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東京都立川市

再びカシュパラゴの主要な者たちが王宮に集めれ、

マリヤ様にこのような状態になった経緯と現状の報告をする。


シルス『…ということなのですが、マリヤ様?』


マリヤ『…あ、申し訳ありません。少し話を聞き逃してしました…もう一度お願いできますかシルス騎士?』


マリヤ様は日々多くの案件を見て状況を判断し命令を下されていることもあってか、少しお疲れのご様子だった。


シルス『マリヤ様、少し休まれてはいかがでしょう?お顔が疲れているように伺えますが。』


マリヤ『シルス騎士、ご心配いただきありがとうございます。でも私は大丈夫です、皆でこの時を乗り越えていきましょう!』


『はっ!』


マリヤ様は世界を統一する最高権力者だ。


多くの者はその権力を持ったが故に間違った方向へいき、自ら破滅の道を選んでしまう。


その代表例がリクライだ…


彼はかつてシドマとカシュパラゴが分断する前の五大騎士の1人だった。


分断されてからはカシュパラゴの五大騎士は四人、四大騎士となる。


五大騎士の中でも段違いの力と頭脳をリクライは兼ね備えていた為、彼を筆頭にシドマは形成された。


彼は常々思いもよらない事をしたり、マリヤ様に言葉を返すような行動をしていたこともあって、現カシュパラゴ四大騎士様はリクライを信用しきれていなかった。


しかしマリヤ様は仲間を信じる心を大切にし、それを貫く覚悟があった。


リクライのどんな行動にも、言動にも屈することなく正面からぶつかり合い、彼の心の在り方を変えようと接してこられた。


しかし…彼は闇に堕ち、その帝王となった…


リンゼル『マリヤ様、先程シドマの四大騎士と剣を交えました。』


マリヤ『そうでしたか。リンゼル騎士、いつもこのカシュパラゴの為、尽力してくださり感謝致します。』


リンゼル『勿体なきお言葉。ただ、奴ら不思議なことを言ってまして…』


マリヤ『どんなことを?』


リンゼル『それは…』


『カシュパラゴ領地を奪うことは一時休戦とする、来る時までの狙いはお前らではない。』


リンゼル様のその言葉を聞き、マリヤ様は少し悩まれていた。


マリヤ『リクライがそんなことを…狙いは私たちではない…一体彼は何を考えているのでしょう…』


シルス『リクライの奴め…何があろうと私達がこのカシュパラゴを守り抜きますぞ。』


ミチル『そうですね。私達のやるべきことに変わりはありません。』


リンゼル『その通りだ!』


四大騎士様はマリヤ様をお守りする覚悟を揃って口にしていた。


マリヤ『ありがとう、頼もしい限りです。そしてシャンク、ルジェンやバイグレムの他にシドマの上級騎士と、戦闘になったと情報が入ってます。あなたが相手にしたのはリガムル騎士…なのですね…』


シャンクは唇を噛み締めながらマリヤ様の問いに答える。


シャンク『その通りです。裏切り者はリガムル騎士と他2名…』


マリヤ様は目を閉じ、深く頷くようにして『ありがとう』とシャンクに伝え、上級騎士とリガムルの中を知っているシルス様は俺たちに向け話し始めた。


シルス『よくやってくれたなお前たち…辛かっただろう…だがこれで良かったのだ。騎士としてカシュパラゴの為に戦っている以上、無駄な感情は不要。罪を犯したものは、その代償を払ってもらわなければならない…シャンクやカスティスがやらなければ、私が裁きを下していただろう。』


上級騎士一人一人が複雑な心境の中にいた。


俺やシャンクは、リガムルとの仲が深かった分感じるものは大きくあった。


リガムルを倒したあの時から、何回も何回ももっと良いやり方があったのではないかと自問自答し続けていた。


だけど、その答えは永遠と出ることはないだろう…


騎士たちの報告が済むと側近達が話し始める。


側近A『マリヤ様、シドマの連中が我々を狙うことを一時休戦した今、奴らに油断が生じるはず。ここがカシュパラゴを勝利に導く分岐点かと。』


側近B『お主はバイグレムの言った言葉を忘れてしまってるのか!カシュパラゴと違い奴らはいつでも戦闘が行える準備をしておる。油断しているわけがなかろう!今はカシュパラゴの体制を整える方が先だ!』


側近C『お二人揃って、もっと良い案を出してくれますか?我々に勝利が訪れる最高の案を。』


側近B『なんだと小僧。自分の考えを先に述べるのが道理ではないのか?何か良い案があるんだろうな?』


側近C『いいえ、特にございませんよ。醜い言い争いに少し風を吹かせたいと思いましてね。』


側近A『貴様…舐めた真似をしてくれたな!』


次々に側近達の言い争いが始まった。

どうしたらこんなに自分の名誉、立場、地位のことばかりを主張できるのだろうか。


カスティス『はぁ、自分のことしか考えられないのか…』


騎士達はため息を漏らしていた。


側近達の言い争いがエスカレートし、熱を帯びてきたところで痺れを切らしたマリヤ様が一言言い放った。


マリヤ『おやめなさい!カシュパラゴの為、民の為を思って皆様は話し合いをしているのですか?自分の為ではなくこの世界の為に時間を使いなさい!いいですか!?』


『はっ!』


マリヤ様の厳しいお言葉に緊張感が部屋を包み込んだ。


もう一度カシュパラゴのこれからについて話を始めようとしたその時、部屋の奥にある扉が開き、1人の騎士が慌てた様子で入り込んできた。


騎士『お話し合いの途中申し訳ございません!!』


リンゼル『おいおい!お前大事な話し合いの途中に入り込んできて、失礼とわかってるのか!?』


騎士『失礼は承知しております!大変申し訳ありません!!しかしそれ以上にご報告せねばならないことが起こっております!』


騎士の異様に慌てた姿を見てシルス様が尋ねた。


シルス『一体どうしたのだ?』


騎士『シ、シドマが…シドマが現世に攻めいる模様です!!』


『!?』


現世といえば、嬢ちゃんや聡のいた世界。


俺たちカシュパラゴが守り抜かなければならないもう一つの世界と言ってもいいだろう。

しかしシドマやカシュパラゴの者は、向こうの世界に行くことは基本的にできない。


ただ、ほんの数秒もしくは1分程度なら何とか肉体を保つことができる。


しかしその程度であるのと同時に、本来の力はわずかしか出すことができない。


そんな状態でシドマが現世を我が物とするのは到底無理なことだと思うのが普通…たった一つのやり方さえ使ってこなければ…


マリヤ『それはどいうことですか?』


騎士『向こうでお守りしている者から報告があり、シドマは聡様を筆頭に現世を奪うつもりだそうです。そして奴らも徳性人とくせいびとを仲間に率いてる様で…』


シルス『徳性人とくせいびとを見つけ出しているのか!?…奴らどんな方法を使って…』


マリヤ『シドマが徳性人とくせいびとを…これは困りましたね…』


徳性人とくせいびと


ある特殊な魔法を使いこちらの世界から魂だけを現世に送り、魂を預かれる器を持った人間に預ける。


その魂を預かれる器を持った人間のことを指す。


聡の場合は、万能性を兼ね備えた『世の順応者』

魂を預かる器も持っていれば、こちらと現世を行き来することもできるいわば水陸両用の車みたいなものだ。


『世の順応者』は現世に数名しかおらず、まず探し出すことは不可能に近いと言われている。


しかし徳性人は300万人に1人いると言われ、マリヤ様の力を込めた宝石に魔法を込め探し出していく。


ここで使用する魔法は上級魔法。


強大な魔力と気力を使う為、普通の魔法士には到底使うことはできない。

ミチル様、もしくは上級騎士ルキのレベルでないと扱うことのできない強力で危険な魔法である…


リンゼル『ミチル、あの魔法はシドマも使えると思うか?』


ミチル『わからない。もし使えたとしてもマリヤ様の宝石がないとお話になりませんしね…』


シルス『リガムルが裏切っていたとすれば持ち出していた可能性も大いにある…』


カスティス『…バカやろう、なんてことしやがったんだリガムル…』


俺の中に悔やんでも悔やみきれない、なんとも言い難い感情が湧いていた。


マリヤ『現世の状態は?シドマの徳性人の動きはどうなっていますか?』


騎士『はっ!まだ何も動きはない様子ですが、現状は詳しく調査をしている段階です。』


俺たちは現世を御守りする役がある為、向こうにはカシュパラゴと繋がる徳性人が存在している。


しかしシドマが徳性人を見つけ出していることは、カシュパラゴも把握しておらず、奴らの徳性人による軍勢があるとすれば大変なことになる。


シルス『我々が長く守り抜いてきた現世を奴等の脅威に晒すことは断じて許されない。マリヤ様、シドマが動き出す前に先手を打っていきましょう。』


マリヤ『先手とは何をなさるのですかシルス騎士?』


シルス『美乃梨様の護衛、シドマの徳性人の討伐を上級騎士たちに行動してもらうということです。』


シャンク『シルス様、お話の途中申し訳ありません。今カシュパラゴはかなりの痛手を負わされてしまっております。四大騎士がかけてしまっている今、私たちまで居なくなってはまずいかと…』


リンゼル『確かに…今は3人なんだよな…』


その言葉に周りが静まり返った。


カシュパラゴの大きな痛手は、街の被害もそうかもしれないが、1番大きなダメージはマセル様だ。


四大騎士が1人欠けることは、カシュパラゴにとって致命的である。


今シドマや新手の者にカシュパラゴを攻め込まれてしまった場合…カシュパラゴの崩壊に繋がりかねない。


しかし、だからといってマセル様が目を覚ます可能性は極めて低いといえる。


皆が先のことを考え黙ったままでいると、マリヤ様が驚くべきことを口にする。


マリヤ『マセル騎士がいない今、シャンク、あなたがその座を務めなさい。』


『!?』


周りの空気が一気に強ばる。


そしてそれを1番感じていたのは当の本人だった。


シャンク『私がマセル様の座を…』


側近D『マリヤ様!シャンク騎士にはまだ務めることはできませぬ!力不足です!』


側近B『そうですマリヤ様!シャンク騎士には申し訳ありませんが、マセル騎士程の力はまだないかと。今一度お考えを!』


側近A『四大騎士はカシュパラゴ最強の騎士。そこの座を務める者はマリヤ様に指一本触れさせぬ強者でないとならない。それがシャンク騎士に務まるかどうか心配ですぞ…』


側近C『ここはカジャミヤ騎士をお呼びになるしかないのでは?それが1番無難かと。』


側近たちは誰一人シャンクがその座につくことを認める者はいなかった。


サザルキ『好き勝手言ってくれるな…』


ナナミ『ムカつくなぁおじさん達。』


カスティス『シャンク…』


シャンクは今何を思っているのか。


俺にはこの責任感、重圧がよくわかる。


何もかも嫌になり、全てを投げ出し逃げたくなる。


きっとシャンクもいろんな感情に押し潰されそうになってるに決まっている。


俺はそう思っていた。


しかし、それは違っていたようだ。


彼の顔は、決意を固めた顔だった。


マリヤ『皆様の考えはよくわかります。四大騎士とは、騎士の頂点に君臨する者。シャンク騎士が本当の意味でその座を務めるのは、まだ先の話なのかもしれません。しかし…』


シルス『彼の覚悟は決まってるみたいですぞ。』


側近達の視線は彼に集まった。


シャンク『マリヤ様、そして皆様。力不足な私ではありますが、努力させて頂き、皆様に少しでもお認めになって頂けるよう努めて参ります!どうかよろしくお願い致します!』


シャンクは上級騎士でありながら、なんの迷いもなく土下座をしてみせた。


その姿は残念な姿ではなく、騎士の鏡。


そう、まさにマセル様の姿と重なった。


シャンクの土下座を目にした者たち皆が言葉を失う。


ミチル『上に立つ者の本当の姿を理解したようですねシャンク。』


リンゼル『それができればマセルも文句は言わないだろ。』


シルス『マリヤ様、よろしいですかな?』


マリヤ『シャンク、頼みましたよ。』


シャンク『はっ!』


こうしてシャンクはマセル様の座、つまり四大騎士を代理で務めることとなった。


マリヤ『では四大騎士は揃っております。カシュパラゴは彼らが守り抜くでしょう。現世の危機は上級騎士の皆様、お願いできますか?』


『はっ!』


マリヤ様の言葉に上級騎士は跪く。


カスティス『お任せくださいマリヤ様!現世の脅威は私達が守ります!』


マリヤ『頼みましたよ…先の方向性は決まりました!四大騎士はカシュパラゴの修復作業の指揮を取ること、ミチル騎士は早速彼らの器を探し出し、速やかに任務に入ってください!後の者は続きの任務に戻ること!いいですね!!』


『はっ!』


こうして俺たちはそれぞれの役目へと進み出した…



あれから半年が経ち…物語は現世へ…



【東京都 立川市】にあるオフィスビル。


このフロアではいつもの通りキーボードを打つ音がいたるところから鳴り響いていた。


部長『おーい神川かみかわー、ここ間違えてるから直してまた提出してくれるか?』


神川『あ、すみません。すぐ直してきます。』


部長『頼んだぞー。』


神川かみかわ優樹ゆうき


IT企業に勤めるどこにでもいるごく普通のサラリーマンだ。


今日も彼はいつもの日常を送っている。


神川は与えられた仕事を淡々とこなし、あっという間に終業時間となった。


『お疲れ様神川、ほらっ』


神川の頬に冷えた缶コーヒーが当たった。


神川『冷てっ!やめろよ田島たじま!あ、サンキュ』


田島たじま涼介りょうすけ


神川と同期入社の社員。


仕事もそこそこできて、仲間思いの良いやつである。


田島『神川今日時間あんの?』


神川『どうした?』


田島『どうしたじゃねーよ!今日は花の金曜日だよ花の!会社で飲み会やるんだって!もちろん行くよな神川!』


神川『行きたいんだけど…これ見てよ。』


そう言われた田島は神川のパソコンを覗く。


田島『はぁー!?なんでこんな仕事残ってんだよ!?』


神川『うちのチーフがミスして、俺最後の部分やってるからさ、みんなが終わったやつを処理するからこんな感じよ。』


田島『こんな感じよじゃねーだろこれ!?後2、3時間はかかるぞ!?』


神川『まぁしょうがねーだろ。俺はまた今度にしておくよ。』


そう神川が言うと田島は少し考え、再び自分のデスクに戻った。


神川『おい田島、帰らないのか?』


田島『神川、ファイル何個か俺のパソコンに送れ。しょーがないから手伝ってやるよ。』


神川『気持ちはありがたいけど、気にしないで帰れって田島。せっかくの花金なんだから。』


田島『それはお前も一緒だろ。いーから送れって。』


神川は申し訳なさそうに田島のパソコンにファイルを送った。


『田島君、神川君。飲み会行かないの??』


田島『多月たつきちゃん今日俺たち行けなさそうだよー仕事が富士山並みに山積みでさー。』


多月『そうなんだ。私も手伝おうか?』


神川『いやいや大丈夫。多月たつきは飲み会行ってきて。』


多月『でも…』


田島『楽しんできてよ。こっちはこっちで楽しむからさ。』


神川『何を楽しむんだよ。』


多月『手伝えることあったら遠慮なく言ってね。それじゃあお先に。』


多月たつき実穂みほ


田島と同様神川の同期。

仕事の担当する部署は違えど、神川とは仲の良い仕事仲間である。


田島『んじゃ、やりますか。』


神川『そうだな、申し訳ないけど頼むわ。』


田島と神川は残った仕事に取り掛かる。


2人だけとなったオフィスは静まり返り、聞こえるのは書類をめくった時の紙の音とキーボードを叩く音のみだった。


残業を始め2時間が経ち、山積みの仕事がようやく片付いた。


田島『終わった〜!』


神川『田島ほらっ』


神川は田島と同じように冷えた缶コーヒーを田島の頬に当てた。


田島『冷たっ!おいーお返しするなよーサンキュー。』


神川『田島助かったよ、ありがとうな。』


田島『気にすんなよ、つかお前んとこのチーフもしっかりやれよなーこんな量一人でやらせやがって。』


神川『まぁいろんな案件抱えてるししょうがねーよ。』


田島『お前は相変わらず優しいのな、まぁ出遅れちまったけど、俺たちも飲みに行くか!』


神川『そうだな。』


オフィスの締め作業をしてから2人は会社を出た。


飲み会が行われているのは立川駅近くの居酒屋。


2人は会場に向かって歩いていく。


神川『田島、お前多月のこと好きなのか?』


田島は飲んでいたコーヒーを思わず吹いた。


田島『はー!?なんだよ急に!?』


神川『いや、なんとなくだけどそんな気がして。気のせいならごめん。』


田島『ま、まぁタイミングは決まってねーけど告ろうかなぁとは思ってたよ…』


神川『そっか。頑張れよー応援してるー。』


田島『聞いておいて素っ気な!なんなんだよまったく!ってか早く行こーぜ!』


神川たちは足早に居酒屋へ急いだ。


いつものようにふざけた会話をしていると…


その後を追う何者かが…いた…


『あの子が神川さんか…』

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