#007「くだらない」
「朝は電子オルガンで、爽やかに始めるんや」
「嫌だね。俺は、あの決めポーズを見ないと落ち着かない」
「東京のアナウンサーのトークは、最後にオチがないから嫌や」
「感想に笑いを求めるな。局アナは、芸人じゃない」
「おはようございまぁす。また、チャンネル争いしてるんですな?」
「おはよう、芳郎くん。そうなんよ。蕨くんが頑なやから困っとって」
「頑固なのは、茶屋町のほうだろうが!」
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――ホンマに蕨くんは、他人の感情を逆撫でするばっかし。少しは、うちの意見を聞いてくれたってえぇのに。ブレザーの一件では、優しいトコもあるかもしれんと思うたんやけど、あれはキマグレやったんやろうか?
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「何で、まだ古いのが残ってるのに、サラを開けるんよ。信じられへん」
「これ以上は出ねぇよ」
「そんなことあらへん。ちょっと貸してみぃ。こうやって少し空気を含ませて、キャップを閉じて振れば、……ほれ!」
「そんなケチ臭い真似ができるか。あぁ、そうだ。いい加減、洗面所の歯ブラシを取り替えろよ。毛先が開いてるじゃねぇか」
「まだ大丈夫やって。もっと、限りある資源を大切に使わなアカン」
「モッタイナイ精神は大切だけど、歯の健康のためには新しくしたほうが良いわよ、茜ちゃん」
「ほら見ろ。藤沢だって、俺に同意してるじゃねぇか」
「そない鬼の首を取ったような顔せんでもえぇやん。小さい男やなぁ」
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――何で蕨くんは、うちに対して張り合うんやろう? 可愛げがないわぁ。これが世に言う反抗期って奴やろうか? いやいや。何を親みたいなことを考えてるんやろう、うち。
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「あの番組も、関西ローカルやったんやなぁ。――あっ、葉山さん。こないだの小説は、順調に進んではるん?」
「今のところは。ひと区切りついたので、休憩しようと思いまして。何か、酸欠気味の頭でも楽しめそうな、面白い番組はありますか?」
「さっきまでは新喜劇をやってたんやけど、今の時間は面白ないのばっかし」
「そうですか。お好きですね、新喜劇」
「土曜の昼の定番やから。大阪で生まれ育った人間やったら、誰でも即興でギャグを真似できるっちゅうくらい、遺伝子レベルで刻み込まれてる習性やねん」
「条件反射か、刷り込みか。ラジオ体操と同じですね。――お帰りなさい、蒼太さん」
「ただいま、葉山。例の件だが、おっと。茶屋町も居るのか」
「お帰り、蕨くん。何の話?」
「大したことではないんです。――僕の部屋で話しますか?」
「茶屋町には関係のない話だ。――そうしよう」
「うちは、蚊帳の外やねんなぁ」
「ごめんなさい、茜さん。すぐ済みますから」
「絶対に二階に来るなよ。ドアの前で聞き耳立ててたら、承知しねぇぞ。そうそう。これは前フリじゃねぇからな」
「わかった、わかった。密談でも密告でも、何ぞと好きにしぃな」
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――どんな事情があるんかは知らんけど、信用されてへんねんなぁ、うち。




