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バジリスクに転生してしまったおれは とにかく冒険者に追われる日々!  作者: nekorovin2501


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第5話: 廃墟の迷宮

湖畔の静けさを後にし、俺は古びた遺跡に迷い込んでいた。目の前には、苔むした石柱が崩れかけたまま立ち並び、ひび割れた石壁に謎めいた紋様が刻まれている。空気は埃っぽく、舌で味わうとカビと古い土の匂いが広がる。陽光が隙間から差し込み、石の床にまだらな影を落とす。こんな場所、まるで冒険者が宝探しにくる舞台だ。俺みたいなバジリスクがうろつくには、ちょっと不釣り合いな雰囲気だな。

「せめて観光気分で楽しめりゃいいのに……」 心の中で呟くが、喉からはゴロゴロとした低音しか出ない。バジリスクの体には慣れてきたけど、喋れないのはやっぱり不便だ。人間だった頃、会社の飲み会で愚痴をこぼすのがストレス発散だった。あの頃は残業と上司の小言に耐える日々だったけど、今は命を狙われる毎日。どっちがマシか、微妙なところだ。でも、石化の力は少しずつ制御できている。湖畔で葦や障壁の一部だけを固めたのは、俺の意志が強まってる証拠だ。いつかこの力がもっと弱まれば、冒険者たちと敵対せずに済むかもしれない。そんな希望を胸に、遺跡の奥へ這い進む。

だが、静寂はすぐに破られた。「見つけたぞ! 遺跡の守護者だ!」「その鱗は宝物だ、仕留めて名を上げろ!」 石柱の影から、弓矢を構えた探索者たちが現れる。革のマスクで顔を隠し、松明の炎が揺れる。彼らは訓練された動きで扇形に広がり、俺を囲む。リーダーらしき男は、肩に大きな弓を担ぎ、鋭い目で俺を捉える。「目を見るな! 奴の呪いに気をつけろ!」 またかよ。俺、ただ通りかかっただけなのに。

「頼むから見ず知らずの怪物扱いすんなよ!」 心で叫びながら、俺は体をくねらせ、石柱の間を這う。鱗が石に擦れてカサカサと音を立てる。弓矢が放たれ、矢が石壁に当たって火花を散らす。「逃がすな! 矢で仕留めろ!」 俺は通路の曲がり角に滑り込み、視線を集中。石化の力を最小限に抑え、試してみる。近くの探索者の足元にある小さな瓦礫をターゲットに、赤い目が光る。瓦礫が灰色に固まり、探索者がつまずく。「何だ、この石!? 罠か!」 彼がバランスを崩す隙に、俺は迷路のような通路を這い進む。

遺跡の構造は複雑だ。通路が分岐し、階段が突然途切れ、罠らしい仕掛けがあちこちに。人間だった頃、RPGゲームでこんなダンジョンにワクワクしたもんだ。でも、今は自分がモンスター側。ワクワクどころか、緊張の連続だ。通路の奥で、床の石板がカチリと鳴る。やばい、罠だ! 矢が壁から飛び出し、俺の尻尾をかすめる。鱗が一枚剥がれ、チクッと痛む。「くそっ、こんなとこで死にたくない!」 俺は体を丸め、狭い隙間を這って逃げる。

探索者たちの声が近づく。「気配がする! この先だ!」「罠に気をつけろ、奴は狡猾だ!」 狡猾って、お前らの方がよっぽど手強いだろ。俺は地下室らしき部屋に滑り込む。そこは広くて暗い空間で、天井から水滴がぽたりと落ちる。壁には色褪せた壁画。獣や神のような姿が描かれ、どこか俺に似た影もある。もしかして、昔のバジリスクって崇められてた? そんなことを考える間もなく、松明の光が近づく。

俺は壁の影に体を押し込み、擬態を使う。鱗が石の色に溶け込む。探索者たちが部屋に入り、松明を掲げる。「どこだ? 気配が消えたぞ!」「この部屋、怪しいな。捜せ!」 俺は息を殺し、視線を弱く調整。部屋の隅の壊れた壺に力を送る。壺がカチンと固まり、探索者が振り返る。「壺が石に!? 奴の仕業だ!」 彼らが壺に気を取られる隙に、俺は別の通路へ這い出す。

遺跡の外へ出ると、夜の冷気が体を包む。星空が広がり、静寂が心地よい。俺は崩れた石壁に体を隠し、息を整える。石化の力、今回は瓦礫と壺だけ。誰も傷つけず、うまく逃げ切れた。少しずつ、力が制御できてる実感がある。人間だった頃、こんな達成感はなかった。書類を期限までに仕上げても、上司に文句を言われるだけだった。でも今、生き延びるたびに、ちょっと強くなってる気がする。

この遺跡には何か秘密がありそうだ。壁画のバジリスク、ただの怪物じゃなかったのかも。もし俺がただの危険な存在じゃなく、何か意味のある存在になれたら……。バカな夢かもしれないけど、転生したんだから可能性はあるはずだ。次の場所では、もっと上手くやれる。追われ続ける日々を、いつか変えてみせる。

(つづく)

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