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#3‐31 ヴァスマーヤ②

 ルークが、新たにアルドラルビダカの魔術師ヴァスマーヤを妻にすると言ったことから、モモコ大王が嫉妬をし、モモコ大王を今まで通りにかわいがらなければ首の骨を折る、と脅したことにアマンダが怒って剣の柄を握った。


「まあ、まあ、アマンダさまもモモコ大王さまも気を静めてください。ルークさまは、決して妻たちの誰一人も(おろそ)かにはしませんわ!」

「そうですわ。それは、プリシルさまも、わたしもハウェンもよく存じ上げていますもの!」

リリスもアマンダとモモコ大王の中にはいる。


「プリシルたちがそこまで言うのなら、お前たちに免じてルークを信用することにしよう。だが...」

「だが、何ですか?」

またアマンダがキッとなった。


「やめなさい、アマンダもモモコも!」

ルークが低いが迫力のある声で言った。


「申し訳ありませんっ!」

アマンダがガバっと床にひれ伏した。

「うっ... 悪かった。あやまる。ごめん、アマンダ」

それを見たモモコ大王も頭を垂れ、アマンダに謝った。


 ベッドの上にいたヴァスマーヤも、アンジェリーヌたちも、ルークの迫力に驚いた。

彼女たちは今まで一回もルークがそんなに迫力をもつということを知らなかったのだ。

“無双の剣士”と評判高いアマンダが床にひれ伏し、テルース世界最強の戦士と呼ばれるモモコ大王までもがたちまち自分の非を認め、さらにアマンダに謝ったのだ。

気高いモモコ大王が、そのようなことをするのを見た者は未だかっていない。


 そう。

アマンダたち前の世界からルークの妻であった彼女たちは、ルークが元魔王であった時は、気にいらない者がいれば誰人といわずたちまち殺させるほど恐ろしい存在であり、彼自身もとててもない魔術能力をもっていたことを知っているのだ。

 アンジェリーヌたちは、そのことを知らない。だが、モモコは本能から、ルークが秘めている力を感じとったのだ。



「あ、そうそう。まだマーヤさんには伝えてなかったけれど、あなたの仲間のユビィラさんたちは、みんな無事でいますから安心なさってね!」

その場の空気をやわらげようと、アイフィがにこにこと笑ってヴァスマーヤに知らせた。

「えっ、ユビィラ、クヴァシル、ヘーニル、ミーミル、フロルフ、それにラーンたち全員無事なんですか?」

「うーん... 全員かどうかわかりませんけど、みなさんルークタラスの町にある兵舎にいますわ」

「先ほど、マーヤさんが目を覚ましましたって知らせに行かせたので、もうすぐこちらに来られると思いますわ。あ、私はアガリです。ルーク王さまの13番目の妻です。よろしくね、14番さん!」

「え? 14番?」



1人、2人、3人...

ヴァスマーヤは素早く部屋の中にいる女性を数えた。

たしかに13人いる!!


「さて、では新しく妻となる美女が元気なこともわかったし、アマンダとモモコをもっと仲良くするために、二人を私の寝室へ案内するかな?」

「なにっ、私とアマンダを?」

「え?」

モモコ大王とアマンダが驚く。


「嫌かね?」

「行く行く!」

「行きます!」

「じゃあ、行こう!」


そう言うと、ルークは右手でモモコの手を握り、左手でアマンダの手を握って部屋から出て行った。

出る前にヴァスマーヤをふり返って言った。


「その後はマーヤの番だよ!」


「え? わたしの番...?」




 それからが大変だった。


経験のないヴァスマーヤは、ルークの言ったことの意味がよく理解できなかった。



 しかし― 


 プリシルたちは十分すぎるほど理解していた。

ルークさまは、ヴァスマーヤを“初夜のために準備しろ”と言われたのだと。


 アマンダとモモコがルークに連れて行かれたため、プリシルたちベテラン妻たちがアンジェリーヌたちヴァスマーヤを指導して、新妻になるべく整えることになった。


 と言っても、十数人も必要ないので、まだ未婚のリエルやアイフィのように別の役職― 神教官―をもっているアイフィなどは退室させて、6人でその準備をすることになった。

残りは野次馬となって見物だ。


 そして、ヴァスマーヤはまるで“お人形さんごっこ”のお人形のように着ていた服を脱がされ、バスタブに入れられ、隅から隅まで洗われた。

もちろんヴァスマーヤはモノを言わないお人形ではないので、やかましいほど声を出した。


ネグリジェを脱がされながら― 

「あれっ、あれ―っ、恥ずかしいです、恥ずかしいですっ」


ブラを外され、パンティを脱がされ― 

「キャーっ!やめてください、やめてくださいっ!」


アレクとアガリに両手両足をつかまれて裸でバスルームに連れて行かれ― 

「キャアアアア―――!」


ジョスリーヌとソフィエッタに体中をゴシゴシと石鹸で洗われ― 

「アハハ くすぐったい やめて―!」


そのあとで、洗い方が足りないとプリシルとリリスに、ていねいに洗われ― 

「あはぁん うふぅん くすぐったいです」


まだまだ洗い足りないとハウェンとアンジェリーヌにアソコやココを洗われ…

「ああはぁん うふふぅん...もうだめですゥ...」


 バスタブでヴァスマーヤを磨き終わったときは、全員、バスタブに入ったみたいにずぶぬれになっていた?

 ヴァスマーヤの方は、体中をあまりていねいに洗われすぎたので気持ちよくなりすぎて茫然となって、真っ裸で、その美しい体をさらけ出してベッドで横になっていた。

もう、みんなには裸を見られすぎたので、羞恥心など100万光年のかなたに飛んでしまっていた。


「なるほどね... たしかに美形だわ」

「本当ですわね。まるで、最初に魔王、あ、間違えた、ルークさまのところに連れて来られた時のリリスさんとハウェンさんみたいですわね!」

「プリシルさん、懐かしいことを思い出させないでください」

「あの頃は私たちも若かったですわね...」



  …… ◇ ……



 プリシルが最初にルークに会った時は15歳だった。

彼女が魔王であったルークの愛妾となってからしばらく過ぎたころにリリスとハウェンが魔王のもとに連れて来られ、プリシル同様、魔王の愛妾となった。

リリスはプリシルの従妹で、ハウェンはリリスのまた従妹だった。

したがって、三人は親類ということになる。


唯一、彼女たちと血の繋がりのないのがアマンダだった。

リリスはプリシルと同い年で、ハウェンは一つ年上だった。

その後、魔王はアマンダも含め4人を正式に魔王妃とした。



  …… ◇ ……



 もはやお人形さんのように、されるがままになったヴァスマーヤの全身にミルク色をしたクリームをジョスリーヌとミカエラが塗りはじめた。


「ああん、ダメです、そこはくすぐったいわ ああん、そこもダメ キャハハ! やめて!やめて!」


モノ言うヴァスマーヤがくすぐったいところにクリームを塗られて、手足をバタバタしてくすぐったがってる。

あまりバタバタするので「クリームをよく塗られないわ」と怪力のアレクとハウェンに押さえつけられ、あんなところやこんなところにまでていねいに塗られて、また気持ちよくなってしまったヴァスマーヤだった。



 その後はお召しの時間だ。


最初に透け透けの下着を着せられた!?

絶対に人には見せたくないところが、ばっちり見えている。

モジャモジャした〇とか、〇〇〇とか... 


まあ、プリシルや、リリス、ハウェン、アンジェリーヌたちには、先ほどバスルームでばっちり見られているのだが... 


「プリシルさま、こ、これは薄すぎますっ! さっきまで着ていた下着の方が...」

「ヴァスマーヤさん!」

「は、はいっ」

「あなたはルークさまの妻になるのですよ」

「はい...」

「初夜に夫がよろこぶランジェリーを着るのが妻の務めです」


“らんじぇりー”という言葉の意味はわからなかったが、プリシルの言わんとすることは理解した。

 つまり、こんな透け透け下着を着てルークさまに抱かれなさいと言っているのだと。

 透け透け下着のままで、髪を乾かされ、ブラシで梳かれ、そのあとで念入りにお化粧をされた。



 お化粧はハウェンとアンジェリーヌがしてくれた。

アンジェリーヌはヴァスマーヤが「痛い!痛いです!」と叫ぶのに構わずに、眉毛を抜いて形を整えていった。


「もう、本当に困ったものね... 魔法の修練もいいけど、女の子なんだから眉の手入れくらいしなきゃだめよ?」

あまりの痛さで涙も枯れてしまったヴァスマーヤだったが、整え終わった眉を鏡で見た時、そこには美しい眉をもった美女の顔があった。


「きれい... これがわたし?」

「当たり前でしょう? だからルークさまの妻になれるのですよ」

怖いと思ったプリシルがにっこりと笑ったのを見て、ヴァスマーヤはあまりのうれしさに涙を流した。


「プリシル、せっかくのお化粧がだいなしじゃない!」

「あら、ごめんなさい。でも、そんなきれいな()、何回お化粧してもお化粧のしがいがあるでしょう?」

「それはそうだけど... もう、これ以上泣かさないでよ?」

「はいはい」




 1時間後― 


 見違えるように美しくなったヴァスマーヤがそこにいた。

薄紫の上品な色彩の新しいシルクネグリジェは、胸のところが大きく切れ込んだVネックで、ネックの両側にはバラの刺繍がほどこされている。

 そしてネグリジェと(つい)のナイトガウンはロングスリーブで袖と裾に同じくバラの刺繍がほどこされていた。


「うん!これでいいわね!」

プリシルがオーケーを出した。

「きれいになったわ!」

「本当!」

「ルークさまもきっとお気にいるわ!」

「間違いないわね!」



 そこにアマンダが現れた。

先ほど着ていたパンツルックではなく、ドレスを着ている。

そして、顔が光っているかのように輝いていた。


「あらあら... ルークさまから、たっぷり愛していただいたのね?」

「やめて、ハウェン。この()の後はあなたたちの番なのだから」

「え? わたしの後はプリシルさんたちの番?」

「そんなことはいいから、私といっしょに来て。ルークさまがお待ちよ」

「はい」


アマンダといっしょに部屋から出て行こうとしたヴァスマーヤにリリスが声をかけた。

「マーヤちゃん、ルークさまは何でもきちんとする方だから、心配しなくても結婚できるわよ!」

「結婚!?」

思わず立ち止まろうとしたマーヤの手をアマンダがせかせる。

「グズグズしないで歩いて。ルークさまは遅れるのがお嫌いなのよ」

「はい」


後ろの方から声援が聞こえた。


「マーヤ、がんばって―!」

「たっぷり可愛がってもらうのよ―!」

「マーヤちゃん、逃げちゃあだめよ―!」

「魔法を使っちゃダメよ―!」


最後の声は、たぶんミカエラの声だ。



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