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そう言った後に、奈央はニヤーッと笑った。
「2度と亜美に『ブス』と言えない顔にしてあげる」
包丁が、きらめいた。
どのくらい経ったかな?
夢中になってたから、分からなくなっちゃった。
あたしは足元で倒れてる栞里と友紀を見た。
2人の顔は血まみれだ。
我ながら、上手く出来たと思う。
こんなに簡単だったんだ。
こんな奴らに怯えてたなんて、バカみたいだ。
ああ。
あのとき。
亜美が屋上の端で立たされた、あのとき。
こいつらをやっつけて、亜美を助ければ良かった。
出来たはずなのに!
勇気を出せば出来たのに!
ごめん。
ごめんなさい、亜美。
あたしのせいよ。
あたしが勇気を出してれば、あなたは…。
亜美が、あたしの前に現れた。
あたしは亜美に土下座した。
ごめんなさい。
ごめんなさい、亜美。
許して。
2人は、酷い目に遭わせてやったから。
どうか許してください。
『奈央ちゃん』
亜美が言った。
『奈央ちゃん、分かったよ。許してあげる』
ありがとう、亜美!
良かった!
本当に良かった!
『これで仲直り出来たね』
うん、うん!
『私はこれで、天国に行けるよ。さようなら、奈央ちゃん』
そう。
良かった!
ホッとしたよ。
ありがとう!
さようなら、亜美!
亜美が笑顔になった。
昔、よく見た笑顔。