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#3‐27 北東戦線の戦い②

 ダエユーネフ軍の魔術師たち― アルドラルビダカの魔術師たちの魔術は、突如、大きな竜巻を作り出した。

 それも一つではない。次々と作り出される大きな竜巻は、砂塵や草木を巻き上げながらオドグタール要塞目がけて進んでいく。

 

バリバリバリ...... 


 第一防壁がバラバラになり、防壁を作っていた丸太が竜巻に舞い上げられて行く。

 すぐに第二防壁も数十か所で壊される。しかし、要塞の兵たちは一早く上の方に逃げたのか、一人として見えない。

 大きな竜巻は第三防壁に達し、そこにあった数十台のカタパルトを壊しながらさらに上に進む。


「竜巻はユビィラたちにまかせて、私たちは敵の本陣を攻撃するわよ!クヴァシル、ヘーニル、ミーミル!」


「「「はいっ!」」」


 ヴァスマーヤはスーッと息を吸い込むと、両手をオドグタール山の頂上にある敵の司令部の建物などがあるところへ向けると、その手の先に赤い火球が生じた。それも一つではない。

 ヴァスマーヤが両手を広げると、その間に10個ほどの火球が生まれた。ヴァスマーヤが腕をふると火球は見る見るうちに巨大になり、一つひとつが直系10メートルほどの火球になり、オドグタール山の頂上の建物目がけて飛んで行く。

 ほかの魔術師たちも、5個ずつほどの火球を作り出し、同じようにオドグタール要塞目がけて飛ばす。

 20個以上の大火球がまるで白昼の流れ星のようにオドグタール要塞に向かって飛んで行く。


ワ―ワ―ワ―ワ―――!

ワ―ワ―ワ―ワ―ワ―――!

 

地上でそれを見ていたテアスジム軍の兵士たちが歓声をあげる。


「突撃―――っ!」

カイズネス子爵が、馬に乗ってダエユーネフ軍に命じた。


「オオオオオオ――――――っ!」

4万人のダエユーネフ軍が一斉に走り出す。


それを見たサルキデール公爵も、テアスジム軍の攻撃を命じた。

「突撃だ――っ!敵の要塞をぶっ潰せ―――っ!」


「オオオオオオオオ――――――っ!」

テアスジム軍の兵士たちもアルドラルビダカの魔術師たちの支援のもと、一斉に走り出す。


 20個を超える大火球が、オドグタール山の頂上にある司令部やそのほかの建物に命中する... 

 とヴァスマーヤたちが思った直前、突然、敵の本陣から何かが発射され、パッと白い煙のようなものに包まれたかと思うと大火球は消滅してしまっていた。


「!」

「!?」

「?」

ヴァスマーヤたちは驚きのあまり、目を見開く。


「ヴァスマーヤ、大火球が消えたわ?」

クヴァシルたちが信じられないと言った顔で、敵の本陣を見て、ヴァスマーヤ を見る。


「大火球が消えるなんて...」

ヘーニルが茫然とした顔でつぶやく。

「消えたんじゃなくて、消したのよ。アルドラルビダカの魔術師さんたち!」


 突然、後ろからの声に驚いてふり返る│靉靆あいたいの者たち。

そこには、白いトゥニカを着た、白い髪と青い目の若い女が強い風にマントをはためかせて浮かんでいた。

 その両横には、ピンクのスーツにパンツ姿の水色の髪と少し緑がかった水色の目の少女と、パープル色の短いスカートに同色のスパッツ姿の黒髪と黒い目の若い女が浮遊していた。


「おまえたちはっ?」

「だれっ?」

「ルーク軍の魔術師?」

ヴァスマーヤたちが訊く。


「私はルークドゥル勇者王国のアンジェリーヌ王妃よ!」

「同じく、ルーク王の王妃ミカエラ。ヨガヴィッド魔術学校出身よ!」

「わたくしもルーク王さまの王妃です。アイフィ・テフ神教官です。はじめまして!」

「王妃?!」

「ヨガヴィッドの魔術?!」

「神教官?」

「おまえか、ミタン王国の王女でルークの妻になったと言うのは?」

ヴァスマーヤたちが反応する。


「あらあら、よくご存じね? 妹のジョスリーヌもルーク王さまの妻ですのよ」

「その... けったいな着物はなに?」

「あら、私たちがルーク王さまの妻になったことは知っているのに、『モンスタイル工房』のことはご存じないのね?」

「も、モンスタイルこうぼう?」

「ほら、このミニスカート、素敵でしょう?」

ミカエラがパープル色のミニスカートを自慢する。

「そ、そんなモノを着て飛んだら... し、下着が...」

「あら、だいじょうぶよ。下にはスパッツをはいているし、その下にもパンティをはいていますからね!」

「す、すぱっつ?」

「ぱんてぃ?」


そのころ、地上ではテアスジム軍とダエユーネフ軍の歩兵部隊がオドグタール山の麓にたどり着き、一斉に登りはじめた。


「あ、あれはっ?」


ミーミルが指さす方を見ると―

なんと敵の本陣の上に、白く輝く巨大な竜が出現していた。


「ドラゴン?」

「ドラゴンが!?」


 白く輝く巨大な竜は、オドグタール山を登りつつあったテアスジム軍とダエユーネフ軍の歩兵部隊の上を飛びながら、その口から白いものを吐き出した。

 テアスジム軍とダエユーネフ軍の歩兵たちは、一瞬にして凍結してしまった。白い竜を指さした格好のまま、あるいは縦壕を上りかけたまま、あるいは、驚いた顔のままで。

 白い竜はアイスストリーム(凍てついた奔流)を吐きながら、次々と敵兵を凍結していく。

竜が通り過ぎたあとには、凍った斜面と縦壕と氷の彫刻のような兵たちだけが残った。


「あ~あ... ジョスリーヌも派手なことをするのが好きねぇ...」

やれやれといった感じでアンジェリーヌが肩をすくめる。


「あ... あれが、 ヨガヴィッドの魔術...?」

「ちがうわよ。あれは ヨガヴィッドの魔術じゃないわ!」

ミカエラが口を尖らせる。

「そうね... ミタン流の魔術ってことでどうかしら?」

「ふざけないでっ!なにが ヨガヴィッドの魔術よ?なにがミタン流よ?」

「そうよ!冥土への土産にアルドラルビダカの魔術をたっぷりと見せてあげるわ!」

「死ねっ!アジャサハザ・タターア・クサナッツ!」

ヴァスマーヤが早口で詠唱を唱えた。

「ネドゥ ヴァリウス!」

しかし、ヴァスマーヤが唱え終わるより先に、アイフィがヴァスマーヤの放った即死魔法を打ち消す魔術無効化魔法を発動させた。


「!消した?」


愕然としたヴァスマーヤだが、後方に飛びながらすぐに手の先から灼熱の炎をほとばしさせる。


「?!」


しかし―

狙った先にいたはずの三人のルークドゥル国の王妃たちはいなかった。

すでに高速で離脱していたのだ。


「さすが、靉靆(あいたい)の者ね? でも、ちょっと遅すぎるわね!」

「今度はこちらの番よ。行きますわよ!」

「なに?」


 ヴァスマーヤたちの見ている前でミカエラは詠唱をはじめた。

ミカエラの周りに炎が渦巻きはじめ、次第に大きくなり、ミカエラの姿は炎の中に消えてしまった。

 炎はさらに高さを増しトルネードのように上に伸びて行くと―

何と、炎の手足と頭が現れ、ドラゴンの姿にいなった!


「炎のドラゴン?!」

ヘーニルが叫ぶ。


「ヨガヴィッドの究極魔法“火神竜”よ!」

火竜となったミカエラが叫んだと思ったら、火竜の口から凄まじい高熱のファイアーブラスト(火炎流)がほとばしり、ヴァスマーヤたちを空中で追い回す。


「キャ―――アアアア!」

「熱―――――い!」

「ローブがっ、ローブが焼ける――っ!」


間一髪で丸焦げになるのはまぬかれたが、クヴァシルやヘーニル、ミーミルたちのローブのあちこちが焼け焦げて穴が開いた。

それでも懸命に飛び回りながら、火球や雷撃魔法で戦っている。




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