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徐々に生活は元に戻っていった。
警察は事件を事故と判断した。
お互いに弱味を握ってしまったからか、栞里と友紀は、あたしを避けるようになった。
亜美が居なくなれば、あたしがイジメられるのではないかという心配は、思ってもない形で消えた。
3ヶ月経つと亜美の事件は、もう誰も話題にしなくなっていた。
そして、あたしは高校を卒業し、大学に…。
真っ暗な部屋の、ベッドの中で、そこまで思い出したあたしは、すぐそばに気配を感じた。
来た。
また、来たのね…。
深夜。
高校の校舎の屋上。
3人の女が、入ってきた。
「ちょっとホントに、ここに来いって?」
先頭の女が、後ろを振り返って言った。
「………」
声をかけられた女はボーッとして、返事をしない。
「聞いてるの、奈央!?」
奈央はハッとなった。
「ホントだよ、栞里」
奈央が先頭の女に言った。
「亜美が落ちたときの動画を持ってるって?」
もう1人の女が奈央に言った。
「うん。そうだよ、友紀」
奈央が頷く。
「そんなはずないでしょ」と栞里。
「あのとき、アタシたち以外は、誰も居なかった」と友紀。
「そうよ」
栞里が言った。
「あそこに居たのかも」
奈央が入口の右側を指す。
そこには給水塔の土台があり、3人の位置からは、後ろが死角になっている。
奈央が2人を誘って、そこへと歩いた。