#021「二階建ての広い家」
「さて。今日は、この家の大掃除をするわよ。隅々までピカピカにしましょうね」
「オー!」
「そうか。頑張ってくれ。イテテテテ」
「何、言ってるのよ。全員参加に決まってるじゃない」
「そうだぞ、蒼太」
「耳を引っ張るな。いってぇなぁ、この怪力! ギャッ」
「それ以上、蹴り飛ばされたくなかったら、さっさとバンダナとエプロンをしなさい。はい、マスクと手袋」
「今のうちにキレイにしておかないと、汚れたままで年を越すことになるもんなぁ」
「やれやれ。ハロウィンに、感謝祭に、クリスマス。大晦日に、正月に、節分。年末まで二ヵ月は米国人になって、大晦日から一ヶ月は日本人に戻るんだよなぁ」
「そうかと思ったら、バレンタイン・デーに、ホワイト・デーに、復活祭でしょう?」
「桜を見たり、蛍を見たり、紅葉を見たり、雪を見たりもするよな」
「夏には七夕もあるし、秋には月見もある」
「ローソクもらいや、お月見泥棒には、ハロウィンと重複するところがあるわね。――それは、ともかく。来客の波が途絶えてる今が、大掃除のチャンスなのよ」
「ただいま、皆さん」
「ただいま。洗剤とか束子とか買うてきたんやけど、これで足る?」
「スプレーが、いっぱいだな」
「これだけあれば、充分よ。それじゃあ、分担していくわね。葵くんと茜ちゃんは、二階のベランダと廊下をお願い。アタシたち三人は、一階のゲスト・ルームとエル・ディー・ケーを掃除するから」
「俺は二階が良い。茶屋町と換えてくれ」
「駄目ですよ。僕と二人だけだと、蒼太さんは手を抜きますから」
「オイラか茉莉が見張ってないと、すぐにサボるもんな、蒼太は」
「パフォーマンスを上げるためには、適度な休息が必要なんだ」
「そんなん言うけど自分、怠けたいだけやないの。蕨くんは一階に居り」
「決まりね。十二時前になったら、もう一度ここに集合しましょう。それじゃあ大掃除、開始!」
*
「埃は、どこから湧いてくるのか」
「地下鉄は、どこから入れたのか」
「くだらないこと言って作業の手を止めたら、コレとアレ混ぜて永眠させるわよ」
「シャレにならねぇな。素朴な疑問ひとつ言えねぇのかよ。ロベスピエール、クロムウェル、スターリン」
「ムッソリーニ、ヒトラー、東条英機」
「誰が恐怖政治よ。そういう知識だけは豊富なんだから」
「服の繊維、皮脂に毛髪。塵も積もれば何とやらってところか。――窓は、これで良いだろう」
「棚もキレイになったよ」
「ご苦労さま。もうすぐ十二時だから、休憩しましょう」
「あぁ。これで、やっと休める。二階の二人を呼んで来い、芋洗坂」
「了解!」




