喋る猫にあう
おもしろければ、幸いです。
風が気持ちい。
そんな事を思いながら、中学二年生の古谷勇人は、自転車をこいでいた。
勇人の家は、中学から少し離れており、自転車通学が認められている。だから、自転車で登校しているのだ。
勇人は、六ギアまである自転車のギアを、重いが一番早い六ギアにして、坂道を登って行った。
足腰や運動神経に自分でも自信がある勇人。
なので、なんらく坂道を登って行った。
この坂道は、陰陽師坂と呼ばれる坂だ。
何でも、昔式神と陰陽師が、そうだいなる闘いをくりひろげたことから、名前が来ているらしい。
勇人にとってはどうでもいい。
という訳でもなかった。
勇人はファンタジーが大好きで、自分ではファンタジーオタクと思っている。
だから、ファンタジーとは少し違うかもしれないが、陰陽師などはわりと好きだった。
だけど、この事を知っている人間は、勇人の親しかいない。
勇人は心の中では正義感が強くて、はしゃぎたい少年だ。
だけど、なぜかそれがはずかしくて、柔道空手剣道などのスポーツをやっていて運動神経がよいこと。あと、ファンタジー好きということは、仲良い友達でも話していない。
そんな勇人がいつもどうり自転車をこいでいると、右横にある集団がいた。
それは、古いヤンキーぽい不良が、ガニ股で座ってたまっていたのだ。
「無視無視」
そう、勇人が不良をみながらこいでいると、突然何かと当たった。
「いって」
「うわあ」
二人の声が聞こえた。
一人は、なにかにぶつかって自転車から転倒した勇人。
もう一人は・・・
「いって、てめえ」
もう一人は、さっきの不良の仲間と思われる学ランをきたヤンキーだった。
「ええ」
何が何だか分からない。
「てめえ、なんだ?」
「誰だこいつ」
「中学か?」
そんな事をいいながら、さっきの不良軍団が転倒して尻餅をついた勇人を囲む。
「おい、やっちまえ」
さっきのぶつかったヤンキーがリーダーなのか、そのヤンキーがいうと、他のヤンキー達が勇人に襲いかかってきた。
「うう」
一人が、勇人の腹をけり、地べたに倒れる勇人。
「おりゃあ」
そして、次々と勇人をける。
こういう場合、逃げ出すか助けを求めるかもしれないが、勇人はしなかった。
その理由は、助けを求めてもだれも助けてくれないと分かっているからだ。
勇人は正義感がすごい強い、今時めずらしい少年だ。
だが、内気で目立ちたくなく、いざとなると力がでない勇人は、助けたくても助けないという気持ちが、よく分かっているのだ。
だから、そんな弱い人間を見るのが嫌で、助けを求めないのだ。
自分じゃないだれかが、今の自分の立場でそこに自分がいたとしたら、それは助けたい。だが、見て見ぬふりをしてしまう。
今の時代。それが普通なのかもしれない。
だけど、勇人はこんな世界と自分が大っきらいだった。
助けられる力を持っているのに、助けない。
それが、勇人は大っきらいだった。
「ぐうう」
何回も何回も蹴られたり殴られたりする勇人。
「ああ、もういいか。行くぞ」
そう、リーダー的なヤンキーが言うと、他のヤンキーは攻撃をやめ、退散した。
「まって・・・」
死にそうな声で、右手をリーダーのヤンキーに向ける。
「あん」
「なんで、あなたはこんなことするの?」
「あん。うるせえんだよ」
いかったヤンキーは、もう一発思いっきり蹴りをいれ、去って行った。
「くう。いって」
地べたにたおれながら、切ってしまった唇をおさえる。
「おい、お前」
そんな時に、勇人の耳に低い男性の声が聞こえた。
「誰...?」
力を振り絞って、その声がする方をみる。
そして、そこには・・・
「よ、古谷勇人だな」
そう言ったのは、真っ黒な黒猫だった。
「ね、猫?」
痛みなど忘れて、大声を上げる勇人だった
面白かったら、嬉しいです