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バジリスクに転生してしまったおれは とにかく冒険者に追われる日々!  作者: nekorovin2501


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第9話: 海辺の波涛

街の喧騒を抜け、俺はついに海岸線に辿り着いていた。目の前には果てしない海が広がり、波が岩礁に打ち寄せる音が響く。塩の香りが舌を刺激し、潮風が鱗を撫でる。砂浜には貝殻が散らばり、遠くでカモメが鳴く。夕陽が水面に反射し、オレンジ色に輝く。こんな開放的な場所、まるで絵葉書みたいだ。だが、俺の巨体は砂に埋もれ、鱗が濡れてギラつく。バジリスクが海辺にいるなんて、完全に場違いだ。「せめて泳いで逃げられりゃいいのに……」 心で呟くが、喉からはゴロゴロとした唸り声しか出る。

転生してから、俺はかなり変わってきた。石化の力はだいぶ制御できるようになり、街で槍の先や瓶だけを固めたのは、俺の意志が強まってる証拠だ。人間だった頃の記憶──同僚と食べたラーメンの熱さ、休日に見た海の映画の感動──が、俺を危険なモンスターから遠ざけている。もしこの力がもっと弱まれば、冒険者たちと戦わずに済むかもしれない。いつか、「お前、実は危害を加えないよな?」なんて笑い合える日が来るかもしれない。そんな希望を胸に、俺は砂浜を這う。

だが、静かな時間はすぐに終わる。「見つけたぞ! 海の災厄だ!」「航海の安全のために討て!」 沖から小型船が近づき、船乗り冒険者たちが上陸してくる。網や銛を手に、革のブーツで砂を踏みしめる。リーダーらしき男は、潮風に髪をなびかせ、鋭い目で俺を捉える。「目を見るな! 奴の視線は石化の呪いだ!」 彼らは網を広げ、俺を囲むように動く。またかよ。俺、ただ海の風を感じたいだけなのに。

「頼むから静かにしてくれよ!」 心で叫びながら、俺は波間に飛び込む。水しぶきが上がり、冷たい海水が鱗を包む。バジリスクの体は水の中でも滑らかに動ける。湖での経験が生きるな。俺は海底を這い、岩礁の影に隠れようとする。だが、冒険者たちは容赦ない。銛が水面を貫き、俺の近くで突き刺さる。「逃がすな! 網で捕えろ!」 網が水中に広がり、俺の尾に絡まる。やばい、このままじゃ捕まる。

俺は視線を集中し、石化の力を最小限に抑える。近くの岩礁に目をやる。赤い目が光ると、岩の一部が灰色に固まる。「何だ、岩が石に!?」「奴の力だ、気をつけろ!」 冒険者たちが動揺する隙に、俺は網を振りほどき、別の岩礁へ泳ぐ。海水が鱗を滑り、動きが軽い。人間だった頃、泳ぎは苦手だったのに、この体は水と相性がいいみたいだ。

岩礁の隙間に身を隠し、息を整える。だが、船が近づき、冒険者たちが岩礁を囲む。「奴はここだ! 銛で仕留めろ!」 リーダーの声が水面越しに響く。俺は視線を調整し、水面に浮かぶ漂流木に力を送る。漂流木がカチンと固まり、石になって波に揺れる。「漂流木が!? 奴の仕業だ!」 彼らが漂流木に気を取られる中、俺は海底の洞窟のような岩穴へ滑り込む。

岩穴の中は暗く、潮の流れが静かに響く。鱗が岩に擦れ、ひんやりとした感触が心地よい。俺は体を丸め、考える。石化の力、今回は岩と漂流木だけ。誰も傷つけず、逃げ切れた。制御がますます上手くなってる。人間だった頃、こんな達成感はなかった。会社で書類を仕上げても、上司にダメ出しされるだけ。休日はソファでダラダラ。でも今、こんな海辺で生き延びてる。潮の香りが、なんか生きてる実感をくれる。

冒険者たちの声が遠ざかる。「くそっ、逃げられた!」「周辺を捜索しろ!」 船の音が小さくなり、俺はホッと息をつく。岩穴から這い出し、夜の海辺を見渡す。月光が水面に映り、キラキラと輝く。俺は砂浜の岩陰に体を隠し、考える。人間だった頃、こんな海を見る余裕なんてなかった。残業で疲れ果て、休日は寝るだけ。でも今、こんな美しい場所で、生きてる実感がある。

石化の力も、今日は小さな漂流木だけ。だいぶ弱まってきた気がする。いつか、この力を完全に抑えられたら、冒険者たちとも話せるかもしれない。「お前、実はいい奴だろ?」なんて冗談を言い合える日が来るかも。そんな想像に、俺は少し笑う。いや、笑えない。顔が蛇だから。次の場所では、もっと上手くやれる。危険なバジリスクから、ただのデカい海の生き物くらいになれたら、こんな追跡劇も終わるかもしれない。波の音を聞きながら、俺は新たな道を這い始めた。

(つづく)

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