第六話 死の下僕とスケルトンの利用法
夜明けを待って、行動を開始する。水夫スケルトンのいる浜辺にキルアは近付く。ゆっくりと歩いて行く。浜辺の水夫スケルトンは従命支配になっている。どういう命令を与えられているか、わからない。
最悪、四十体が団体行動で襲ってきたら、死ぬ。四十体が一斉に襲ってくる可能性は低いと思っていた。
四十体を引き連れてマラソンをすれば、一気に船の警備が手薄になる。手薄になったところを、他の誰かに財宝を狙われる可能性がある。
なら、二体か三体を一組にしておいて、それが襲われたら助太刀に入るようにしておけばいい。
「数体単位で襲ってくる――は、あくまでも予想だ。本当のとことは、試してみるまで、わからないな」
ゆっくりと浜辺を歩いて行くと、三体の水夫スケルトンが反応して走ってくる。どこまで追ってくるかわからないので、にどこまで従いてくるか試した。
三十mほど追い駆けてくると、水夫スケルトンは、それ以上に追わずに、持ち場に戻ろうとした。ここで『死者の支配』を試みる。水夫スケルトンに「停まれ」と命じる。
水夫スケルトンが止まった。「歩け」と命じると、再びまっすぐに歩く。「従いてこい」と命令する。これも命令に従った。
水夫スケルトンを従えて、シオマネキの住処まで移動する。水夫スケルトンに突撃を命令した。シオマネキ六体が相手では勝負ならず、水夫スケルトン三体は一分足らずで破壊された。
「シオマネキのほうが、水夫スケルトンより強いな。でも、シオマネキとて無傷ではない」
キルアは走った。また水夫スケルトンの三体を連れてきて、シオマネキにぶつける。
やはり、水夫スケルトンは破壊される。再度、難破船まで走って、水夫スケルトンを引っ張ってきて、ぶつける。
三回やると、へとへとになった。
「『死者の支配』は一日三回までか」
翌日も水夫スケルトンをシオマネキにぶつける作業を三回やった。シオマネキは十八体の水夫スケルトンと戦うと、行動に変化が見られた。シオマネキがあまり動かなくなった。
「シオマネキも、さすがに連戦で傷ついてきたか。これは行けるな。島の水夫スケルトンか、シオマネキ、どちらかを排除できるね。計算通りだ」
シオマネキがあまり動かなくなった。シオマネキの縄張りの外縁にある真珠貝を採取する。
真珠は洞窟の中に隠しておいた。水夫スケルトンを潰されたスケルトン・キャプテンが報復に来る可能性を考慮した。
宝に執着しているのなら、探しに来ない可能性がある。部下の水夫スケルトンを十八体も潰している。このままでは宝を守れなくなると怒り、報復に来る恐れがあった。
筵の中に白骨死体を『スケルトンの創造』でスケルトン化した。ダミーとして寝ていてもらう。キルアは洞窟から少し離れた洞窟を見張れる場所で寝た。
深夜にガチャガチャと骨が動く音がする。目を覚まして洞窟の入口を覗き見る。
キャプテン・ハットを被り、海賊船長らしいぼろぼろのフロック・コートを着たスケルトンが五名の水夫スケルトンを伴って入っていく。
「やはり報復に来たか。身代わりを置いて、正解だな」
キルアは起きると山の山頂へと急いだ。山の山頂に来ると、今度は火口の急斜面を背を向ける。下に向かって助走をつけて飛んだ。
キルアの小さな羽根が広げて下空を滑空する。そのまま滑空して、空路で難破船へとむかった。
「キャプテン・スケルトンが直接に支配できる数は五体まで。今の船に残っている水夫スケルトンは、従命支配で制御されたスケルトンだけ。ならば、支配権を奪える」
数分で難破船が見えてきた。難破船の見張り台の上に着地する。
すぐさま、二体の水夫スケルトンが見張り台に上ってこようとしたので、『死者の支配』で支配下に置き、命令する。
「水夫スケルトンよ。金の装飾品を持ってこい」
キルアが命じると水夫スケルトンは見張り台を降りる。見張り台で待た。数分で金の装飾品を装着して、水夫スケルトンがやってくる。水夫スケルトンから金の首飾りと指輪を貰う。キルアは装備できる装飾品を装備した。
水夫スケルトンに、次なる命令を出す。
「お前たちは、この見張り台を守れ。誰も近づけるな」
水夫スケルトンが見張り台を降りていったので、キルアは見張り台より上の位置、地上から二十mにするすると登っていく。
船の一番高い場所にいると、キャプテン・スケルトンが戻ってくる姿が見えた。
キャプテン・スケルトンはキルアを見つけると、足を踏み鳴らして怒った。
「おっと、財宝を掠め取られて、カンカンだね」
船と砂浜に残っていた水夫スケルトンが動いた。キルアをマストから引きずりおろそうと群がってくる。マストの上から羽を広げて滑空した。水夫スケルトンのほぼ全てが追ってくる。
キルアが飛んでいった先は、シオマネキたちの住処だった。キルアはシオマネキたちの頭上五mを飛んでゆく。
キャプテン・スケルトンはキルアの意図に気が付いた。キルアを追っていく水夫スケルトンを止めようとした。だが、一度に支配できる数に限りがあるので、大半の水夫スケルトンはシオマネキの住処に足を踏み入れた。
活動が鈍くなっていたシオマネキだったが、正面をきって飛び込んできた水夫スケルトンの集団には怒った。シオマネキと十数体の水夫スケルトンの乱戦が開始された。
キルアは戦いの結果を見ずに、山の山頂まで登った。キャプテン・スケルトンがやって来たら、滑空して下に逃げる。シオマネキの住処の頭上に滑空を決めるつもりだった。
山頂でキャプテン・スケルトンを朝まで待つが、キャプテン・スケルトンはやって来なかった。
「水夫スケルトンがだいぶ減ったから、これ以上に減ると財宝を守り切れなくなると判断したんだな。財宝の場所を動いたために、少しとはいえ、持っていかれた状況も影響している」
洞窟に静かに近づく。
中を確認するが。キャプテン・スケルトンの待ち伏せはなかった。筵の上では、身代わりになってくれたスケルトンが、バラバラになって壊されていた
「君の犠牲は、無駄にしないよう。俺は必ず島から出ていく」




