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「さっきは無かったのに…」
栞里が首を傾げる。
「なんてタチの悪いイタズラ!」
栞里は吐き捨てるように言って、入口へと戻った。
入口の前に、誰かが倒れている。
「ええ!?」
栞里が驚いた。
友紀だ。
友紀が、うつ伏せで倒れている。
栞里が駆け寄った。
「友紀、どうしたの!?」
栞里が友紀の身体を揺すり、呼びかける。
突然。
栞里の身体を激しいショックが襲った。
栞里は一瞬で気を失った。
栞里が目覚めると、目の前に友紀の顔があった。
お互いに横向きに倒れていて、友紀の顔は逆さまになっている。
友紀の両眼は見開かれ、必死に栞里を見つめていた。
友紀の口には、粘着テープが貼られている。
(どうしたの!?)
そう言おうとした栞里は、自分の口にも粘着テープが貼られていると気づいた。
身体を起こそうとする。
動けない。
両手が後ろで縛られ、両脚も縛られていた。
「2人とも、起きた?」
奈央の声だ。
2人の間に奈央が顔を差し入れ、それぞれの顔を確認した。
「良かった、起きたね。スタンガンって、よく分からないから」
奈央が言った。
栞里と友紀は、わけが分からなくなったが、状況を問い質そうにも、この状態では何も出来ない。
2人が身体をよじり、「ンーンー」と、うなる。
奈央が、栞里の顔に何かを突きつけた。
小さめの包丁だった。