表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/16

バッドエンド01

 床に散らばったグラスの欠片と、あたりに広がる果実酒の匂い。

 大勢の貴族たちが、床に座りこんだ私を遠巻きに見ている。


 正面の王座から冷たい視線を感じても、私は顔を上げることができなかった。

 なによりもあの女の姿をみたくなかったからだ。


『シェリー・ヴォーン・ハーヴェイ。君が伯爵令嬢ヘレナを毒殺しようとした罪は明白だ』

『ちがっ、ちがいます殿下……、わたくしはただっ、』


 ただ、ヘレナが羨ましくて、悔しくて。

 最初は少し脅してやろうと仕掛けただけだった。

 だけどヘレナはまったくへこたれなくて、私の欲しかったものを次々に手に入れていく。

 ずっと夢見ていた皇太子妃の座も、今日という日が終わってしまえばヘレナのものになる。


 だから。

 全部奪ってやろうと思った。

 だって私は誇り高き公爵家の娘ですもの。


『シェリーには即刻入牢を命ずる』


 以前は優しかった殿下の声が、今は氷のように冷たく、遠い。

 我慢できなくなって顔を上げると、殿下と、その影に隠れるあの女の姿があった。


『殿下、わたくしはっ』

『残念だけど、ハーヴェイ公爵家もただではすまないだろう』


 警備の兵士が私の腕を掴む。


『嫌、いやっ、離してっ!』

『追って沙汰があるまで、せめて己の罪を悔いるが良い』


 とどめの一言で、シェリー・ヴォーン・ハーヴェイの心は壊れてしまった。


 大勢の人間が、貴族たちが私を見ているのに、なにも言わない。

 もうどうでもいい。何も考えられない。なにも。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ