プロローグ 2-3
アルスは、駅舎の屋根の上から人目につかない場所に降り立った。
そこからパルザール駅近くに向かうと駅の前は大勢の警察関係者と野次馬でごった返していた。
駅に向かおうとしたアルスは、ある事を思い出してハタっと、足を止めた。
「……身分証ッ」身分証を探しながらポケットの中などを確認したアルスは、ハッと思い出した。「しまった……。鞄の中だ」
いくら、警察と協力関係にあるとはいえ、この格好である。不審者として捕まる可能性の方が高かった。
どうしたものかと思案していると、微かではあるが、男性の怒鳴り声が聞こえてきた。
(喧嘩か?)
そう思いながらも一抹の不安を感じ、声のする方へと向かっていくと路地の入り口で、見るからに柄の悪そうな男がフードを被った男に絡んでいた。フードを被った男の手は固く握られ、ふるふると震えていた。
「おいッ!聞いてんのか?」
柄の悪そうな男はそう言いながらフードを被った男の胸ぐらを掴んだ。フードがするりと落ちて、男の顔が露わになる。冴えない色白の肥満気味な顔だった。
それを見た、柄の悪い男は品のない声でゲラゲラと笑った。
「なんだよ。太っちょフランクじゃねえかよ。どうしたんだよ。そんな格好してよ?何かの真似か、あ?」
フードを被った男は、ぎゅっと固く握られていた手をゆっくりと開いて、ピンと真っ直ぐに伸ばした。次の瞬間、男は微かな笑みを浮かべた。
「あ?何笑ってんだよ?気持ち悪りぃな……」フードを被った男は腕を水平に伸ばして、それを高く掲げた。「おいおい、何しようってんだよ」
男の腕がヘラヘラと笑う柄の悪い男目掛けて、振り下ろされる。いつの間にか男の腕は鋭い刃物に変わっていた。
(異端者ッ!)
アルスは素早くチップという飛び道具を取り出して男の腕目掛けて投げた。チップは、凄まじいスピードで飛んでいき、男の腕に当たるとキィンという甲高い金属音がなった。腕は柄の悪い男の顔ギリギリの所で止まった。
「ギィャーッ!」
柄の悪い男はそう叫ぶとフードを被った男を突き飛ばして一目散に逃げていった。
フードを被った男は、柄の悪い男を追おうとしたが、アルスが「おいッ!」と言うと慌てながら路地の奥へと消えていった。
「逃すかッ!」
アルスもフードを被った男を追って路地の奥へと走っていった。
そのあと、騒ぎを聞きつけた野次馬と柄の悪い男が呼んだ警官がやって来て、辺りは騒がしくなりはじめた。