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命題と恋愛  作者: 高居望
好きなのは?
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慣れないことは続かない、でも

 今日は特におとぎとの予定はない。命題の日でもないし、遊びに行く約束もしていない。つまりは僕の日常だ。・・・。つまらなさそうで悪かったな! 高校生男子の日常が面白いほうがどうかしてるぜ! なんて理にかなっていない失言をはいてみる。

 土曜日で学校も休みの今日、時刻は午前五時(朝型なのだ)、僕はランニングに出かけようとしている。普段はランニングなどしない僕だが、機能の親の一言でランニングを決心させられた。あの、恐ろしい一言が現状の引き金となったのだ。

 昨日のこと、僕が居間に飲み物を飲みにきたところ、テレビを見ていた母親が僕を見てこう言った。

「あれ、何かあんた前より丸くなった?」

 これは帰宅部の高校生男子に言ってはならない言葉だ。禁句だろうが! しかしそういわれて僕は不安に駆られた。ちなみに僕は今まで太ったことがないし、現在も太っていないので、この種の変化にはそれほど敏感ではない。

 体格の変化、それが勘違いであることを確かめるために、風呂上りに体重計に乗ってみた。

「まさかな、そんなことあるはずがない。テレビのモデルたちを見た直後に僕を見たからそう思っただけだろう、まったくはた迷惑な」

 しかし・・・測定結果は僕の不安を確かなものにした。なんと、前に計ったときより三キロ増えていたのだ。

 三キロなんて些細なことを、と思うかもしれない。僕も他人の話だったらそう言うだろう。しかし、僕は最近特に生活習慣を変えたわけではないのだ。特に不摂生な生活をしていたわけではない。つまり、このままだと少しずつでも確実に、体重は上昇の一途をたどることとなるのだ!

 ここまで現実を見せつけられて、黙って引き下がる僕ではない。体重が増ええたなら、元に戻せばいい。太るのがいやなら、運動すればいい。

 と言うわけでランニング。運動部には所属していないけど運動音痴ってわけではないので、途中でへばることはないだろう。いざ行かん!


 十五分後、僕は今公園のベンチに座っている。幻と初めてあった公園。

 僕はここで感慨に浸っているわけではない。へばってしまったのだ! 今思えば、出かける前のあの言葉がフラグだったんだな。だとしたら、僕はやるべきことをやったというわけだ。

 ・・・。これ以上行っても悲しいだけなので黙って休もう。

 僕がベンチに座って何となく公園の散歩コースを眺めていると、そこに知っている人が見えた。

 身長は165ほど、普段から運動をしているのが見てわかる、きれいな体形だが、同時に魅力的なプロポーションも持ち合わせている。髪は茶色で肩に届くぐらいの長さだが、今は動きやすいように後ろでひとつに結んでいる。彼女は僕に気づいていないようで、そのまま走っていこうとしている。僕は、止める必要はなかったかもしれないが、声をかけてみる。

まつりさん」

 僕の呼びかけに気づいた彼女は、そのままこちらのほうへ走ってくる。僕の正面まで走ってきて、さわやかな笑顔をみせる。

「おっはよ~、はるっち! 朝からランニングかい? 今まで走ってるの見かけたことないけど、いつも走ってるの?」

「いいえ、今日からです。でもそれも今日で終わりそうですが」

「男のがそんなに弱気じゃダメだぞ!!」

 祭さんは人差し指をたててウィンクした。こういう一挙一動がさわやかなんだよなぁこの人は。

 彼女は見た目はさわやかなまま、でも少し緊張した面持ちで僕のほうを向いた。

「ねえ、じゃあさ、もしよかったらなんだけど」

 彼女は少しもじもじしている。何だろう、彼女らしくないな。

「はるっちさえよかったら、その、これから一緒に走らない?」

「これから一緒に走る?」

「うん、あ、嫌ならいいんだけど・・・」

「いえ、僕もそろそろ走れますし、ゆっくりでお願いしますね」

「うんっ! あ、いや、そうじゃなくて。今日も走るけど、これからもってことで・・・」

 そういうことか。正直、願ってもないことだ。一人より誰かとやったほうが長続きするだろうし。向こうから誘ってくれるなら断る理由はないかな。

「では、これからもよろしくお願いします」

「本当っ! よかった~。断られたらちょっとショックだったよ~」

 ほっと胸をなでおろして、再び笑顔になる祭さん。

「じゃあ、今日から毎日、朝五時にここ集合だよっ! それでいいよね?」

「え、毎日ですか?」

 意外に多いな、彼女はきっと毎日走っているのだろう。でも僕は週に二三回で十分なんだけどな・・・

「そうだよっ! こういうのは毎日やらないとダメだし! あ、でも、もしかしてだけど、わたしと毎日会うのは嫌?」

 少しうるうるした目で上目遣いにそう聞いてくる。う~ん、これを断ったら、さすがに人間失格だろう。

「あまり速く走れませんけど、それでもよかったらご一緒させてください」

「うんっ! ありがと! 大事なのはスピードじゃなくて継続だし、でも毎日走ってればスタミナもスピードもつくよ。だからそんな心配必要ないさ!」

 いいことを言ってくれるな。そういわれると、やる気もでてくる。

「よしっ、休憩終了。そろそろ走ろっか!」

「はい!」

 こうして、僕は祭さんと毎日ランニングをすることになった。ん? これも何かのフラグ?

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