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とある昼下がり、本日は家庭教師であるマティルドが王都に出かけているので魔法学の授業が急遽休みとなったシュナイアは特にする事もなく自室でふかふかのソファーに腰をかけて考えごとをしていた。

本日の議題は彼女の真の目標についてらしい。



(最も優先すべき案件は婚約回避、魔王説得なのだけれどそれ以降…つまりわたくしが生きる目的…ここの所バタバタして目指せ!スローライフ!!なんて思っていたけれどスローライフにだって色々種類というかそういうのがあるものよね)



さすがに実家に引きこもりニート生活なんて出来る訳がない、しかし今の親馬鹿両親ならそれも許されそうだとシュナイアは苦笑する。



「婚約を回避…するのならわたくしだって普通の恋愛も出来るのかしら?」



ポツリと溢れる言葉はシュナイア以外誰もいない自室に静かに消えていく。

シュナイアは静かに目を閉じ、生前の事を思い出す。



(…思い返せば生前だってまともな恋愛をした事がなかったのだもの。例え生まれ変わって悪役令嬢になったからといって諦める必要は無いのよね。でもわたくしなんかの事を好んでくれる人なんて居るのかしら……今の所我が儘を言ったり誰かを傷付けるなんて行為はしていないのだからあの悪役令嬢とは丸っきり違うわ…でも…でも)



シュナイアが恐れていたのはゲーム補正という存在だった。

ここは乙女ゲームの世界、そして自分はそのゲームの中のキャラクターとして生まれ変わった存在。であれば人生はゲームの物語通り進んでいくのかもしれない。例えゲーム内のシュナイアと全く違った行動、人付き合いをしていてもいつゲーム通りに補正されるかわからない。

婚約を回避しても何か不思議な力で婚約させられるかもしれないし、シュナイアが無意識に誰かに嫉妬したり恨んだ気持ちを向けて魔族化するかもしれない。



(こればっかりはわたくしでは覆せない力よね…まぁ最初から諦めてゲーム通りに物語を進めるというのはわたくしらしく無いのだからここはやはり違う事をして……)




いつの間にか眉間にシワを寄せながら考え込んでいたシュナイア。すると自室のドアが軽くノックされる。



「シュナ、今大丈夫かい?」

「お父様?どうぞ?」



シュナイアがソファーから立ち上がりドアへと向かう。すると父親であるアレステル公爵は控えめにドアを開けその場で



「実はシュナに紹介したい人物がいるんだ」

「紹介…どなたですの?」

「紹介しよう、さぁこちらに来てごらん」



そう言ってアレステル公爵は自身の後ろに居る誰かを前に促す。

姿を現したのは深紅の短い髪、そして漆黒の瞳を持ち整った顔のシュナイアと同じ年齢ぐらいかと思われる少年だった。

その漆黒の瞳を見たシュナイアは最近どこかでその色と似たものを見た気がする…吸い込まれそうなほど黒い瞳、そう思いながらも父親の言葉を待つ。



「彼の名前はクレイグ、今日からシュナの従者になってもらおうと思ってね」

「お初にお目にかかります、クレイグです。シュナイアお嬢様よろしくお願いします」

「え?従者…ですの?」



シュナイアが首を傾げるのも無理はなかった。

何故なら乙女ゲーム内の悪役令嬢シュナイアは従者を連れていなかったからだ。理由は従者を雇っても我が儘令嬢の元では3日ともたないからだという。




(一体どういう事ですの?ゲームとは違う行動を〜なんて意気込んではいたけれどまさか勝手にこんな事になるなんて…)




「彼もまだ礼儀作法を勉強中だ、色々指導してやってほしい」

「え、ええ…わかりましたわ」

「屋敷の事は一通り説明済みだ。では頼んだよ」




そう言ってクレイグを残しその場から去ってしまったアレステル公爵、そして混乱しつつも了承してしまったシュナイア。さすがに一目見ただけで嫌とは断れず…というよりも生前から頼まれたら断れないというのが彼女だったのだ。



「ええっと…クレイグだったかしら?」

「はい、お嬢様」

「わたくしも従者を取るのは初めてなの…お互い頑張りましょうね?」

「勿体なきお言葉」

「礼儀は大事なのはわかっているのだけれど二人の時はもっと気楽に接して欲しいわ」



堅苦しいのは息がつまりそうで苦手なの、そうシュナイアが言うとクレイグは鳩が豆鉄砲喰らった様な顔をして



「お嬢様は少し…いえかなり…」

「変わっている、そうでしょ?」

「申し訳ございません」

「いいのよ、思った事は言ってもらった方が助かるわ」



(そう、わたくしが間違った事をしたら注意してくれる人物が居てくれた方がいいもの)



するとクレイグは少しはにかんで



「かしこまりました、お嬢様」



(うん、何でゲームとは違う事になっているのかは謎だけれどクレイグはとてもいい子そうだわ。この子となら上手くやっていけるかもしれないわね。それにしても彼の瞳…どこかで…まぁ、そのうち思い出すわよね)



こうしてゲームでは存在しなかったシュナイアの従者が誕生した。

もしかしたら元々存在はしていたけれどゲームのシナリオ開始まで従者の仕事が続かなかった勢かもしれないとシュナイアは少し考えもしたが今の自分なら従者がうんざりする様な我が儘を言わないし彼に問題が無い限り続くだろう、そう思って先ずはこれからの事をクレイグと話し合う事にしたのだ。

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