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確かに、人が隠れるには充分なスペースがある。
「でも」
栞里が言った。
「どうして、今頃になって?」
「そうよね」
友紀が首を傾げる。
「そんな動画があるなら何故、あのときに出さなかったの?」
「それは分からない」
奈央が首を横に振る。
栞里と友紀が、入口へと戻った。
奈央が少し遅れて、2人の後ろを歩く。
栞里が、スマホを出した。
「この時間で合ってるの?」
奈央に訊いた。
明らかにイライラしている。
(何故、こんなことに巻き込まれなければならないのか?)
そんな顔だった。
「うん。この時間に、この場所に来ないと、動画をネットに流すってメールに書いてあった」
奈央が答える。
「そのメールを消しちゃうなんて、あんたグズだね! 昔もそうだった!」
友紀が声を荒げた。
長い時間、封印していた時が戻ったようだった。
以前の関係性、栞里と友紀が上で奈央が下という日常を、3人が思い出していた。
「ホント、使えないわね」
栞里も不満を奈央に、ぶつけた。
奈央が口を開き、2人に何か言おうとした、そのとき。
「お前たちが」
しわがれたような、性別も分からない低い声が、突然、屋上に響いた。
3人の女は驚きのあまり、ビクリとなった。
「亜美を突き落としたのは知っているぞ。お前たちは罪を償わねばならない」