#029「本日は晴天なり」
――ヒトは野生生物として、とても脆弱な構造をしている。生得的な武器を持たない。唯一、武器となり得るとすれば、それは知恵だ。
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「高度成長の夢が詰まった科学館に、バブル経済の勢いを感じる記念館。全国各地で休館や閉館が相次いでるみたいよ」
「ハコモノは当初の建築費だけではなくて、以後の維持費も膨大ですからね」
「文化振興だとか、地域活性化とか、何某かの大義名分を付けては官庁の肝煎りでポコポコ作った癖に、税収が減ったら民間に丸投げしちゃうんだから、呆れちゃうわよねぇ」
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――知恵は、地球上に人類が繁栄する素になったが、発達しすぎた知恵は時として仇となり、自分たちの首を絞める結果にもなった。
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「今年のノーベル文学賞は、米国人ミュージシャンなのね」
「ひと昔前に、学生で賑わう喫茶店で流れてたという」
「あら。よく知ってるわね、葵くん」
「偶然ですよ。あの曲の作曲者が、最高齢でゲーム音楽を作曲したとして世界記録に認定されたということで、ちょっと前に話題になってましたから」
「どんな賞でも、受賞するためには長生きしておくものね。受賞前に無くなったら、資格を取り消されるのよね?」
「えぇ。故人まで含めてしまうと、ガリレオやニュートンやデカルトまで受賞できることになってしまいますから」
「普く功労を認められるまでには、時間が掛かるものね」
「科学や芸術の長さに比べて、人間の寿命は、あまりに短いものです」
「画家や音楽家や作家は、没後に評価されることが多いわよね」
「ゴッホしかり、ゴーギャンしかり、カフカしかり、ディキンソンしかり」
「東洲斎写楽しかり、樋口一葉しかり、宮沢賢治しかりね。やっぱり、夭逝すると損だわ」
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――より多くの他人に自己の才能を認められたいという欲求は、数多ある人間の欲求の中でも高位な欲求であるとされている。この欲が満たされないばかりに、反社会的な行動を、短絡かつ衝動で起こしてしまう人間もいる。
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「携帯端末ばかりに集中して、ろくに子供の面倒を看ない親がいるのね」
「電話、メール、インターネット。遠く離れた人間でも、瞬時に繋がることができるようになった反面、側にいる人間を大事にしなくなったようですね」
「画面から顔を上げて、子供の成長を見てあげないと。子供の教育を蔑ろにする親は、親ではあっても、保護者ではないわ」
「距離感が難しいところですね」
「ホッタラカシにしても、構いすぎても駄目になるんだものねぇ。後先考えず、愛情を注がれなかったとか、監視から逃れたかったとかで、生みの親、育ての親に刃物を向けるような子供になったら、目も当てられないわ」
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――完璧な人間は居ないのか、人間は完璧にはなれないのか、完璧な人間は人間ではないのか。かくも人間とは、不思議で面白い存在である。秋晴れの澄み切った空は、思索に耽るのにも絶好だ。




