表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バジリスクに転生してしまったおれは とにかく冒険者に追われる日々!  作者: nekorovin2501


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/10

第6話: 雪原の凍てつき

遺跡の埃っぽい迷宮を抜け、俺は雪に覆われた平原に辿り着いていた。目の前は真っ白な雪原が果てしなく広がり、吹雪が視界を白く染める。冷たい風が鱗の隙間を刺し、体がカチカチに固まる感覚がある。舌で空気を味わうと、凍えるような清冽さと雪の匂いが広がる。砂漠の熱さや山の険しさとは違う、この凍てつく世界はまるで別次元だ。バジリスクの体は寒さに弱いらしく、動きが鈍る。こんな場所でどうやって生き延びるんだよ、と思いながら、雪をかき分けて這う。

「せめて暖かい毛布でもあればな……」 心で呟くが、喉からはかすれた唸り声しか出ない。転生してから、だいぶこの体に慣れたけど、寒さはキツい。人間だった頃、冬の朝に布団から出るのが嫌だったのを思い出す。あの頃は暖房とホットコーヒーでしのいだけど、今はそんな贅沢もない。ただ、石化の力は少しずつ制御できている。遺跡で瓦礫や壺だけを固めたのは、俺の意志が強まってる証拠だ。もしこの力がもっと弱まれば、冒険者たちと戦わずに済むかもしれない。いや、話せたら、誤解を解けるかも。そんな淡い希望を抱きながら、雪の道を進む。

だが、静けさは長く続かない。「見つけたぞ! 雪の魔物だ!」「村の平和のために討て!」 吹雪の向こうから、スキーを履いた狩人たちが現れる。毛皮の鎧に身を包み、槍やクロスボウを構える。リーダーらしき男は、顔を覆う毛皮のフードから鋭い目を覗かせ、俺を睨む。「目を見るな! 奴の呪いは即死だ!」 彼らは雪の上を滑るように近づき、俺を囲む。マジかよ、こんな極寒の地でも追ってくるのか。

「俺、ただ通り過ぎたいだけなのに!」 心で叫びながら、俺は雪に潜る。バジリスクの体は砂だけでなく、雪の中も意外とスムーズに動ける。だが、冷気が鱗を凍らせ、体の芯まで冷える。狩人たちの槍が雪に突き刺さり、クロスボウの矢が飛んでくる。「逃がすな! 奴の鱗は高値だ!」 俺は雪の下を這い、視線を集中。石化の力を最小限に抑え、試してみる。近くの狩人のクロスボウに目をやる。赤い目が光ると、クロスボウの引き金部分だけが灰色に固まる。「なんだ、武器が動かねえ!」 狩人が慌てる隙に、俺は雪原の奥へ這う。

だが、吹雪が強まり、視界がほぼゼロになる。寒さが俺の力を弱め、動きがさらに鈍る。狩人たちは吹雪をものともせず追ってくる。「気配を追え! 奴は弱ってるぞ!」 やばい、このままじゃ捕まる。俺は雪の斜面を這い、近くの岩場へ向かう。そこに小さな洞窟が見えた。体を滑り込ませ、凍える鱗を岩に擦りながら隠れる。洞窟の中は風が遮られ、わずかに温かい。息を整えながら、思う。石化の力、今回は武器の一部だけ。誰も傷つけず、ピンポイントにできた。少しずつ、制御が上手くなってる。

狩人たちの声が洞窟の外で響く。「奴は近くにいる! 洞窟を捜せ!」 スキーの滑る音が近づく。俺は洞窟の奥に体を押し込み、擬態を使う。鱗が雪と岩の色に溶け込む。バジリスクの能力、ほんと助かる。だが、この力があるからこそ、俺は狙われるんだろうな。人間だった頃、会社で目立たないように生きてきた。目立つと面倒な仕事を押しつけられるから。でも今、目立たないわけにはいかない。

試しに、視線を弱く調整。洞窟の入口に落ちていた枝に力を送る。枝がカチンと固まり、石になる。「何だ、この枝!? 奴の仕業だ!」 狩人たちが枝に気を取られる隙に、俺は洞窟の別の出口へ這う。雪原の夜が訪れ、吹雪が収まる。星空が広がり、雪がキラキラと輝く。俺は雪の陰に身を隠し、息をつく。生き延びた。石化の力も、今日は枝だけ。だいぶ制御できてきた気がする。

雪原を見渡しながら、俺は考える。人間だった頃、こんな景色を見る余裕なんてなかった。残業で夜遅くまでデスクに張り付き、休日は寝るだけ。でも今、こんな凍てつく世界で生きてる。追われるのはキツいけど、生きてる実感がある。いつか、この力を完全に抑えられたら、狩人たちとも話せるかもしれない。「お前、実は無害だろ?」なんて笑い合える日が来るかも。そんな想像に、俺は少し笑う。いや、笑えない。顔が蛇だから。

次の場所では、もっと上手くやれる。危険なバジリスクから、ただの大きな爬虫類くらいになれたら、こんな争いも終わるかもしれない。雪原の冷気の中、俺は新たな道を這い始めた。

(つづく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ