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時の天使は世界を嘲笑う  作者: キミダリ
第1章 天使の始まり
13/16

13 楽しみ

 アリシアはリヒトへの用事が終わったことを感じ、分身を解除した。

 それを気配で察したのか、コロクが話しかけた。


「どこか嬉しそうですね、アリシア様」


「ん?そう見えますか?」


 足元に寝転がっていたフェンリルは起き上がると、体から光を放ちながらその姿を変えていった。

 すると、その姿は二足歩行の獣人のようで、狼の耳と尻尾を付け、メイド服を着ていた。


「私の目からもそう見えます」


「そうですか。あなたたちがそう言うのでしたら、そうなんでしょうね。実際、嬉しい、というか楽しいと思っているのは事実ですしね」


「ようやく始まるからですか?」


 フェンリルが尋ねると、アリシアは頷いた。


「そうですね。ずっと待っていましたけど、ようやくです」


 アリシアは自分のステータスを《時の魔眼》で見る。


「レベルだけ教えましたけど……ステータスまで教えたら面倒でしたから、これで良かったですかね」



ーーーーーーーーーーーーーーー


アリシア・ラインセル


年齢:18

種族:人族

性別:女

ジョブ:時の天使

属性:時


レベル:500

体力:20654/20654

魔力:37005/37005

物攻:12343

物防:7645

魔攻:23080

魔防:8001

俊敏:15438


スキル:時の魔眼

    時の魔力

    不老

    暗殺技10

    隠密10

    気配察知10

    格闘技10

    体力上昇10

    物攻上昇10

    体力自動回復10

    魔銃技10

    必中

    魔攻上昇10

    魔力上昇10

    魔力自動回復10

    魔力察知10


ーーーーーーーーーーーーーーー


『不老』

このスキルを取得した瞬間から、その肉体の成長は止まり、寿命はなくなる。


 アリシアが《不老》を手に入れたのは三年前の十五歳の時。コロクやフェンリルを手に入れる少し前のことだった。

 これにより、アリシアは十五歳から肉体年齢は成長していない。ダンジョンを攻略するときに《叡智の書》を捨てる代わりに手に入れたものだ。


(今の私のステータスは、人族に見せるには抵抗がありますね。五歳の頃もそうでしたけど、今も十分に人族を外れていますね)


 《不老》を手に入れたことによって、アリシアは寿命の長い魔族との差がなくなった。違うのは見た目ぐらいで、それ以外は全て人族からしたら化け物だ。


「……私の弟が、いつか私のことを殺してくれるんですよ」


「……私としては、そのような者は早々に殺しておくべきと思うのですが……そういうことは関係ないのでしょうね」


 フェンリルは苛立たし気にそう言う。


「そう言わないでください。私の楽しみの一つなんですから。いつか自分を殺してくれるかもしれないという存在は、生き甲斐ですよ」


「殺せる存在が、生き甲斐ですか?」


「はい。言い表しづらいのですが……娯楽みたいなものですよ。他の人が理解できなくとも、私が楽しみなんですよ。それでいいと思いますが?」


「そうですね。無駄なことを申しました」


「無駄ということはないと思いますが……まぁ、いいでしょう」


 アリシアは少し考えるようにして、フェンリルに言う。


「フェンリル、少し副隊長たちを呼んできてください。朝に来てもらったばかりですけど、毎日報告に来てもらうってことを伝え忘れてました」


「かしこまりました」


 フェンリルはお辞儀をして、アリシアの部屋を出て行く。すると、飛んでいくような速度でフェンリルが行くのを気配で感じ取った。

 それをアリシアをコロクは顔を見合わせて、アリシアは苦笑いをし、コロクは呆れて手で顔を覆った。


「申し訳ありません、アリシア様。あのように慌ただしい者で」


「いつものことですけどね。それに、そうそうあれには気付く人はいないでしょうから、大丈夫だと思いますよ。ここから副隊長たちの所までなら、そうそう気付く人にも会うことはないでしょうし」


「だとしてもです。あいつの行動でアリシア様の品格が疑われます」


 コロクの言ったことに、アリシアは久しぶりに本気でおかしくて笑っていた。その笑いを押し殺すようにしており、肩が震えている。


「ふふふっ、私の品格って。コロク、あなたがそうして私のことを思ってくれているのは嬉しいんですけど、そこまで気にしなくてもいいんですよ。私の品格など、すでに地に落ちていますので。品格を気にするくらいなら、人族を裏切るような真似はしませんよ」


「……僭越ながら申し上げさせていただきますと、私はそのようなことはないと思っております」


「品格のことですか?」


「アリシア様は人族を裏切ったと仰いましたが、私はそうでないと思っています。人族にはアリシア様を受け入れることができるほどの器はありません。元々人族には扱い切れる方ではないのです。裏切ったのではなく、見限ったということでしょう」


 コロクが自信ありげに言い切っている。それが当然とでも言うように堂々としていた。


「あなたがそう言うのなら、それでいいと思うのですが、それはこちら側の理論です。向こう側からすれば、私はただ単に裏切っただけ。中身を知らない人は、表面で判断するしかないんですよ」


「……ですが……」


「それに、あながち間違ってはいないでしょう。裏切ったと見限ったというのは、見方が違うだけでやることは同じ。私はそれを認識しています。それに、結局勝てばいいんです。勝てば、私が正しい。それだけです」


「っ!アリシア様の御心のままに」


 コロクははっとしてさっと跪く。よくもここまで従順になるものだ、と育てたアリシア自身が驚いていた。


(そんなに尊敬されるほど優しく育てた覚えはないんですが)


 純粋に疑問に思いながら、アリシアは今日もゆったりと窓の外を見る。


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