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奈央の生暖かい息が、栞里の顔にかかる。
「占い師は、その後、ブレスレットを買ってくれだの、どうのこうの言ってたけど、あたしはそんなのどうでも良かった! だって、あたしが毎日、毎日、何故、こんなひどい目にあってるのか、やっと分かったんだもの! ねぇ、栞里、分かったでしょ!?」
「………」
「………」
奈央の鬼気迫る様子に、2人は答えない。
ただただ、怯えた眼で奈央を見つめ、その声を聴き続ける。
「亜美よ」
奈央が言った。
「亜美の霊が、あたしに取り憑いてるの! だから、何もかも上手くいかないのよ!」
奈央の瞳がギラついた。
「それに気づいたら…毎晩、あのときの夢を見るようになった。最初の頃は見たけど、そのうち見なくなってた、あの夢を。亜美を、あたしたちで突き落とした夢を。そして夢が続くうちに…」
奈央がいったん、声を落とした。
栞里から顔を離し、友紀に寄せ、また栞里に戻る。
「現れたのよ!!」
突然、怒鳴った。
「亜美が、あたしのベッドの横に!!」
「………」
「………」
「亜美は、あたしに訴えかけてきた。悲しかった、痛かった、助けて欲しかったって。そして…悔しかったって!!」
「………」
「………」
「あたしは亜美に、お願いした。本当に心の底から謝るから、あたしから離れて成仏してって。そうしたら、亜美が言うのよ。栞里と友紀に罰を与えないと…って。あたしが亜美の代わりに、あなたたちを懲らしめたら、許してくれるって。そりゃ、そうよね! あんなことをしておいて、あなたたちだけ幸せなんて、許せるわけないじゃない! だから、あたしは…」
奈央が包丁を2人に交互に見せつけた。