説明
説明しかしません。もちろん、物語の中でです
「うん?」
勇人はふと立ち止まった。
確か自分は陰陽師坂にいたことを思い出す。
だが、ここは荒野だった。
大地は干からびており、所々地面にひびがあった。それに、そこからど根性草が生えておるが、それだけだった。
植物はど根性草しかない。ましてや、水などは全くない。
砂漠にはオアシスというものが定番だが、ここは砂漠よりはあつくないが、水がない。なので、水筒を持っていくのが懸命。
しかし、突然ここに来た勇人は、当然水稲は持っていない。だが、さっきまではなかったが、今はあるものがあった。
「なんだろう?」
荒野を見渡して状況を把握した勇人は、自分をみた。
勇人の服装は、さっきの中学の制服ではなかった。
かわりに、黒い服とズボン。それに、真っ黒なスニーカーだった。
そして、一番勇人が不思議に思ったのは、腰におさめられてあったものだ。
それは剣。鞘と柄が漆黒の闇に包まれたような黒色だった。
「おい、古谷勇人」
突然。何所からともなく、さっきのチップの声がした。
「え?チップさん?」
「さん?チップでいい」
自分で様をつけるが、他人から様やさんと言われると虫唾が走る。だから、呼び捨てでいいというチップ。
「じゃあ、チップ。何所にいるの?結構近くから聞こえるけど」
そう、勇人の耳には遠くからではなく、近くからチップの声が聞こえていた。
「ここだ」
「どこ?」
「ここだと言っているだろ」
やっと、勇人はある場所を見た。
「ここか」
そこは、鞘におさめられている一メートルほどの剣だった。
「ああ、俺の能力は剣になれることだ。私はダラマンガラス様の使者だ。そして、使者は武器になれるんだ」
やっと気付かれたチップは、待ってましたというように話した。
「へえー、すごい。でもよかった」
そう言って、なぜか安心する勇人。
「何がだ?」
「いや、僕剣道やってるんだけど」
「剣道?」
剣道を知らない様子のチップ。
「そっか・・・」
勇人は、自分とチップの世界が違う。だから、その世界にあって、その世界にないものがある。その一つが、剣どうなのだろうと。
「何なんだ?剣とついているが」
「まあ、剣道は、まあ剣みたいなものを使って、相手に限定された個所をあてる。まあ、簡単に言うとね」
「そうか。では、お前は剣が得意なんだな」
「まあ、そうかな。全国一位になったことがあるから」
すこし、誇らしげに勇人は言った。
「全国一位?それはすごいのか?俺様たちの世界は、他の世界にある国というものがない。だから、いまいちわからない」
表情は分からないが、すこし不安そうにいうチップ。だが、自分のことは俺様というようだ。
「うん。たぶん。そういえば、チップとかダラマンガラスの世界って何所?」
さっきチップが言っていた、俺様たちの世界というのが、勇人には気になったのだ。
「俺様達の世界は、神の世界と言われている。といっても、神はもうしんで、幻獣や魔女魔法使いなどしか存在しない。そして、なぜか幻獣たちは世界をこえられないのだ。神が制限したんだろうな。幻獣が他の世界に行けば、世界がめちゃくちゃになる可能性があるからな。だから、幻獣たちは他の世界に生まれ変わって世界をこえる。生まれ変わりなら、力があまり受け継がれていない」
長々と説明するチップ。
「じゃあ、その生まれ変わりが僕で、力が弱くなっているから、世界を旅できるんだ」
だいたい状況は把握していた勇人だったが、ダラマンガラスや幻獣などの世界の事は知らなかった。だから、チップに説明してもらって納得した。
「そう、その生まれ変わりを、皆はこういう。申し子と」
「申し子。じゃあ、僕はダラマンガラスの申し子だ」
大好きだったダラマンガラスの生まれ変わりと知って、あらためて大喜びする勇人。
これで分かるように、勇人にはファンタジーはすべてなのだ。
「ねえ、じゃあ使命って」
「それは、神が許したことだ。幻獣たちが生まれ変わっても、幻獣と申し子は別。幻獣は申し子にとりつけるが、操れない。それをみじめに思った神は、使命を与えることを許した。ただ一つだけ。そして、心やさしきダラマンガラス様は、申し子にすべての世界をまもる使命を与えたんだ。まあ、これぐらいは許してくれるだろうな、神は」
「なんで?」
「なぜなら、生まれ変わったら当然戻れない。ということは、申し子をただ見守るだけ。それじゃあ、生まれ変わった意味がないだろ。だけど、使命を与えられる事が出来ると、生まれ変わる幻獣は増えた。神としては、危険な幻獣が消えてくれるのでうれしい。幻獣たちは、他の世界を申し子を使って旅できるってことだ。ちょっと、難しかったか」
難しい人のために整理しよう。
幻獣は、申し子に生まれ変われる。
だが、申し子には取り付けるが操れない。
そして、一つだけ使命を与えられる。
おおざっぱに言うと、こういうことだ。
「うん。なんとなく」
「そうか。それで、使者は使命が今という時に、この事を説明し、力を貸すために申し子の前に現れる」
「じゃあ、今がその時なんだね」
「ああ。さっきもいったが、世界が壊れかけている。それを守るのがお前の使命だ」
「でも、もし申し子が使命をやらなかったら?」
「それはない。なぜなら、使命を死ぬまではなさなかったり、使命を放棄すると、死ぬ。まあ、申し子も世界を旅できるんだ。お前だったら、嬉しいんだろ」
「うん。じゃあ、この世界を守ろう」
「ああ」
こうして、説明を終えたチップと勇人は、荒野を歩きだした。
分かったくれたら幸いです」