黄金龍襲来
ヴィルターナと出会ってから三ヶ月が経過。
その間、俺の世界の話などをしたりしてヴィルターナとはかなり仲良くなった。
料理の話にもなり、ヴィルターナは早く俺の作った料理が食べたいらしい。
「ユー、これから修行するぞ!」
「了解、今日も頼む!」
会話の中に敬語は無くなったし、ヴィルと呼べとも言われた。
セーフティーゾーンを展開し、ヴィルがLvをユーに合わせて下げる。
その後はいつも通りの修行が始まった。俺は以前に比べて戦う事に慣れてきた事もあり、召喚者補正がかかっているのもあるのか体が元の世界よりも軽く感じ、たまにだがヴィルに一撃を当てられる事がある。
一撃を当てた後のヴィルは顔を真っ赤にして悔しがり、大体魔法を使って来る。
初めて魔法を使われた時は四方八方を火の壁に囲まれ、徐々に徐々に自分に迫ってくるのは圧倒的恐怖以外何者でも無かったな。しかもその後きっちりと全身火だるまにもされたしあれは今だにトラウマだ。
炎の壁が俺を包み火だるまにされた時はセーフティーゾーンの効果で大丈夫だったんだが、火は動物が本能的に怖がるものだし、俺は熱いものだと思い込んでいた。
俺は炎の壁が自分に触れた一瞬で恐ろしすぎて恐慌状態に陥った。ヴィルがふふんと鼻を鳴らしてドヤァとしていたようだが、俺の状態を見て慌てて水の魔法を使って火を消してくれなかったらどうなっていたか分からない。
俺はそこから半日の間ヴィルの顔を見れなかった。
ヴィルはしきりに謝ったり話しかけて来たがジトッと睨み、ぷいと顔と体を背けて拗ねてますアピールをするとヴィルはしゅんとし、ささやかな仕返しをした。
まぁそんな事もあったが今は普通に修行している。
今日もヴィルに一撃を当ててヴィルが魔法を使ってきた。
今日は風の魔法らしい。
らしいと言うのは風魔法は全く見えない。空気だから当然だがな。
ヴィル曰く空気を感じ取れれば怖くないとのこと。
だが俺はそんな事が出来ない為、とにかくそこから離れ当たらないようにするしか方法は今の所ない。
しかしヴィルはそう来るのを予測していて背後に回り、連打を受けボロ雑巾のようになって本日の修行は終わる。
そこから今日の悪い所、良かった所をヴィルに指摘されてから腹痛が治まるのを待ってから違う修行に突入と言う流れだ。
俺はあれから1月観察の修行を毎日行って来た。ヴィルのステータスを全部見る事が出来るようになっていた。最も、ヴィルがレジストを一切行わないからだけど。
冥龍王ヴィルターナ
種族 プラチナドラゴン Lv8632
称号 全てを超えし者 照れ屋な乙女
力4852
守6800
早9713
賢9999
めっちゃ強えー。何これ?ちなみに俺は。
ユー
種族 ヒューマン Lv9
称号 誤召喚 不幸人
スキル モンスターテイムLv1 限界突破 全翻訳 アイテムBox 格闘技Lv46 観察Lv50
力40
守69
素41
賢121
桁が全部違う。Lvが低いのはヴィルターナが俺に合わせてくれてるからだ。
Lvが高いスキルは使えば使う分だけ伸びる。それにヴィルがLvを合わせてくれてるとはいえやっぱ最強を相手にしているからすぐに上がる。
賢さが高いのは考えて戦わないとタコ殴りにされるから必然的に考えるようになる。
そしてある日のこと。
「よし、そろそろ私の住処から出よう。ユーのLvを上げるぞ」
「とうとうこの高い所から出れるのか…でも下に降りてLv上げ?」
「いや、私の住む大陸だとユーが勝てるモンスターはいない。少なくとも全員Lvは百以上あるからな。だから少し離れた大陸に行ってユーの実践を行う。ちなみにここには魔王も私が居なかったとしても滅多に近寄らん。そう言う強さを皆持っている。ちなみに魔王の配下は結構ここの魔物が多いな」
そんな強い魔物達がヴィルが活動してると萎縮して姿を現さないとか…ヴィルってほんとチートの中のチートだな。
「これから私は一旦ドラゴンに戻る。少し離れていた方が身のためだぞ?」
「あっ、はい。分かりました。」
俺は言われた通り素直にはじっこの方に行き体育座りした。
ヴィルの体から淡い光が発せられ、どんどん大きくなっていった。ドラゴンに戻り俺の事を摘み背中に放り投げた。
「鱗に捕まっていろ。振り落とされるなよ?」
そう言うと飛び上がり恐ろしい速度で飛び始めた。
ジェット機と同じぐらいかもっと早い。
うおー!こえーっ!!ってかくそはえー!!風魔法で俺の事を包んでくれなかったら息は出来ないしすぐに振り落とされていただろうことは間違いない。 それどころかGに耐え切れずに死んでるんじゃないか?
三十分程移動すると空中で突然人の姿に戻るべく光り出して、俺は落ちると思い必死に背中にしがみついた。
「こっ、こら!離せ!人型にちゃんと戻ったらまたすぐに拾うから離せ!!」
ヴィルが光に包まれている状態でそう言って来た。
「嫌だ!ここから落ちたら死ぬ!絶対死ぬ!!パラシュートも持たないでスカイダイビングするなんて唯の自殺志願者じゃないか!!絶対に離さないぞ!!」
そんな事を言っているうちにヴィルは変身が終わる。
俺がヴィルにしがみついた状態で変身が終わった結果……
ヴィルの服の中に俺がいる状態が出来上がり、俺はヴィルの女性特有のふくよかな部分に手を置いていたのだ。
俺も男だ。そんな良いものがあったら手を動かすしわさわさと指を動かすに決まっている。
ヴィルの悲鳴と共に地面に降り立った。
着陸すると同時にヴィルが俺を投げ飛ばし、今にも殺さんとばかりに睨まれた。ヴィルの背景にはゴゴゴゴゴと言う音と共にドラゴンがブチ切れているのが見えた。 俺は覚悟を決めて逃げようとするが、逃げられる訳もなくボコボコにされた。
そしてボコボコにされたそのあとに、死んでも死なないと言う矛盾してる魔法をかけられてそこから更にぐっちゃぐちゃにされた。後半はもう何が何だか覚えていない。俺の記憶が恐ろしい目に遭いすぎて消去したようだ。
「はぁー……はぁー……ききき!貴様が離せと言うのに離さないのがいけないのだぞ!!」
見るも無残な姿の俺に対してヴィルが怒鳴るが俺はもうグッチャグチャだから聞こえない。
ちなみに俺はTV放送なら言うまでもなく確実にモザイクがかかってる状態だ。
それから半日程した後
「さて、それでは気を取り直して修行を始めよう。」
ようやくヴィルの機嫌が普通に戻り、修行へと移った。
ちなみに俺は放送禁止の姿にされた後二時間程ぐちゃぐちゃのまま放置されてヴィルに反省したか?と言われ、かろうじて頷き治療して頂いた。
「今回の修行は?」
気を取り直してヴィルに訪ねる。
「Lvは同じ位に下げてるとは言え格闘技だけなら私と良い勝負だからな。ここの魔物と戦う。そして生き残れ。それが今日の修行だ」
「とうとう実践か!ちょっとワクワクしてるよ!」
「私は後ろから見ているからな。Lvは落としとか無いと魔物は逃げて行ってしまうな。」
そう言ってヴィルは自分のLvを俺と同じまで下げた。
修行を開始してから数時間。少し休憩を取った。
パチパチと焚き火の音と共に、ジュウウと肉が焼ける音がする。
修行で仕留めた魔物をそのまま解体してご飯にしているのだ。
調味料は無いため、肉は素材の味だが中々塩っ気があって美味しい。
「ユーは人間なのに中々筋が良いな。修行のしがいがある!」
ヴィルは戦ってる時に、どこが悪い、どこが良かったを指摘してくれ、俺はそれを治していく度にヴィルがうんうんと頷き、良いぞ!とエールをくれた。
「本来は魔王を倒す為に召喚された勇者らしいんだよね。だからもしかしたら自惚れって言われたらそれまでだけど、普通の人よりかは動けるし考えられるのかもしれない。元の世界よりも体が軽く感じるしね」
「以前に召喚されたと言っていたな。しかし勇者か……以前は私に挑んでくる勇者がいたりもしたな」
昔をしみじみと語った。
「その挑んで来た勇者達はどうしたんだ?」
「ん?もちろん死なない程度に相手をしたぞ。退屈凌ぎにはなるしな。」
「勇者すらそんな感じなんだな。ヴィルは」
はははと笑いを浮かべるとヴィルが突然真面目な顔になり「伏せろっ!!」と大声を出した。
直後、ドゴオォォォン!!上空から突然隕石が落ちて来た。
「何が起きた?!」
俺は空を見上げると黄金に輝くドラゴンがいた。
「ちっ、まためんどくさいやつだ。」
瞬間、自分Lvを元に戻す。威圧も何もかもを元に戻した。
「ヴィルターナ。近くにいる奴はなんだ?」
黄金の龍は俺の方を見て言っている。
俺はこの時に黄金の龍を観察した。
黄金龍ゴール
種族 ゴールドドラゴン Lv8521
称号 超越者 かなりやば目のストーカー
ストーカーかよ!!でもつよいな!流石ヴィルターナにストーキングしてるだけあるな……それにしてもやば目のストーカーって酷いな。
というかドラゴンて全員こんなにでかいのだろうか?全長25m位あるな。
「誰だって良いだろう。お前には関係のない事だ。私はお前の顔など見たくはない。早く去れ。そもそもいきなり攻撃なぞしてきてどういうつもりなのだ?」
「ぐっ…俺は!俺はお前を愛していて!そんなお前が男と一緒なんて…」
「私は愛してなどいない。むしろウザい。邪魔だ。消えろ。私の前に姿を現わすな。吐き気がする。大体何回断れば気が済むのだ?言葉も理解出来ないほど馬鹿なのか?あぁ、いやすまない。この言葉すら理解出来ないほど馬鹿だったな」
うわぁ…凄いはっきり言うなぁ…
「ぐぐぐ…… だが私以外にヴィルターナの番いになれるものなどこの世の中にはいないぞ!!」
「それならここにいる。私の隣に居るではないか。嘘だと思うならステータスを覗いてみろ。」
ギロっと俺を睨む黄金の龍。
プレッシャーが半端じゃない。と言うか今の隕石のせいで森が火事になっているんですが……
「ヴィルターナさん?」
「なんだ?今私はすこぶる機嫌が悪いんだ。変な事言うなよ?」
久々のヴィルのこのプレッシャー……怖過ぎてたじたじになる。
「周りが火事になっているんですけど……」
なんとかこの言葉を絞りだせた。
「あ?あぁ、すまん。失念していた。人は炎は熱いんだったな」
ヴィルターナはめんどくさそうに水魔法を無詠唱で展開し火事を一瞬で鎮火した。
森に洪水でも起きたの?と言いたいような惨状になっているがもう何も言うまい。
「な、なに!限界突破だと!!ヒューマン如きがこんなレアスキルを!」
忘れていた頃に黄金龍が驚きの表情を見せていた。
「なんだ、まだ居たのか気持ち悪い。だがこれで分かっただろ?だからさっさと立ち去れ。二度と私にその面を見せるな」
「だが……だがしかし、今ここでこいつをや「その先は言うなよ?こいつを育てるのは私の最近の楽しみなんだ。邪魔するなら容赦はしない」
うなだれる黄金龍。それでも諦めていないようで何か小言でを詠唱を始めた。
所々しか聞き取れないが、…を捧げ…我…じに…と聞こえた。全てが終わった後
「あっ」
ヴィルが間の抜けた声を出した。
俺は何が何なのかさっぱり理解出来なかったが直後に何が起きたか理解した。
詠唱が終わるとヴィルターナから発せられるプレッシャーが嘘の様に無くなっていた。
「はぁ、はぁ、私の物にならないならせめて……」
「心底めんどくさい事をしてくれる。本当にお前は阿呆か?いや阿呆だったな。しかしお互いのLvを封印してどうするつもりだ?しかもこの封印は自力である程度のLvに達さないと解けないだろう」
「俺の物にならないならせめてお互いをLvを1に下げて距離は遠くても共にLvが上がっていると思えば俺の心も少しは晴れる」
黄金龍はLvが下がった影響で全長2m位に縮んでいた。
最後の言葉に俺はドン引きだ。てかこいつ、今なら俺でも勝てるんじゃないか?
「どうしようもなく気持ち悪い奴だな。金輪際二度と私の前に顔は出すなよ?出したら流石に切れるかもしれんからな」
黄金龍はそのまま無言でバサバサと立ち去った。
「はぁ…これからめんどくさいな」
「ヴィルはこれからどうするんだ?」
「私か?私は弱体化してしまったからな。封印を解くにも魔力が全く足りないしな。とりあえずここの魔物は全部狩ってLvをあげる」
「はぁ…なんだか凄く余裕なんだな」
「慌てた所でどうこうなる物では無いし、弱い状態から強くなるのも久しく無かった事だからな。魔物共もこの私でも襲って来るのだろう?楽しみでならん!」
ふふふと笑っているがその顔怖い。
「あっ…」
ヴィルからの間の抜けた声
「どうしたの?」
「ドラゴンフォームになれない…」
「それはマズイのか?」
「色々とマズイ。まず空が飛べないから移動手段が極端に縮まる。そして第二に食料が全くない。修行が終わったら飛んで帰る予定だったからな。」
「じゃあこれからは?」
「この魔物のように倒してそれを食料にしながら町に向かうしか無いな。まぁどちらにせよ魔物は全部狩る予定だったから変わらないか。なんにせよ進むぞ。」
俺たちは急展開になったが、とにかくまずは進むことにした。