旧友との再会
初戦から順調に勝ち上がり1カ月が過ぎた・・
決勝の相手は、ここ3年決勝の舞台には恵まれず、去年は惜しくも準決勝でC大に敗れ、今年は『絶対優勝』を掲げている西の雄、O大だ。過去の優勝回数はT大に次ぐ堂々の第2位。大阪以西の高校出身者を中心にしたチーム編成であり、彼もそのうちの一人であった。
「久しかぶりだな、おと」
審判席の近くで、スコアブックの準備にとりかかっていた詩音は、相手ベンチの方から聞き覚えのある声で呼ばれた。大学入学以来、その呼び方で呼ばれるのは”交際をしている彼”以外では初めてだったので、誰であるかはすぐにわかった。声の主はO大のキャプテン、岡田尚斗だった。
岡田尚斗とは・・・
翔の元チームメイトであり、詩音とは幼稚園時代からの幼馴染である。翔とは対照的に、茶髪でやや長めの髪をセンターよりやや右よりで分けている。しかし、その見た目からは想像できないほどの高い知能指数を持ち、鋭い洞察力で相手のスパイク筋を読むピンポイントブロックを得意とし、また速攻の名手でもあるセンタープレイヤーである。
「久しぶりだね、尚斗。また少し背が伸びたんじゃない?」
「そうっちゃね。高校の時は、翔に追いつくことが目標やったけんね。今じゃもう超えたかもしれん」
大学に入学してから過去3年のインカレでは、別ブロックに配置され会場が別であったため、直接話すのは高校卒業以来であった。
「しかし、言葉といい、雰囲気といい、すっかり東京人になってしもうたね」
「4年もいるからね」
コートの対角でウォーミングアップをしていた翔は、2人に気付き額いっぱいにかいた汗をタオルで拭いながらこちらに向かって歩いてきた。
「元気そうだな、尚斗」
「お、ここにもまた東京人」
尚斗はからかうような言い草で続けてこういった。
「今年はうちがナンバーワンばいただくばい」
よほど研究してきたのだろうか、顔と声からは自信が窺える。
「そうゆうわけにはいかないな、うちも4連覇がかかってるんでね」
こちらも4連覇にかける想いは相当なものだ。
「お手柔らかにお願いしますよ、翔ちゃん」
「やめてくれよその呼び方は」
照れを隠そうと踵を返したその瞬間、尚斗に呼び止められた。
「あいつとはうまくいっとうと?」
まぁねと翔は若干口角を上げてみせたのち、すぐに振り返り、小走りに自陣へと駆け戻っていった。




