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自己紹介


あれから何とか上半身を起こした。ありがとう腹筋。どれだけ寝ていたのか知らないが、君が健在でよかったよ。凝り固まっていたけど。

起こして見ると先ほどとは違うものが分かる。なんと俺の腕には色々刺さっていた。テレビで良く見る、点滴とか言うやつが両腕に沢山刺さってたから吃驚したわ。まじで俺どうなってたんだろう。とりあえず管は全部丁寧に外したけどね。人間の身体って、アンドロイド並に繊細だから雑な扱いは出来ない。



「さて、と」



次は探索をしよう。今まで寝ていたベッドから降りて、そうだな、まずは部屋の中央にある丸テーブルだ。本と箱が置いてある。怪しさ満点だからそれが最初。そうしたら次は部屋の隅々まで調べよう。まあ足が動けばだけど。

おっかなびっくりそっと足をベッドから下ろす。やはり凝り固まっている。転ばないようにだけ気をつけて、ゆっくり立ち上がる。

……うん、何とか立ち上がることは出来た。出来たけど足が棒のようで、多分このまま歩きだそうとすればバランスが取れず転ぶだろう。仕方なくベッドに腰を戻す。

マッサージでもすれば良いのだろうか。俺は整体については全くのど素人だから、ナンチャッテマッサージになるが、まあやらないよりはマシだろう。


グルグル足首を回したり、筋肉を揉みほぐしながら現在の状況を再確認する。思い出せる所まで思い出そう。


まず、俺の名前は日明圭吾。15歳で、慶松高等専門学校1年生だ。自分で言うのもなんだが、アンドロイド部所属の期待のエースだ。確か、最後の記憶は……。『圭ちゃん! またお漏らししたの!!!』これではない。ええと、夏休みか? 少なくとも現在、確実に言える最新の過去は、夏休みに従兄弟が開発したゲームのテストプレイしたことだ。よくあるRPGで、そこそこ楽しかったのを憶えている。でも、つまり、15の夏までの記憶しかないから、俺は最低15歳ということか。もしかしたら1年間の記憶が抜けて16歳かもしれないな。

それで、ええと、どうなって此処にいるのか……。俺は現在、病院で患者が着るような作務衣らしき服を着ている。管が沢山刺さっていたことと、周りの機械から、俺が危うい状態だったことは確かだろう。(危うい状態にさせられていたのか、そこから回復させようとしていたのかは不明だが)

そして、現在分からないこと。味方は不明。敵も不明。場所も不明で目的も不明。わりと詰んでるな。


筋肉が大分ほぐれてきた。この位なら歩けるだろう。試しに足を動かせばそこそこスムーズに動いた。いける。

はじめの1歩。幼稚園児よりぎこちないが、まあ目標はすぐそこのテーブルだし、頑張れ俺の足。

芋虫レベルの速さでテーブルに辿り着く。既に俺は虫の息だ。種族をヒトから虫に変えた方がいいかもしれない。まあそんなことは置いておこう、今は目の前の本と箱だ。

本は1冊。赤い表紙に黒い文字。文字は俺の読めない天井の文字と一緒だ。ならこれはもしかして暗号なのだろうか。俺宛の手紙という線と、単に暗号のコード表、という線があるが。でも天井に書くなら俺宛だろう。俺が起きて真っ先に見るのは天井なのだから。きっと天井には、本を読め、とか書いてあったのだろうな。書いた人は親切で書いてくれたのかも知れない。でもそいつは多分馬鹿だ。俺は15歳の日本人、日本語以外は読めない。16歳の俺なら分かったのかもしれないが。


本のことは置いておこう。全ページ謎言語で埋まっている。箱を調べてみよう。

箱は見た目的には宝箱だ。でも焼き物感がすごい。木とか使えば雰囲気でるのに、叩けばコツンと高い音がでる焼き物を使っている。コレジャナイ感すごい。鍵などはかかっておらず、そのままぱかと開きそうだ。

何か罠があったら嫌なので、後ろからそっと開けてみる。何も出てこない。恐る恐る中を覗いてみれば、なんだ、ただの服が出てきた。



「俺への、贈り物か……?」



やはり俺の目覚めは想定されていたようだ。服を広げてみれば、無地の黒い長袖シャツ、灰色の長袖パーカー、オレンジのラインがひかれた濃い灰色のカーゴパンツに、黒い踝ソックス、黒いブーツ。黒大好きかよ。それともセンスが無くてとりあえず黒選んだのかな。そっちの方が有り得そうだ、宝箱のセンス無いし。

着てみればピッタリで、ちょっと恐怖感じる。サイズが図られている……! 別に女子じゃないからバストのサイズ云々気にしないが、己の情報が知らぬ相手に握られているのが恐ろしい。何が目的だろう。

服の質は変わったところはない。アクリルだかエステルだか綿だか分からんが、肌触りが良く伸縮性もあるのでこの服は普通に良い服だ。何となく予感していた異世界説は途絶えた。ちょっと文字とか、記憶の欠落とかで期待したが、この技術を見るに世界は変わっていないだろう。きっとプロジェクトXだか自由研究だかに巻き込まれ、こんな状況になったのだ。



「はあ、参ったな」



本当に参った。記憶は無いが俺は成長したはずなので、学校の授業はきっと進んでいる。この不可思議状況じゃ仕方ないが、もとの学校に戻って授業についていけるだろうか。うん、まあいけるか。俺はアンドロイドに関しては天才的だし。自画自賛ではなく、客観的に。


では服も着たし、状況の把握もある程度進んだし、研究チームのリーダーに会いに行こう。そして止めてもらおう。心身共に悪影響が出ているのだから、花瓶に花をいけてくれる程度に人の心を持っているやつなら途中棄権も許可する筈だ。

じゃあ、もう部屋の探索はやめて、ドアから外に出よう。……ベッドで休んだ後でな。



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