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いやだ、いやだ。
こんなことしたくない。
絶対に、したくない。
やめて。
お願い、やめて。
でも、あたしの口は開かない。
喉まで出かかった言葉は結局、出てこない。
あたしの両手が、震えてる亜美の前まで来た。
「ほら、ドーンって」
「ドーンって」
2人の声。
怯える亜美の懇願する眼が、あたしの眼と合った。
(やめて。助けて、奈央)
実際には亜美は何も言わなかったけど、あたしには亜美の心の声が聞こえた。
ダメだ。
やっぱり、こんなことはダメ。
「やめて!」ってハッキリ言って、亜美を助けるのよ!
あたしの両手が。
栞里と友紀に肘を掴まれて、押された両手が。
亜美の身体に、ほんの少し触れた。
その瞬間。
強風が吹いた。
亜美の身体が、グラグラと揺れて。
「イヤーーーッ!!」
あたしは眼が覚めた。
夢だった。
最近、あのときの夢ばかり見る。
あれから、6年も経ってるのに。
アパートの、あたしの部屋。
闇の中で、枕元の時計を確認すると、夜中の2時。