城では、みなさん、私たちにとてもよくしてくださっていますし、アリシアもビアもソフィエッタさんやリエルさんととても仲良くなって、毎日楽しく暮らしています」


「ふふふ... アリシアちゃんもビアちゃんもかなりルーク王さまのことがお気に入りみたいで、勉強が終わったあとはリエルさんやソフィエッタさんといっしょにルーク王さまから離れないのですよ!」

「あーん、お母さま、そんなことお父さまにおっしゃらないで!恥ずかしいわ!」

「アリシアお姉さまは、そんなこと言っているけど、いつもソフィエッタさんやリエルさんといっしょにルーク王さまに抱きついているのよ!」

「えっ? ルーク王さまにアリシアが抱かれている?」

「アリシアちゃんが?!」

ラーニアとモナが驚く。


「だって、ルーク王さまって恰好いいんですもの... あ、違います、違いますっ! ただハグしてもらっているだけですっ!」

アリシアが母とモナが勘違いをしているのに気づいて真っ赤になって弁明する。

「それに、ルーク王さまにハグされるのは私だけじゃなくて、ビアもエリゼッテちゃんもいつもルークさまのひざの上に乗っているわ!」

「エリゼッテちゃん?」

「あ、 ボードニアン王国の王女リエルさんの妹さんで、ずーっとルークさまのお城に住んでいるのよ!」

「それだけ私はルークさまに気にいられているってことよ!」


エリゼッテは「わたしも将来性のあるルークさまの王妃になるの!」とちゃっかりルークタラス城に姉といっしょに住みこんでいる現在13歳のボードニアン王国の王女だ。

エリゼッテの話は無視して、ビアの答えに反発したアリシアが口を尖らせる。

「何を言っているの? 私の方が胸がもう大きくなっているから、ルークさまは私の方がお気に入りなのよ!」

「あらあら、胸の大きさでルーク王さまの女性の好みが決まるのなら、この中ではルナレイラが一番じゃなくて?」

 

 ラーニアの言葉に、みんなが一斉にルナレイラの胸を見る。

たしかに、ルナレイラの胸は母親のマイテのより大きい。マイテはエルフ族なので胸はそれほど大きくはないのだが、ルナレイラはライオン族であるゲネンドルの血を受け継いでいるためか、誰が見てもわかるほど豊かな胸をもっていた。


「み、みんな、そんなに私の胸を見ないで!」

真っ赤になって両腕で胸を隠すルナレイラだった。


「ルーク王さまは、きっとルナレイラちゃんの美しさと胸の立派さにコロリとなったのでしょうね!」

「オーホッホッホッ そうに違いありませんわ!」

「マイテさまがお認めになったのですから、その通りでしょう! ほーほほほほ!」

「やだ―っ!お母さまもラーニアさんもモナさんも止めてください!」


ワーッハッハッハッハ!

きゃーっはっはっは!

キャハハハハハ!

ワ――イ、ルナレイラお姉ちゃんが、真っ赤になった!

はーっはっはっは!

やめて―! やめて―!

ハーハッハッハッハ!


久しぶりに笑いがはじけるゲネンドル一家だった。




 しかし―

ルークタラス城に帰れば、ルナレイラにとっては厳しい毎日がまっていた。


 それは... 

花嫁修業だった?!


ブレストピア国はなくなったとは言え、ルークは元王と王妃であったゲネンドルとマイテに敬意を表する意味からも、「王族にふさわしい結婚式を」というアマンダたちの助言もあり、リリスとハウェンの監修のもと、ルークドゥル勇者王国の王妃としてふさわしい礼儀作法、食事のマナー、音楽、踊り、絵画といった一般教養のほか、経営学、哲学、さらには軍事学― これはアマンダが必須科目として入れたものだが、王妃たちを戦に送り出すためではなく、戦とはどういうものかを教えるためだった― までも教え込まれた。


 ルナレイラたちゲネンドル王の娘たちは、ブレストピア国で一応花嫁修業みたいなことを習わされていたが、それは主に読み書き、計算、縫い物、刺繍、家庭管理といった一般教養だった。

 もちろん、それはルナレイラだけでなく、アリシアとビアもその課程に組み入れられたし、リエルやミカエラ、アレク、アガリなど例外ではなかった。


 アマンダたちは、宮殿の奥で贅沢に暮らし、子どもを産むだけの王妃ではダメだとの認識のもと王妃や王妃候補者たちを徹底的に訓練したのだ。

 城での修行のほか、実地に『モンスタイル工房』で最新のファッションがどのようにして創られているかを学び、国営の裁縫工場― 例のミシンが毎日フル稼働をしている工場だ― で、一ヶ月間、裁縫職人として働かされた。


「いいこと? ルークドゥル勇者王国の王妃となる女性は、ただのお飾りではないのよ。しっかりと教養をつけることはもちろん、ルーク王さまがもっとも力を入れていらっしゃる事業も実際に体験し、自分の腕を使って何かを産む出すということがどれほど大変かを職人の仕事をして経験するのよ」

「そうすることで、自分の得手不得手もわかるから、どの事業でもっともルーク王さまに貢献できるかわかるし、庶民の暮らしがわかる王妃にもなれるの」


アマンダやプリシルたちは、そう言ってビシビシとルナレイラたちを鍛えた。




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