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世界の命運

この一件の犯人はどんな奴なのか。


それを思いながら部屋を出ようとした時、俺だけはこの部屋に残るようシルス様に指示を受けた。


皆が出て行った後、マリヤ様、四大騎士様、側近達と俺で話が始まる。


シルス『カスティスこのカシュパラゴにフラクションの奴が来てたと報告があるが、剣を交えたか?』


カスティス『はっ!私が会ったのはフラクションのサクヤという男でした。奴らと戦ったのは聡の中にいた時を含め2回目でしたが、やはりかなり手強い相手だと思います。』


シルス『フラクション…ついにこのカシュパラゴに奴らが来たのだな…お前が倒したのか?』


カスティス『い、いえ違います…』


シルス様は頷き、何故かそれ以上聞いてくることはなかった。


俺は疑問に思いながらも次の質問を受ける。


シルス『次にカスティス、ユイカをやったのは誰だ?』


カスティス『そ、それは…』


言葉に詰まる。


なぜならユイカを瀕死にさせたその相手とは、俺らの探し出している大切な人間だからだ。


リンゼル『聡様…なのか?』


カスティス『ど、どうしてそれを!?』


ミチル『マリヤ様は聡様と美乃梨様の持つ意志を感じ取ることができるのですよ。』


シルス『カスティス、聡様なの…か?』


どうしていいものなのか。


ここでそれを言ってしまってはいけないような気がする。


だけど仲間のため、カシュパラゴの為、聡の為…


俺は全てを話すことにした。


カスティス『あれは間違いなく聡…でした…』


その言葉に側近達はざわめいてある。


側近A『どうするのだ!美乃梨様は我々の護衛があり何とか向こうの手に渡らずに済んだものの、聡様は完全にシドマのものとなってしまったではないか!』


側近B『無力な聡様ならともかく、あの優秀な剣技を持つユイカ上級騎士を瀕死にまで追い込む力をつけているとは…』


側近C『まだ確認していない者はさて置き、この二人あって現世とこちらの安定が保たれるというのに…これは困ったものですな…』


嬢ちゃんと聡は現世とこちらを何の弊害もなく行き来することが出来る数少ない存在。


俺たちカシュパラゴ、シドマの人間は向こうに実体としていれるのは、数秒〜1分程度。


そんなものしかいれないのかと思うが、この数秒いるだけでも俺たちにかかる負担は相当なもので、体力は大幅に消耗し、1日動けなくなるぐらいの疲労感に襲われる。


もしも自分の限界以上の時間現世にいると、身体が順応できず溶け出してしまうか、もしくは破裂してしまうと言われている。


ただ、特殊な魔法により現世に精神だけを送り込むことができる。


だから俺とユイカは聡の心の中にいることができたのだ。


嬢ちゃんはマリヤ様の後継としてこの世界を治める者【世の後継者】と呼ばれ、聡のように何の前触れもなく突然現れたどちらの世界も行き来可能な者を【世の順応者】と呼ばれる。


世の順応者はその意志を持ち始めた瞬間にマリヤ様を通じで発覚する。


聡はたまたま嬢ちゃんの近くにいたのですぐに見つけ出すことができたが、マリヤ様が感じた世の順応者は、誕生したことはわかるのだが、マリヤ様、もしくは嬢ちゃんの近くに極端にいなければ明確な居場所というのはわからない。


今のところ世の順応者は聡を含めて現世には4人いるらしい。


マリヤ『聡が向こうの手に堕ちましたか…ユイカをあのような状態にするということは、かなりの力を手に入れているのですね…』


リンゼル『ユイカをあそこまでにするということは、取り戻すといっても手を抜いていてはこちらがやられてしまうな…』


シルス『…苦渋の決断だが…少年を倒すしかない…』


ミチル『それしか道はないようですね…』


聡を倒す?…つまり殺すということなのか。


俺は今話し合われていることをすぐに把握することが出来なかった。


しかし考えるより言動が先をいっていた。


カスティス『必ず聡を連れ戻します!この命に代えても!』


俺がその言葉を言った直後、一気に空気が変わった。


側近B『カスティス上級騎士!それを言うということは、何か勝算があるのかね!』


俺は黙り込み、


カスティス『いいえ…ありません…』


側近A『適当なことを言うな!策があるわけでもないのに無駄な発言はよしてくれ!』


側近C『感情だけで動いているようでは、騎士として失格じゃないのかねカスティス殿。』


俺は側近たちに散々な事を言われた。


心が折れそうだ。


厳しい訓練を重ね、上級騎士になったのにもかかわらず、こんな惨めなことはない。


悔しくて、苦しい…


正直言ってあの力を手にした聡を助け出す勝算なんてないのかもしれない…だけど!


聡を助け出したいという思いは本物だ。


それに俺の剣にも約束したんだ。


シルス『カスティス…気持ちはわかるが、今の聡様は倒さなければ我々に不利な状況…』


シルス様が言い切る前に俺はもう一度口を開いていた。


カスティス『あいつより強くなります!今は無理かもしれない!だけどこの剣と約束したんです!何があってもあいつを助け出す!この命に代えてもと!』


思いの丈、全力で訴えたその勢いにこの部屋にいる側近たちは騒めいたものの、俺の言葉に動じることなく、四大騎士様たちは語りかけてきたのだった。


ミチル『でもカスティス、お話を聞く限りでは四大騎士と同等、もしかしたらそれ以上に手強い存在となっているかもしれません。あなたのその感情だけで行動していては、このカシュパラゴが滅ぶかもしれないのですよ。』


リンゼル『お前はこの世界全ての命を背負える覚悟があるのか?俺よりも弱いお前に?』


カスティス『そ、それは…』


四大騎士様たちは冷静かつ的確に物事を考え突き詰めてくる。


一時の感情に流されることのない精神力。


やはりこの方々は騎士のトップに君臨するにふさわしい人たちだ。


俺の力だけでは敵わないのか…


そう思った時。


【約束…したよなカスティス?】


『お前…そうだったな…』


【頼んだぞ…】


『あぁ、任せておけ…』


俺の剣が一人でに光を放った。


その光景にここにいる者たち全員が驚きを隠せなかった。


シルス『言葉を唱えずに剣が光を…』


ミチル『しかも純正の真っ白な輝き…』


俺は剣を取りマリヤ様に改めて頭を下げる。


カスティス『マリヤ様!どうか私にチャンスを与えては頂けないでしょうか!少しの間でいい!聡に勝てる力は完全に身につかないかもしれない…でも!アイツに届く技を身につけてみせます!そして必ず…必ず聡を救い出してみせます!』


側近B『お、おい!マリヤ様に向かってお願いなど失礼だろカスティス殿!』


リンゼル『黙れ!俺たち騎士に守ってもらってる分際でしゃしゃり出てくるんじゃねー!』


リンゼル様のその言葉に側近達は一気に黙りこむ。


マリヤ『私はこの世界を守らなければならない。確実なものでなければ許可は出せません。』


カスティス『そんな…』


マリヤ『しかしカスティス、あなたの覚悟、剣を通して私に流れ込んできます。あなたの剣は私の魂が込められている。その剣が示すものは間違いないものです。』


カスティス『で、では!?』


マリヤ『あなたの想い、そしてその剣に私は賭けてみたい!そう思うのです。確証はありません…あとは皆の判断に委ねたい思います。』


そういうと側近達は再びざわめき出す。


やめておいた方がいい、きっと失敗する、誰が責任を取るなど、自分たちの地位や名誉のことしか考えない意見が飛び交う。


しかしそんな中、四大騎士様達は即答した。


リンゼル『マリヤ様のお考えのままに私達は行動させて頂きます。』


ミチル『マリヤ様の仰せのままに。』


シルス『カスティスの力を私も見てみたい!やりましょうマリヤ様!』


マリヤ様は四大騎士様達の言葉に頷き、椅子から立ち上がった。


マリヤ『いいですか!ここにいる皆に告ぐ!聡のことはカスティスにかけましょう!ただカスティスももしもの時は覚悟してください…止む終えません、聡を倒します…いいですね!』


『はっ!』


こうして聡の討伐は、再び聡奪還へと変わった。


リンゼル『カスティス、本当にできるんだな?』


カスティス『やり遂げてみせます!なんとしても!』


リンゼル『そうか、頼んだぞ。』


シルス『お前なら必ずできるぞカスティス!』


ミチル『頼みましたよ、カスティス。』


カスティス『はっ!』


世界の命運を俺に託されるというのは正直かなりの重みを感じる。


逃げ出したいぐらいだ。


だけど、この命に代えても取り戻したいと感じるし約束した。


ここで逃げ出してるようではあのシドマには到底敵わない気がする。


俺が俺自身を信じられなくてどうする。


必ずあいつを取り戻す技を身につけるんだ。


俺はそう心に誓った。


ガチャッ


カスティス『お、お前ら。』


部屋を出ると外には上級騎士の皆が、俺のことを待っていた。

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