家族再会
「こんにちは~」
本日、十二月二十日。後三日で学校も終業式を向かえるこの頃。
そういえば、学校での出来事についてまったく語っていないなぁ・・・といまさらながら思う。
学校、スクール、ハイスクール。呼び名は何でもいいが、とにかくそこでの日々について、あまりにも語っていない。それこそ、僕の日常にそれが含まれていないと思われても仕方がないくらいに。
誰にも日常があるように、この僕にも日常がある。ないとは言わせない、ある!
日常。朝起きて、学校へ行って(途中で幻と合流)、授業を受けて、下校して(ここも幻と)、帰宅して、勉強して、読書して、命題について考え、寝る。そしてまたはじめからのサイクル。
ところで、今の『日常』の中に『食事』が含まれていないからといって、当然だけど、僕は食事をしていないわけではない。そんなわけはない。当然食べる。皆が食べるように、僕だって食べる、『人間』なのだから。
ほかにも、風呂に入っているとは言ってないけど、風呂にも入っているし、究極的に言えば、息をしているとは言ってないけど、息だってしている。
おいおい、そんな『当たり前』のこと、そんな『当然』のこといちいち言うなよ! そう思うかもしれない。だが、それでいい。僕の発言の狙いは、そう思ってもらうことなのだから。
まぁ、そう思ってもらうのはあくまで取っ掛かりだけど。
取っ掛かりの次、それは思い出してもらうこと。知ってもらうなんてあつかましいことは言えない、ただすでに皆が知っていることを、僕にも適応してもらうこと。
それは何かって?
それは、『僕の語ったこと』と『僕の日常』は、合同ではない、イコールではないということ。それらは決して統合関係なんかじゃないってこと。
『僕の日常』をすべて、『僕が語ったこと』から知ることは不可能。『僕の語ったこと』だけが『僕の日常』とすることも不可能。それが思い出してもらいたいことだ。
そう、僕は『学校へ行く』ことを語っていないけれど、だからといって『学校へ行く』ということがない、学校に行っていないわけじゃあない。
まぁ、『学校へ行く』といっていないからといって、学校に行っているということになるわけじゃないけれど。とにかく、(語っていない=やっていない)の等式は成り立たないということ。そういうことだ!!
・・・・・・。たかが僕が学校へ行っていることを知ってもらうために、どれだけしゃべっているんだろう。こういうのを口下手というのか。
いや、一応話せて入るのだから、口下手じゃなくて話下手か。
話下手・・・それって最悪のスキルじゃないか・・・・・・。
主人公が話下手、これだけ聞くと、ちょっとシュールで面白そうだけど、『話下手な彼と対人下手の彼女の命題コメディ』なんてあったら目を留めてしまうかもだけど、絶対に序盤からイライラするよな・・・。
僕は今までみんなにこんな不快を与えていたのか・・・、みんな、そーりー。
うん、僕なりに誠意を見せて謝ったことだし、そろそろ思考終了。
僕が学校に行っていることもわかってもらえただろうし、僕が話下手なことは目を瞑ってもらうとして、そろそろ本題に戻ろう。話下手ながらも、ちぐはぐながらも。
「おう、おひさじゃん!」
冒頭の僕の挨拶、そこから話はそれにそれてしまったけど、軌道は修正されたよ! 今のはそれへの返事だね!
「お久しぶりです、光さん」
僕は今、間淵家の玄関にいる。玄関が開いていたので挨拶をしてみたところ、光さんが出てきてくれたわけだ。
開けっ放し。といっても、間淵家には門があって、そこからも歩くといえるほどの距離を歩くこの家に、たとえ家へのドアが開いていたからといって侵入するような、そんな肝の太いこそ泥はいないだろうから、決して無用心になるわけではない。
僕が今日この時間に来ることは伝えていたので、勝手に入ってね~という歓迎のしるしだったんだろう。その気遣いも、僕の小心スキルによって台無しにされたわけだが。
そんな僕に対して、間淵家の歓迎スタイルに応えられなかった僕に対して、光さんは笑顔で話しかけてきた。
「まぁあがりなよ。時間を守れるあたしや春くんと違って、うちの連中はまだ準備が済んでいないようだし。まったく時間も守れない人間が、何を守れるんだか・・・」
意味深なことを言いながら中に入るように促してくる。・・・なんだか今の光さん発信フレーズについても考えてみたいけど、ここは自重しておこう。話下手だしね! ・・・。
「じゃあ・・・おじゃましま~す」
もはや親しみ深い家となった間淵家に入る。
「とりあえず居間いこうか。白も準備は終わってたし、お茶でも入れてくれるだろ」
自分で入れるつもりはないのか・・・。まぁ、光さんはお世辞にも家事が似合うなんていえないけど・・・。そういう人がやるとギャップ萌えがうまれるんだけどなぁ・・・。
なんてことはこれぽっちも思ってないよ。ないともさ!
「さて、居間には今、何人いまそかり~っと。お~、春くんはもう来たぞ」
居間に入って、僕の来訪を知らせた。ちなみにそこにいたのは白さん、お母さん、お父さん。
「こ、こんにちゃは・・・、こんにちは」
「あら~もう時間だったかしら。ごめんなさいね、幻と祭がまだおわってないみたいなのよ」
「まったく、時間も守れない人間は何一つ守れないというのに・・・。すまないね春君。二人の準備が終わるまで、少し待っててくれるかな?」
「あ、はい」
今のお父さんの言葉・・・、なるほど、さっきの光さん名言の元ネタはお父さんだったのか。
光さんも、僕が気づいたことに気づいたらしく、珍しく頬を赤く染めている。確かに恥ずかしいよな・・・。
「あ、こちらにどうぞ。今、緑茶を入れますので。それとも何か、別のものがいいですか?」
「緑茶を、お願いします」
喫茶店の店員よろしく、滑らかに注文を聞いてきた白さん。さすがに今のはかまなかったか。
二人はまだ準備中か。そんなにいろいろ用意する必要はないと思うけどなぁ。
あ、そういえば京の行事についてまだ行っていなかったっけ? これは失礼。
それでは言わせていただこう、今日は待ちに待った、とても楽しみなその行事とは。
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