#010「三人で」
「五人でオリジナル・ムックを作るとしたら、茜さんがイラストで、蒼太さんは表紙モデル。茉莉さんにはスタイリスト、芳郎さんにはキャッチ・コピーを頼みましょうか」
「実現しないことを祈る。それより、葉山」
「記念になると思いますけど。それぞれの個性も活かせますし」
「俺の話を聞け。こんなところに呼び出したのは、そんな無駄話をするためだったのか?」
「気が短いですね。話しにくいことの前に、ワン・クッション置かせてくださいよ」
「くどい。いい加減、本題に入ってくれ」
「わかりました。――先日、苑子さんが訪ねてきました。草加さんと縒りを戻すそうです」
「ほぉ。それで?」
「もう一度、親子三人で暮らしましょう、ということで」
「お断りだ。あの男とは、二度と一緒になりたくない。だいたい、本当に俺の父親かどうかも定かじゃねぇんだ」
「でも、蒼太さんが学校に通えるのも、草加さんが」
「俺がモデルになるまでは、の話だ。俺が外で稼ぐようになってからは、俺の金で遊ぶようになって、まともに働かなくなったんだぞ? おまけに、暴言を浴びせるわ暴力を振るうわで」
「怒りたくなる気持ちは理解できます」
「いや、葉山には分かんねぇよ」
「そんなことありません」
「いいや、そうなんだ。そういう話なら、いくら頼まれても、俺は首を縦に振らない。先に失礼する」
「待ってください、蒼太さん」
*
「それで、また閉じ篭っちゃったのね?」
「そうなんです。話の進めかたが拙かったようで」
「葵くんが落ち込むこと無いわよ。蒼太くんも、難しい年頃だもんねぇ」
「僕にも高校時代に引き篭もってた時期がありましたから、殻に閉じ篭っていたいという気持ちは、よく理解できます」
「お医者さんになるか、それとも法律家になるか、勝手な二択を迫られてた頃ね?」
「そうです。親が敷いたレールに暗澹とした将来しか見出せなくて、塞ぎこんでいました」
「それで、一冊の小説に救われたのよね?」
「えぇ。それまでライト・ノベルを読んだことが無かったのですが、水彩画のようなイラストの表紙に惹かれて、何気なしにカートに入れた本でした」
「その本は、まだ持ってるわよね? 蒼太くんに読ませたらどうかしら?」
「経緯が違いますから、同じような効果があるとは思えませんけど」
「良いのよ、全然。駄目で元々じゃない。試して無意味だと分かったら、体当たりしてでも部屋から引きずり出すわ」
「茉莉さん。もっと穏便な解決方法を」
「いやぁねぇ、冗談よ。いいから、その本を取って来なさいよ」
「それでは、取って来ます。あの、茉莉さん。くれぐれも、ドアを」
「壊さないわよ、安心なさい。早くしないと、茜ちゃんや芳郎くんが帰ってくるわよ?」
「そうですね。すぐに戻りますから、説得の続きをお願いします」
「任せて。落としのプロだから」




