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魔物に襲われていた人物の元へ向かうと座り込んで震えていたのはシュナイアやクレイグと同じぐらいの年頃の女の子だった。桃色のツインテールの髪にスカイブルーの大きな瞳に涙を滲ませている。

シュナイアは少女に駆け寄り手を差し出し



「もう大丈夫よ、魔物は全て退治したわ。さぁ、立てるかしら?」

「は、はい!危ない所をありがとうございました!」

「無事で何よりよ…あら?貴女怪我をしているわ」

「擦り傷です…逃げる時に転んでしまって」



擦り傷、そう聞いてシュナイアはホッとする。

シュナイアも一応回復魔法も使えるのだが本職である神官とは違ってちょっとした怪我にしか効かないのだ。

そうしてシュナイアは少女の怪我を魔法で癒す。

淡い光に覆われた怪我はしばらくすると跡も残さず綺麗に消えていた。



「これで大丈夫そうね。ところで貴女、ここへは一人で?あ、名乗らずにごめんなさいね。わたくしはシュナイア・アレステル。こちらが従者のクレイグよ。」

「わ、私も助けて下さった方に名乗らず申し訳ございません!スフィアナ・マグルドと申します」



(スフィアナ・マグルドですって!?…何でこんな所で出会うのよ!?)



スフィアナ・マグルド。彼女も乙女ゲーム【異世界でトキメイテ☆】の登場人物であったのだ。

攻略者の妹にしてヒロインの親友ポジション。サポートキャラとでもいうのだろうか、何かとヒロインの手伝いをしていたとシュナイアは記憶している。

ヒロインの親友ならばシュナイアとは対立していたと言っても過言ではない。



「マグルドと言いますとスフィアナ様はマグルド侯爵家のご令嬢ですわね?」

「はい、シュナイア様は公爵家の…こんな形ですがお目にかかれて光栄ですわ」



ポッと頬を赤く染めるスフィアナはとても可憐でシュナイアは内心、可愛い!やばい!!と興奮するのだがそこは公爵家令嬢。ポーカーフェイスを気取り話を続ける。



「スフィアナ様は何故護衛も連れずこんな所へ?」

「護衛は居たのですが…魔物に怖気付いて私を置いて逃げてしまったのです」

「なんてこと!後ほどその方達の特徴をお聞きしても?今後この仕事を続けられなくしてあげますわ!」



護衛とは信用第一なのだ。

簡単に依頼主を見捨てて逃げるなど言語道断!とシュナイアは呆れてしまう。

しかもそれが大人だったというのだ。魔物は魔物でも先ほどの魔物はそこまで強いものでもなく護衛業をしているのであれば簡単に倒せるレベルだ。

きっと自分達の実力を偽り、仕事を受けていたのだろう。



「とにかく我が家でスフィアナ様を保護いたしますわ!侯爵家に馬を飛ばし、貴女の無事を報せましょう」

「何から何まで申し訳ありません。」

「構わないわ、これも何かの縁でしょうし」



彼女を安心させるためにシュナイアが微笑むと、スフィアナは目を輝かせ



「シュナイア様はお強い上にお優しいのですね!!」

「そ、そうかしら?でもほとんど魔物を倒したのはクレイグよ?」

「クレイグ様もお強いですが、シュナイア様の魔法も素晴らしかったです!」



スフィアナにそう言われ、後ろではクレイグが小さく頭を下げる。

そう言えば先ほどからクレイグは静かなのは従者モード全開だからなのね!とシュナイアは思い出した。

それはそれで寂しいと思いながらもシュナイアはスフィアナを自宅へと案内し始めた。





公爵家へと帰り、父親は仕事で不在のため母親へと報告すると執事へ馬を飛ばすように指示を出した。

そしてメイドにはスフィアナの汚れてしまった服の代わりを用意させ、着替えてもらう。そうしてようやく落ち着いたスフィアナはシュナイアと共にメイドの淹れた温かい紅茶を口にしている。



「まさかシュナが女の子のお友達を連れて来る日が来るなんて…夢のようね!」



うふふ、と嬉しそうにシュナイアの母親レイチェル・アレステルは微笑む。



「お友達…私、シュナイア様のお友達になりたいです!」

「あら、まだお友達ではなかったの?」

「スフィアナ様とは先ほど初めてお会いしたばかりでしたからね…わたくしでよろしけ…」



シュナイアは言いかけて止まった。



(ヒロインの親友になる予定のスフィアナとわたくしが友達になっていいのかしら…まぁ、ヒロインとは対立しなければいいのよね?)


不安はあるがこんな素敵なお誘いを断る訳にはいかないのだ。何せシュナイアに今の所同じ年の友達はいない。クレイグはどんなに仲が良くなっても結局は主人とその従者という壁が邪魔をする。

シュナイアは小さな拳を握り、グッち力を入れ



「スフィアナ様!是非わたくしとお友達になってくださいませ!」



勇気を出して自分からもお願いしてみたのだ。

するとスフィアナはまたもその大きな瞳に涙を滲ませ



「はい!シュナイア様!!」


そういってシュナイアの手を取り、両手でギュッと握りしめた。



(うわー!何だか照れ臭いわ!!もう何年もこんな気持ち味わう機会がなかったんだもの!)


でもとてもいいものだ、とシュナイアはスフィアナの様に頬を赤く染めて微笑むのだった。



そうして最愛の娘の青春を母であるレイチェルは、うちの娘とそのお友達が可愛過ぎる!!!とシュナイアと同じ銀髪を振り乱し悶えるのであった。

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