消えた翼の雛
新幹線が動き出してから約1時間半位が過ぎて辺りは明るくなりつつある。
信号機は眠りから覚め3色の色をリレー方式に点灯させ、車も動き始めた。
幸大は窓から景色ずっと見つめたまま何個か駅を通過した。
宇都宮駅に到着し、何人か人の出入りが行われたが幸大は景色を見たまま動かなかった。
すると幸大が座ってる3列シート座席に一つ空けて一人着席した。
それからまた新幹線は走り出し加速していった。
窓から少し見えた座席の人は幸大と同じくらいの年の女の子だった。
ニット帽を被り黒のコートを着て首にはマフラーをしていた。下半身は見えない為少し気になった。
発車してから少し時間が経った時座っていた女の子は幸大に話をかけてきた。幸大はイヤホンをしていた為気配には気づいたので振り向くが耳の中は音楽が流れており何を喋りかけたか分からなかったために再度聞き直した。
「突然すいませんが、何処までいきますか?」
女の子は暇なのだろう、何となく喋りたかったのかと思いながら間違いではないので東京にと答えた。すると女の子も同じく東京に行くらしい、奇遇ですねっなんて言いながら少しお話をした。
「私、 如月 あゆ 17歳です」
会話の途中でのいきなりの自己紹介をしてきた女の子。如月さんは明るい感じで幸大も嫌な感じはしなかったのでこちらも自己紹介をした。
「新井さんですか、しかも同い年ですね」
如月さんを見た幸大、如月さんの足元は茶色のロングブーツを履いていてしかも可愛い顔をしていた。
そうして、いつの間にか意気投合して、何故如月さんは一人で東京に行くかの事情を話し出した。
如月さんは宇都宮出身で幸大と同じく高校生だった。自分探しの旅を今日思い切って下との事で軽はずみに何故か聞いたら複雑になってしまった。
如月さんは中学生の時に何故かイジメにあって三年過ごしたが高校に入っても同じくイジメが続いて最初は辛くて親に言ったけど親は信じてくれず自殺をしようと決断しリストカットしたが起きたら病院にいて親は初めての娘の事情を把握して、それからは如月さんは引きこもりをしていたがこのままではいけないと思い自分探しの旅をした。
それを聞いた幸大は相手がどれだけ苦しんだ、報われなかったと胸が苦しくなった。如月さんは何だか胸の中が軽くなった様に少し涙目ながも笑顔で可愛かった。
幸大も東京とは言ったものの実際は宛のない旅、心境は違うが、何か親近感が芽生えた。
そしていつの間にか如月さんに本当のことを話し始めた。
如月さんは幸大の話を終始頷きながら涙目を流しながら聞いてくれた。しんみりした雰囲気になったので話題を変え楽しい話を二人はした。
..........
ピンポンパンポーン
ご乗車誠にありがとうございます.....etc
...........
二人が話してる時に新幹線内でアナウンスが流れてもうすぐ東京に着くとアナウンスしていた。
二人はそれを聞いて少し無言になった。幸大はこれも旅の醍醐味、一期一会を大切にと思い如月さんにありがとうと感謝を述べた。
如月さんは何処か寂しそうに見えた。
扉が開き先程の如月さんに挨拶してから降りた。如月さんを扉から出るときに再度挨拶を交わした。
降りてからスマホを取り出しナビゲーションアプリを起動させながら改札口を目指し歩いた。
スマホは便利で文明の利器、スマホがなければ東京の改札口さえも出れずに迷子になってしまうだろう。
ナビゲーションは着々と改札口へ誘導してくれて、改札口を抜けるとそこには初めての東京。時刻は9時過ぎての到着で東北とは違いあまり雪は無かったが寒さだけが体を通り抜けていく感じで、人は慌ただしく歩き、車は常に渋滞でのクラクションの音に人の歩いてる時の足音に横断歩道のメロディーが重なり何か構想曲でも引いてるかの様に聞こえた。
幸大は今一度自分の意思を確かめこれからどうしようか、また何処に行こうかと邪魔にならないように端でスマホをいじりながら宛のない旅が始まると少しワクワクしていた時に誰かに声をかけられた気がした。
「はぁ、、はぁ、、新井さ、、ん」
後から聞こえてきた声を頼りに振り向くとそこには先程新幹線の座席で喋った如月さんが肩で息をしながら幸大の前に立っていた。
「如月、さん?どうしたの?」
幸大は何故ここに如月さんがいるか不思議だった、もしかしたら俺が座席に何か忘れ物してそれを届ける為に探したとか、色々考えたが分からなかった。
「新井、、さん、お話しが、あります」
如月さんは幸大に話があり探したとのことで呼吸を整えようとしていて口からは白い煙がモクモクと出ていた。
外では寒いのと如月さんは喉がカラカラになっていたので近くにあったフード店に入り、コーヒーを2つ注文して入口近くの外が見えるカウンターに隣通しで座って改めて如月さんに聞いてみた。
「如月さん、お話ってなに?」
「新井さん、、私、自分探しの旅をしたくて、、、じゃなくて、自分探しをするのに、、、」
如月さんは少し混乱してるみたいで要件がよく分からなかった。コーヒーをすすりながら如月さんの準備が出来るまで待った。
少し経ってから如月さんは何かを決意したかのように拳を握り幸大を見つめて話をしてきた。
「新井さん、私も自分探しの旅をする為に東京に来ました。そして、同じ境遇ではないですけど宛のない自分探しの旅をする人を知りました。そこで提案があります。.......」
如月さんは幸大と新幹線で話をしてとても勇気が出たとのこと、そして提案とは同じ目的ではないが同じ目標がある。だから見つかるまで一緒に旅をして、もしどちらかが目的を達成した時は解散し、残された者はまた旅を続けると言う提案だった。確かに旅は道連れとは言うが本当に良いんだろうかと考えてしまう。泊まるとこがないかもしれない、危ない事になるかもしれないと如月さんに説明したが、如月さんは承知してるとのこと。幸大は頭を掻きながら如月さんに握手を求め如月さんも幸大と握手をした。
「これから宜しく」
「はい、こちらこそ」
その後はフード店で1時間位何処に行くかとか、旅費はいくらあるか確認、最初の目的地を決めた。
目的地は東京に来たのでまず観光がてらに浅草の雷門に行ってみようと話がまとまった。そして、もし迷子になったとか離れて行動する場合もあるかもしれないので二人はSNSのアプリの(ライム)で互いにIDを交換した。
どちらもニックネームは自分のフルネームだった。
そして幸大と如月はまず浅草を目指す為にナビゲーションを開き設定をしたら山手線に乗って行けると教えてくれた。都会に不慣れな二人には心強いアプリで、難なく電車にも乗れ目的地の浅草の雷門まで来た。流石に観光客で人が本当に多かった。某アニメ映画でのセリフを言えば「見ろ、人がゴミのようだ」
と幸大は喋り、如月は笑っていた。
二人は雷門前で写真を撮った。
これも旅の記憶と思い出を後々見返せる様にする為ともし未来でまた再開した時の思い出話が出来るようにと二人で相談し決めた。色々見て回ったが、人が多すぎて、ゆっくりとは見れなかった。スマホを取り出し時間を見ると12:25とお昼を回っていたので幸大と如月は安上がりの食事と言うことで近くの○き屋に入り並の牛丼を注文し、たいらげた。
時刻は13:10と早く宿を決めるか違う場所に移動するか決めないと全てが台無しになると会話をしながら次の目的地を決め直した。もちろん東京は観光したいがそんなことをしに旅をしに来たわけではない。なので東京を拔ける為に次の目的地を二人はスマホで調べながら東京駅を目指した。
「田舎がいいか、何か見たいものある?」
「私は、お城とか歴史に触れたいなと思います。」
如月は歴史が好きだったが見に行ったこともない、ましてや修学旅行を体験してこなかった。
幸大も楽しい記憶がない為に二人の頭には電球マークが浮かび上がった様に同じタイミングで「修学旅行」と言い合った。
そこからは目的地もルートも楽しく決めれた。行く先の宿の予約にナビゲーションアプリでの検索、二人は目的地を松本城に設定した。
まず電車の場合、快速・高尾行きに乗り、新宿駅を目指し、新宿駅で、JR特急あずさ21号・松本行きに乗り換えると、10駅目が松本駅
この方法だと、所要時間は約3時間10分くらい。料金は¥6,376とでた。
新幹線でのアクセス
東京駅からJR新幹線はくたか・金沢行きに乗り、長野駅でJR特急ワイドビューしなの・名古屋行きに乗り換え、そうすると、2駅目が松本駅。
この方法だと、所要時間は約3時間。料金は¥9,350とでた。俺達は安い方を選んで切符を買って電車に乗った。
流石アプリ様、間違えはなさそうである。到着じかんも17:32分と行動が制限されてしまう為に到着後駅近くのビジネスホテルを予約した。最初は二部屋取る予定だったが一部屋だと割り勘でもかなり安かったので何も考えないで予約をしてしまいあとから二人は後悔することになるとは今は知る由もなかった。
読んでいただきありがとうございます。
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