ユーの決意
ジュリーがやられている。
俺はただ恐怖に負けて立ちすくんでいるだけ。
女の子が倒れていると言うのに只々突っ立って眺めているだけ。
何をやっているんだ俺は。
おい!動けよ!俺の足!!
俺は勇者で魔王を倒す為に召喚されたんだろ?たかだがこんな海賊のボスやチンピラ程度にびびっててどうするんだよ!!
「っあああ!」
俺は叫んでから自分の足を思いっきりぶん殴った。ズキズキと太腿が痛む。だが震えは消えた。
スラもその様子を見てその場から離れた。
「くくく、仲間がやられてムカついたか?正直俺の部下二人がこんな短時間にやられるとは思っても見なかったがまぁ関係ない。俺一人居れば元々十分だからな!」
「たわけが!」
そう言ってヴィルがボスに突っ込んで行こうとしたが俺は無意識に叫んでいた。
「ヴィル!!こいつは俺がやる!!!」
「はっはっはっは!命は大事にするもんだぜぇ兄ちゃん?そこの嬢ちゃんなら俺といい勝負がもしかしたら出来るかもしれないがただ立ちすくんでるお前に何が出来る?」
最後の方の言葉を言い終わる頃にボスは更に威圧感を放っていた。
俺はそれをまともに受ける。正直怖い。勝てる気も全然しない。だけどここで立ち向かわなきゃ俺はずっと戦えないだろう。
俺はもう一度自分に喝を入れた!
「はっ!んなのやって見なけりゃわからないだろ?ヴィル、悪いけどここは俺にやらせてくれ」
「仕方ない。その代わり負けるで無いぞ?」
「あぁ。絶対に負けない!」
「丸腰のガキが、てめえを四肢を切り裂いて芋虫にしてやるよその前でお前の連れといいことしてやるから楽しみにしとけ」
そう言うと今まで使っていなかったサーベルを抜き構えた。
俺とボスの戦闘が始まる。
「「うおおぉぉぉー!!」」
勝負は一瞬。ボスと俺のLv差はかなり開いている。ジュリーを武器も使わずに倒してた事からそれはわかっている。
長時間の戦いになれば不利なのは明白だ。
この一撃に全てを込める!!
ボスはサーベルで俺を突き刺そうと突進して来る。
予想していたよりずっと速い!躱すのは無理だ!!
俺は致命傷だけを免れるようにし、渾身の一撃を込めたカウンターを喰らわすべく迎え撃つ!
そしてお互いの距離が縮まった。
ズガアァァァン!!
バキィィ!
「へ?」
バキィィ!は俺が殴った音だろう。それに出血と共に痛みが来るのを覚悟していたが、一向にやって来ない。 何だ?何が起きた?
今の一撃でボスは気絶している。
俺は状況が全く理解出来ていない。
きょろきょろと辺りを見回すと「てへぺろ」とやっているリュックがいた。
おいてめぇ。俺がせっかく格好良く決めてたのに何やってんだよ……