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第五話 死の奴隷の進化

 食糧が尽きてもアウト、島が噴火しても終わり。キルアは必死に銀の粒を集めた。

 ある朝、目が覚めると、椅子にラーシャが座っていた。


 ラーシャは澄ました顔で告げる。

「ありがたく思いなさい。そろそろ銀貨が貯まる頃だと思って、来てあげたわよ」


 キルアは溜め込んだ銀の粒を差し出した。


 ラーシャは、むっとした顔で冷たく告げる。

「どうやら、銀貨千枚分には少し足りないようね」


 ここでレベル・アップできないと、命に関わる。キルアは真珠も差し出した。


 ラーシャが厳しい視線で、真珠を鑑定する。

「質はまあまあのようね。いいわ。レベル・アップをしてあげるわ」


 キルアの体が火照って暑くなる。暑さは三十秒ほどで過ぎた。背中がむずむずする。羽が大きくなった気がした。


 ラーシャがつんとした顔で、事務的に告げる。

「キルアは、これでレベル三よ」


 背中の羽に意識を向けると、羽が動いた。

「背中の羽は飛べないけど、滑空はできるわ。暇な時に高い場所から飛んd、試すといいわ」


「身体能力は着実に上がっているんだな」

「人間化した時の戦闘能力は悪魔形態の時の八割よ」


「人間形態を保つたままでも、それほど弱くはならない状況は好ましい」


 ラーシャがテーブルに手を翳すと、四枚のカードが現れた。

 四枚のカードには、簡単な説明が書いてあった。


 キャプテン・スケルトン……船を操るスケルトンのリーダー。この進化を選ぶと、レベルが五に固定される。水夫スケルトンを作成でき、水夫スケルトンを支配できる。


 デーモン・キッズ……悪魔の子供。よく言えば平均的、悪く言えば特徴がない。将来に期待。


 鍛冶デーモン……鍛冶作業が得意で火を(おこ)せる。成長すれば強力な武器を作れる、生活系悪魔。


 死の下僕……人はどんなに強くなろうとも、死からは逃れられない。奴隷シリーズの進化系。


 キャプテン・スケルトンのカードに目が行く。


「キャプテン・スケルトンか。あの難破船の中で宝を守っている奴これだな。キャプテン・スケルトンに進化すれば、難破船の中にいる奴にも勝てるかもしれない。でも、先がないから、これは、なしだ」


 机の上からスケルトン・キャプテンのカードが消える。次にデーモン・キッズのカードに目が行く。


「これもないな。将来に期待といわれても、こっちは尻に火が着いた状態だ。モンブラン島にいたら、将来なんてものは、ない」


 デーモン・キッズのカードが机の上から消える。鍛冶デーモンのカードに目が行く。

「ちょっと、質問。次のレベルに必要な銀貨って、いくら?」


 ラーシャがつんとした顔で素っ気なく教えてくれた。

「銀貨にして、二千枚よ」


「やはり必要数は倍か。本来なら、これを選んで、銀を掘って精錬して銀を貯めたい」


 問題は時間が掛かりすぎる。キルアにはシオマネキを退治して真珠を頂く、ないしは、難破船の財宝を得るしか生き残る道がないかった。


「死の下僕が死の奴隷の進化系なら、やはりスケルトンを造れるのか?」


 ラーシャがあまり興味なそうな顔で解説する。

「ギフトによってはできるわよ。ギフトはどんなのが出るか、進化が決定するまで、選べないわよ」


 賭けだった。でも、生き残るには、死の下僕を選択する以外に道はない。

「わかった。俺は死の下僕に進化する」


 キルアの体が金色に輝く。

「進化を完了したわ。進化したキルアには、悪魔神様からギフトが一つ貰えるわ」


「頼むから、いいのが来てくれ」


 ラーシャが涼しい顔で告知する。

「一つ目は『死体発見』よ。知っている人間が死んでいる場合は、どこに死体があるかわかるわ」


 がっかりだった、完全な外れギフトだ。

「何処の誰が死のうが、今の俺には関係ない。俺に必要なギフトは力だ」


 祈るような気分でもう一つのギフトに期待する。

 ラーシャが微笑んで語る。


「おめでとう。もう一つは『死者の支配』よ。自分よりレベルが低く知能が低いアンデッド・モンスターを支配できるわ」


 キルアは悪魔神に感謝した。

「確認だが、支配できるアンデッドは他人が作ったものでも、いいんだな?」


「そうよ。ただし、他人が直接支配しているアンデッドはダメよ」

「浜辺にいるやつは、どうなんだ?」


 ラーシャが冷たい顔で突き放して発言する。

「そんなの、知らないわよ」


「それはないぜ。浜辺の水夫スケルトンを支配できるかどうかで、俺の今後は大きく変わるんだ。教えてくれよ」


 ラーシャが仕方なさげな顔で講釈する。


「一般論を語るわよ。キャプテン・スケルトンがいた場合に直接支配できるアンデッドは二レベル以下を合計十レベルまでよ」


 ラーシャの説明に疑問を持った。

「浜辺には四十以上いたぞ」


「それは直接支配ではなく。創造時に命令を与えて従わせる従命支配ってやつよ。従命支配のスケルトンなら『死者の支配』で支配権を奪えるわよ」


 活路が開けた。難破船側の水夫スケルトンを利用して、シオマネキとぶつけて両方の戦力を削げる。成功すればどちらかを排除できる。真珠か財宝で次のレベル・アップへの道を開ける。


「よし決まった。貰うギフトは『死者の支配』だ」


 キルアの体が一瞬、金色に輝いた。

「よし、これで早急に四レベルに上げよう」


 キルアはレベル・アップでもう一段強くなったら、残ったほうの勢力を片付けて、五レベルへの道を開くつもりでいた。


「レベル三の羽で滑空なら、レベル四の羽ならきっと飛べる。レベル四程度では時間は短い。レベル五なら、どうだ。長く飛べる。そうすればモンブラン島からだって、飛んで脱出できる」


 二大勢力を戦わせて、隙を突いて自分を強化する。この作戦しかないと、キルアは思った。

種族   死の下僕 レベル三

ギフト  『スケルトンの創造』『死者の支配』


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