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ヤバい国

婚約破棄ですか、ご勝手に。

作者: 晶良 香奈

突然、頭の中に湧きました。

設定はゆっるゆるです。

「見つけたぞ、フェリシア!貴様、こんなところで逢引きしていたのか!」


花に囲まれたガゼボに無粋な声が響き渡る。

「私という婚約者がありながら恥知らずめ!」


「あら、コルフォート様、いらっしゃいませ」

対する令嬢はびくともしない。きれいなカーテシーをして迎え撃つ。

垣根に隠れた向こう側にはくつろいだ様子で座っているらしい男性の足が見える。

「選りにもよってあなた様がそんなことをおっしゃいますの?」


「何を言う、この悪女が!」

「失礼な。わたくし侯爵令嬢として恥ずべきことは何もしておりませんわ」

「白々しい事を!ミリア・サルネルを下民と見下して散々苛め抜いたくせに!」

「ミリア・サルネル?ああ、2週間ほど前に転入していらした男爵家の養女でしたっけ。わたくしに何の挨拶もなく、いきなり泣き出された方ですわね。騒々しいだけでしたわ」


「それはっ、貴様がいじめたからだろうっ!?かわいそうに、ミリアは目が真っ赤になっていたぞっ!」

「あれだけ泣かれればそうでしょうね。でも、目の前で何も言わずに泣かれたわたくしもビックリしましたのよ」

「そんなはずはないっ!あの忍耐強いミリアが泣くまで貴様がいじめたんだろう!!」

「いいえ、声をかけるきっかけもありませんでしたのよ?ハンカチを貸そうと思って近づいたら一目散に逃げだされましたし。あの方、どこかにぶつかりませんでした?大きな音がしていましたけど」


「!それだっ!貴様、階段から突き落としたなっ?!」


「あそこから校舎まで階段なんてありませんでしょ?どこかで躓かれたんじゃありませんの?」

「貴様、ああ言えばこう言う…意地の悪いのは昔からだと思っていたが、もう我慢ならん!婚約を破棄してやる!!」


「もう、コルフォート様。そのセリフ何回目ですの?聞き飽きましたわ」

「な、な、何回目でもいいだろうっ!貴様とはもう一緒に居られるかぁっ!こんなところで男といちゃついているくせに、何を偉そうにっ……!?」


「ほう、何を偉そうに喚いているんじゃな、そちは?」


「え………ち、父上ぇっっ!?」


コルフォートからは足の部分しか見えなかった男性が背筋を起こすと…現国王だった。

「久々の休みというに、騒がしい奴じゃの。お茶もろくに味わえんわ」


「ち、父上、何故にこちらにっ…?母上は?」

「妃は幼馴染の茶会とかで相手をしてくれんでの。へこんでおったらフェリシアがガゼボに誘ってくれたんじゃ。優しいのう……その娘に今何というた?」


好々爺だった顔が一瞬で貴族のトップたる王の威厳をまとい、ギロリと息子を見据える。


「あ、あ、あわわわ………」


「婚約破棄とは片腹痛いわ。そちにはもう一度きっちりとしつけが必要じゃの。近衛ども!こやつを部屋へ引っ立てい!」

即座にわらわらと近衛兵が湧き出し、コルフォートを羽交い絞めする。

抵抗する間すら与えられない。


「すぐさま宰相に伝えよ。教育係とマナーの教師を再度厳選してみっちりと教え込むように、とな」

「陛下の仰せのままに」

「あ、ああ~っ、父上~、ご勘弁を~っ!は~な~せぇ~っ」


しばらくはじたばたする気配があったが、それも遠のき、ガゼボには前の静けさが戻った。

入れ替えられた紅茶を含み、満足な顔を見せる国王。


「うむ、いい香りじゃ。今回もお手柄じゃの、フェリシアよ」

「恐れ入ります」


「して、どうじゃ、ミリアは?」

「はい。転入してからの動向をつぶさに見てまいりましたが、彼の者の能力は『魅了』それも一級品だと思われます。コルフォート様に始まり、騎士団長子息ゲインズ様、魔術士長子息ジェミニ様、財務大臣子息トーマス様。いずれも骨抜きにされて取り巻きになっております。今頃、婚約者たちに喝を入れられている頃ですわ」


「うむ。これ、誰かあるか」

国王が声をかけると、横の繁みから近衛が現れてかしこまる。

「ミリア・サルネルを拘束して魔法士庁へ連れていけ。どこの間諜か確定し、そのあとはいつものように諜報部へと回すように」

「はっ、直ちに」


「ふむ。これで今回の騒ぎは収束しそうじゃな。それにしてもようまあ毎回懲りずに骨抜きになるもんじゃ。これでひい、ふう、…3回目、かの。いや4回目か?」

「5回目ですわ。それもはかったみたいに同じ顔触れで。何か決まりでもあるんでしょうか」

フウとため息をつくフェリシア。いささか呆れ気味である。


「あ、でも、今回はコルフォート様おひとりでしたわね。前回は相手のご令嬢と二人でしたから、まともに近づいてきましたかしら?」

「おお、そうか。そろそろ『発現』が近いかもしれんのう」

うれし気に顔をほころばせる国王とフェリシア。


「ようやく政務にも関わらせることができそうじゃの。その時はよろしく頼むぞ、フェリシアよ」

「確かに申し付かりました」

「『発現』すればまず安心じゃ。今度はこちらから打って出ようかの。いい加減にうざったくなったからのう」

「いいですわね。でも、コルフォート様の教育が済んでからにしてほしいですわ。わたくしにも少し残しておいてくださらないと」

「おお、それは悪かった。なに、急ぐことはない。あ奴と二人で外交旅行でもしてもらうかの。ほっほっほ」

「まあ素敵ですわ。心待ちにしております」


フェリシアのはしゃいだ声がガゼボに響き、のどかな空に広がった。


・・・・・・・・・


このロードリック王国は特殊な国だった。国の三方を険しい山と谷が取り囲み、唯一開けた南側には豊かな川が流れて、肥沃な国土と国民を守っている。山からは純度の高い魔石や宝石が採掘され、農地は滋養にとんだ作物が国民の飢えを満たしたうえで有り余るほどに実りが多い。国民の気質は穏やかで陽気な人が多く、王家の配慮による幼児からの一貫教育で教養もあり、文化芸術面でも周辺国の群を抜いていた。

当然、狙われる頻度も高く、すぐに陥落するだろうと周辺国では侮っていた。


だが、甘い。


この国は創世の女神の加護を受けていた。


それもメッチャ豪勢に。


まずは王侯貴族。彼らにはある気質が受け継がれる。

王家の男子には、『威圧』もしくは『心酔』の才能が出る。


公爵・侯爵・伯爵家には、『知性』『忠臣』『武王』『賢者』の才能があり、子爵・男爵家にも『芸術』『文才』『熟練』『俊才』『研究』等、かなり突出した才能が出てくることが多い。中には『料理』や『裁縫』『建築』などもあったとか。


これらの才能は成長過程では現れない。成人…この世界では16歳をもってして成人扱いとなるが、成人直前もしくは直後に出てくる。それを『発現』と言い習わし、それをもってして一人前となる。

成人前は頼りなくふらふらしていた男子も、ひとたび『発現』すればそれはもう立派な王侯貴族としての責務に目覚め、ノブレス・オブリージュを体現していく。


ではそれまではどうするのか。


女子が、女性たちが心弱き男どもを守るのだ。


この国の女子・女性たちは一様に5歳になると『魅了耐性』を発現する。というか体得する。

そして10歳になるまでに『破邪』を得る。つまり女性みんなが聖女体質なのだ。

だから、小さなうちから女性陣は魔物に強く、他国の悪意に敏感となる。

いわんや王侯貴族においてご令嬢・令夫人の力は推して知るべし。


そんな国を簡単に落とせる訳がない。

力押しも搦め手も駄目となり、焦った各国はハニートラップを仕掛けてきた。『発現』前の男子はこれに軒並み引っ掛かり、聖女体質の婚約者にシバかれる。ここしばらくそういった状況が続いていたのだ。


因みに、使われたハニートラップたちの行き先は諜報部だ。イケメン揃いの諜報部で逆にひっかけ、送り込んできた国へ逆輸出して情報を分捕ってきている。やり方がエグい。


コルフォートの能力が『発現』したなら、その時、諸外国は思い知るだろう。


『この国はヤバい』と。








連載分を書き溜めたりしてますが、寝て起きたら出来てました(笑)

いえ、あらすじだけですが。

でも、こんな国があったら面白い、でしょうね?

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― 新着の感想 ―
[一言] 最早ミッションですね〜。
2020/09/28 20:51 退会済み
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