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----------おき--て---だ-----------お--な----で----------
懐かしい声が聞こえる。柔らかな、甘い、女の声だ。俺に話しかけているのだろうか。微睡んでいてよく聞き取れないが、一体何を言っているのだろうか。必死そうなのは分かるのだけれど。
ああ、どうか泣かないで欲しい。君に泣かれるとどうすればいいか困るんだ。早く抱きしめて慰めなければ……。目を開けて、走って……。
「ん、ぐ……」
しかし俺の願いは叶いそうも無い。何故か身体が動かない。指一本さえ動かせなくて、まるで長いこと眠っていた様な身体の固さだ。金縛りか?いや、まさか。
どうすればいいのだろう。俺がグダグダしている間に声はすっかり消え失せてしまった。夢の中からの語りかけみたいなものだったのか? そんな、古典小説じゃあるまいし……。
「あ、あ〜!」
ふぅ、やっと一つ声をあげられた。くそ小さくて掠れた声だけど。なんだこれ、冬場でもこんなこと滅多にないぞ。俺は本当にどうなってしまったのだろうか。次は目を開けて現状把握をせねば。
「……」
震える瞼をこじ開け、光に慣れたところで見えたのは……知らない天井だ。真っ白の天井で、コンクリートや大理石を使ってもここまで綺麗な壁は作れないだろってレベルに綺麗で白い天井。そしてそこに描かれるよく分かんない文字列。何語だこれ。は? まじで古典小説の可能性が高まってきたんだが。転生? トリップ? どちらにせよ、この状態は明らかな異常事態だ。いや、だって有り得ないもの。文字列もそうだけど、あんな白いの……。病院だってもっとクリーム入ってるし、何より彼処は独特の、死臭が漂っていたし。怖いよなぁ、病院って。でもここにはそれが無い。有るのは無機質な空気だけだ。
さて、引き続き状況把握といこう。首を左右に回転だ。
ふむ。どうやらここは、豆腐の様なただの白い部屋であるらしい。そして機械類が数多見られることから科学の発展した場でもあるらしい。この装置たちは何なんだろう。チューブが垂れ下がっていたり、ボタンやパネルが沢山付いている。やだ、もしかして俺、知らぬ間に人体実験の被験者になってた?記憶が無いだけかもしれないけど、うちの学校の生物科連中ならしかねないからほんと怖いわ。
んで、他にあるものと言えば、右側には1脚の椅子。花が1輪いけてある花瓶がのっている。よかった、訪ねてくる人には少なからず人としての気持ちは忘れてなかったらしい。あと、左側にはドアがある。スライドさせるタイプかな?
ここまで見ると、病院の集中治療室とか、そんなものとも思える。しかし窓がない。まさか病院でこんな閉鎖的な訳ないし、研究室の様だ、と考えた方が近い気がする。そうなると天井の文字列は機械への命令か、計算式だろう。天井に書く意味は分からないが。
とりあえず起きよう。起きて、部屋を出て、そして、誰か人を探そう。話しかけてきた奴が俺に何を望んでいたのか知らないが、優しい声だったし、多分味方だろう。
「ぐ、あ、」
……身体動かすのつれぇなぁ。
どういう学校に日明は通っていたのか……。