表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/29

第十九話 海賊デーモンとサルバドデス開戦

 三回目の船を出した時のことだった。航海二日目にハリトンが見張り台から叫ぶ。

「海賊だ。航路を変えたのにここにも出やがった。俺たちに何か恨みでもあるのか?」


「おいおい、本当に嫌になるぜ」

 傭兵団長の髑髏の魔術師が船倉から出てくる。


 髑髏の魔術師が不機嫌な顔で訊いてくる。

「戦ったほうがいいか?」


「逃げきれるなら、逃げたほうがいい。海賊は最近、新兵器とか秘密兵器で兵装している」

「有り得るな。海賊の裏に国家がいる、との噂もある」


 普通なら振り切れるが注意が必要だった。

「俺の船のほうが速い。逃げ切れるとは思うが、念のためだ。何人か腕の立つのを甲板に上げくれ」


「やる事がなくて、暇にしている奴もいる。運動がてらにちょうどいい」

 髑髏の魔術師は六人の傭兵を甲板に上げた。


 船が速度を上げて振り切ろうとした時に事件は起きた。水夫スケルトンが船の帆を降ろそうとし始めた。

「おい、何をしている。止めろ!」


 キルアが指示を出すが、水夫スケルトンは命令を聞かない。水夫スケルトンが帆の一つを下ろす。急激に船の速度が落ちた。水夫スケルトンはもう一つの帆を降ろそうとする。


 キルアは帆を下ろそうとしている水夫スケルトンを『ソウル・ガン』で撃った。

 水夫スケルトンが弾け飛ぶ。


 髑髏の魔術師が異変を察知して叫ぶ。

「どうした船長」


「水夫スケルトンがおかしい。海賊に操られたかもしれない。全て破壊してくれ」


 キルアの指示で傭兵たちが水夫スケルトンを破壊に懸かる。異変を感じて傭兵たちも次々と出てきた。水夫スケルトンは武器を手に、傭兵に襲い掛かった。


 傭兵たちと水夫スケルトンが戦っている間に、キルアは船と意識を同調さる。自動で帆を上げ直す。傭兵が反乱を起こした水夫スケルトンを全て破壊する。どうにか、帆を上げ直した時には海賊船はかなり接近していた。


 ドンと音がして船が揺れる。海賊船とキルアの船が衝突した。傭兵たちが海に投げ出されそうになる。何とか皆ぎりぎりで()えて、海には誰も落ちなかった。


 キルアの船に海賊が乗り込もうとする。傭兵と海賊の乱戦が開始された。海賊船を引き離したいがうまく行かない。


 船に意識を合わせる。衝突の際に舵をやられていた。『船体修理』の効果を舵に働くように注力する。傭兵たちは強く、海賊を各個撃破していく。だが、数は海賊が多い。このままでは押し負ける。


 舵が回復して船が動くようになった。『追い風』の効果で船の帆が張られる。海賊船に船体を擦りながらキルアの船は前に進んだ。海賊船とキルアの船の距離が開く。


 海賊たちは船への乗り込みを中止した。勢いがついてしまえば、海賊船を引き離すのに苦労はなかった。


 バリトンが見張り台から叫ぶ

「船長、もう大丈夫だ。海賊船が見えなくなった。俺たちの逃げ切り勝ちだ」


 傭兵たちが緊張を解く。キルアも安堵した。


 髑髏の魔術師が厳しい顔で尋ねる。

「こういった海賊の襲撃はよくあるのか」


「戦争の機運が高った頃から増えた。今までにない、あの手、この手で、襲ってくる」


 夜が明けて朝になった。見張り台いるバリトンが大声で警告する。

「船長。ここで、ちょっとストップだ。船が近づいてくる」


「港までもう少しのはずだ。こんな近くで海賊か?」

 傭兵が武器を持って船倉から出る。バリトンが注意する。


「違う、海賊じゃない。サルバドデスの旗を掲揚している。海軍の臨検だ。おかしな行動を取るな。海賊船と誤認されると沈められる」


 バリトンの指示に素直にギルアは従った。キルアは『追い風』のギフトを中止する。錨を下ろして停止した。四十五m級の船が、ぴったりとキルアの船に横に寄せる。


 赤い服を着て帽子を被った人間の軍人が顔を出す。軍人が険しい顔で訪ねる。

「そこの船、サルバドデスに何の用だ?」


「何って、サルバドデスのために戦う傭兵を運んできたんだ」

 キルアの顧客である、傭兵団長の髑髏の魔術師が出てくる。


 髑髏の魔術師が(しわが)れた声で告げる。

「既に町長のテイラーとは契約してある。ここで停められたら戦場に行けない」


 髑髏の魔術師が書類を提示する。軍人は書類を確認する。

「行け」と軍人が厳しい顔で命じた。


 キルアは船を進め、港に接岸させた。港に商船は見えなかった。五十五m級の軍艦三隻と四十五m級の帆船が二隻、停まっているだけだった。平時には見られない光景だ。


 サルバドデスは海上封鎖に近い状況にある。海側から街に攻め込まれないための軍艦の配置だ。船が着くと、荷物を持った傭兵団の悪魔たちは下りて行った。


「街をちょっとばかし散歩してから、帰りたいんだがいいか?」


 バリトンは、苦々しく発言した。


「俺はすぐにも帰りたいぜ。おそらく、もう戦争が始まっている。ここからじゃ城壁の外はわからねえ。だが、いつ敵が海側から来てもおかしくはねえ」


「街を見て飯を喰ってくるだけだ。土産話にはなるだろう」

「冥土の土産にならなきゃ、いいんだがな」


 バリトンを置いて、大通りを歩いて行く。

《陸の海豚亭》が開いていたので入るが客はほとんどいなかった。


 ロイエンタールも逃げたのかいなかった。店にいた中年の女性給仕に尋ねる。

「客足がぱったりだね。みんな、どこに行っちまったんだい」


 給仕は苦い表情で語った。

「今頃は城壁の上か、墓の中さ。この街は国王派によって攻められているんだよ」


「なるほど、男たちは戦争中か。それで、街は落ちそうなのか?」


 給仕はむっとした顔で言い返す。

「この街の壁は厚い。金もある。傭兵も充分にいる。今日明日中に陥落って事態には、ならないよ」


「そいつはいい。なら、一杯だけ飲んでいこう。エールをくれ。あと、ソーセージがあれば、適当に」


 給仕は怖い顔でキルアを睨む。

「見たところ、あんたは街のために戦いにきた傭兵じゃないね。サルバドデスに何の用さ?」


「俺の仕事は傭兵じゃない。傭兵をサルバドデスに運ぶのが仕事さ。つまりは味方だ」

 女性給仕は不機嫌な顔のまま、注文の品を持ってきた。


 エールを飲み、ソーセージを喰らう。

 店を出て、城壁のほうに歩いて行く。人々の怒号と魔法が飛び交う音が聞こえてきた。


 キルアは羽を広げる。近くの高い建物の屋根から、戦場を観察する。戦いは攻城側が防衛側の三倍以上はいそうだった。


 給仕の話していた通りに城壁は厚い。門も頑丈だった。サルバドデスはすぐには落ちそうに見えなかった。


「お前、ここで何をしている」


 いつの間にか、背後を取られていた。振り返ると、羽を生やした悪魔が三人いた。うち一人は見知った顔だった。鉄壁傭兵団のレーガだった。レーガは怖い顔をしていた。


 キルアは弁解した。

「レーガさんだったか。ちょっと、戦場を見物に来た」


 レーガが武器を納める。

「戦場は見世物じゃない。とっとと帰ってもっと傭兵団を運んで来い」


「この戦いサルバドデスに勝ち目はあるのか?」


 レーガが(いら)っとした顔で言い放つ。

「勝たせるために、我々は雇われている」


「そうだった。邪魔したな。なら、帰るわ。ライバルがいないから、運送業は繁盛しそうだ」


 キルアは大通りに下り立つと、小走りに港に戻った。

 バリトンが冴えない面で訊いてくる。


「それで何か、収穫はあったのか?」

「サルバドデスは今日明日中には落ちないが、このままじゃ危険だ。現時点で敵は三倍だ」


 バリトンが息を吐くと、頼む。

「敵は三倍か。ならとっとと出て行こうぜ。夜に出れば人間には発見されづらい」


 夜中二船を出して、帰路に就く。二日目になると、見張り台のバリトンが大声を上げる。

「船長、まずい。人間の軍艦だ。八十五m級が八隻もいやがる」


 キルアは大きく船を迂回させる『追い風』を使用して速度を増す。軍艦は別の目的があるのか、キルアの船を追ってこなかった。国王派による海側からのサルバドデス攻略の準備は整った。大規模な海戦が行われる。


©2018 Gin Kanekure

【更新停止のお知らせ】

「ベビー・デーモンからのスタートだが、それがどうした。俺はもっと強くなる【キルア編】」の更新を停止させていただきます。この話をもって完結になります。


【ユウタ編】よりは読者に受け入れられたのですが、まだ、実力が及びませんでした。

PVも数日で最盛期の約20%まで落ち込み、大多数の読者は去りました。

今日まで応援してくれた読者の方には感謝しております。

悲しいですが、それでは、また次の作品でお会いしましょう。


2018.7.26 まだ、読み足りない方は新作の 『あくまで悪魔デス。いけるとこまで金の力でレベル・アップ~【キルア&ユウタ】編~』をお勧めします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ