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贖罪  作者: もんじろう
9/14

9

 月明かりで刃が光っている。


「大人しくして」


 奈央が言った。


 栞里が動かなくなると、今度は友紀が突きつけられる。


 2人は大人しくなった。


「あたし、昨日も夢を見たの」と奈央。


「亜美が落ちたときの夢を」


「………」


「………」


「あのとき、あなたたちが、あたしを押したよね?」


 奈央の言葉に、2人は何の反応もしなかった。


 いや、出来なかった。


 ただ、両眼を大きく開いて、奈央の動きを見つめる。


「栞里、押したよね?」


 包丁が栞里を向く。


 栞里は、ゆっくり頷いた。


「友紀、押したよね?」


 友紀も頷く。


「あなたたちのせいで…あたしは…あんなこと、したくなかったのに」


 奈央は泣きだした。


 涙が頬を、伝い落ちる。


「でも、あたしも捕まりたくなかったから、ずっと黙ってた」


 奈央が交互に2人の顔を見る。


 泣いたため、眼が赤くなっていた。


「あれから、あなたたち、亜美のことも忘れて、のびのびやってたんでしょ? 栞里は親の会社に就職して贅沢三昧。友紀はエリートと結婚して、幸せなのよね」


 2人は動かなかった。


 奈央が何を言おうとしているのか、まったく分からなかった。


「しらばっくれてもダメよ! ちゃんとSNSを見てるのよ! 2人とも毎日、楽しくて楽しくて、しょうがないんでしょ!」


 奈央が激昂した。


 栞里に顔を近づける。


 栞里が激しく頷いた。


 とにかく、奈央を刺激するのは良くない。


 奈央の眼が完全に、おかしい。


 怒られれば、本当に刺しかねない。


「あたしも最初のうちは良かった」


 奈央が包丁の刃先を、左右に振る。


「高校を卒業して大学に入って…2年のときに親が経営してた工場が倒産した」


 奈央の声は再び、冷静なものになっていた。

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