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バジリスクに転生してしまったおれは とにかく冒険者に追われる日々!  作者: nekorovin2501


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第10話: 空の果てへ(最終話)

海の波涛を抜け、俺は不思議な場所に辿り着いていた。目の前には雲海が広がり、浮遊する島々が点在する。陽光が雲を貫き、虹色の光が鱗に反射する。風が強く吹き抜け、まるで体を浮かせるような軽やかさだ。舌で空気を味わうと、澄んだ冷気と微かな花の香りが混じる。この天空の領域は、まるで現実離れした夢の舞台だ。だが、俺のバジリスクの巨体は、こんな幻想的な場所に似合わない。赤い目と鋭い牙が、浮島の緑に映える。「こんな場所で、静かに暮らせたらな……」 心で呟くが、喉からはかすれた唸り声しか出る。

転生してから、俺は大きく変わった。石化の力はほぼ完璧に制御できるようになった。海辺で網や海藻だけを固めたのは、俺の意志が強まった証だ。人間だった頃の記憶──同僚と夜空を見上げたキャンプ、休日に読んだ冒険小説の興奮──が、俺を危険なモンスターから遠ざけた。もしこの力が完全に抑えられたら、冒険者たちと敵対せずに済むかもしれない。いや、話して分かり合える日が来るかもしれない。そんな希望を胸に、俺は浮島の縁を這う。

だが、静寂はすぐに破られる。「見つけたぞ! 天空の悪魔だ!」「永遠の平和のために討て!」 雲の隙間から、翼付きの鎧を着た騎士たちが降下してくる。剣を手にし、風を切って滑空する彼らは、まるで鷹のようだ。リーダーらしき女騎士は、兜の隙間から鋭い目を覗かせ、俺を睨む。「目を見るな! 奴の視線は石化の呪いだ!」 彼らは島の周りを旋回し、俺を囲む。またかよ。俺、ただこの景色を楽しみたいだけなのに。

「俺はもう、戦いたくないんだよ!」 心で叫びながら、俺は体をくねらせ、島の岩陰に這う。鱗が苔むした岩に擦れ、ザラザラと音を立てる。騎士たちが剣を振り、魔法の矢が飛んでくる。「囲め! 奴を仕留めるぞ!」 俺は視線を集中し、石化の力を最小限に抑える。近くの騎士の剣の鞘に目をやる。赤い目が光ると、鞘の先端だけが灰色に固まる。「なんだ、剣が抜けねえ!」 騎士が困惑する隙に、俺は別の浮島へ滑空する。バジリスクの翼のような鱗が風を捉え、ふわりと浮く。

だが、天空の戦いは過酷だ。雲海の間を飛び交う騎士たちは、俺を執拗に追う。風が強く、体が揺れる。「気配を追え! 奴は逃げ場がない!」 女リーダーの声が響く。俺は島の縁にしがみつき、視線を調整。地面に生えた小さな草に力を送る。草がカチンと固まり、石になる。「何だ、この草!? 奴の仕業だ!」 騎士たちが草に気を取られる中、俺は雲の隙間を抜け、別の島へ這う。

島の中心に、古代の祭壇のような岩がある。そこに刻まれた紋様は、遺跡で見たバジリスクの壁画に似ている。もしかして、俺みたいな存在は、昔は守護者だったのか? そんなことを考える間もなく、騎士たちが迫る。「奴は祭壇にいる! 封印しろ!」 俺は祭壇の影に体を押し込み、擬態を使う。鱗が岩と雲の色に溶け込む。バジリスクの能力、最後の舞台でも役立つな。でも、この力があるから、俺は狙われるんだ。

試しに、視線をさらに弱く調整。祭壇の隅に落ちていた石ころに力を送る。石ころが灰色に固まり、カチンと音を立てる。「何だ、この石!? 奴の仕業だ!」 騎士たちが石ころに気を取られる隙に、俺は雲海の奥へ滑空する。風が体を包み、自由な感覚が広がる。夜が訪れ、雲海に星が映る。浮島のシルエットが月光に浮かび、幻想的だ。俺は小さな島の岩陰に身を隠し、息をつく。生き延びた。石化の力も、今日は草と石ころだけ。ほぼ無害に近い。

雲海を見渡しながら、俺は考える。人間だった頃、こんな景色を見る余裕なんてなかった。残業で疲れ果て、休日は寝るだけ。でも今、こんな天空で、生きてる実感がある。石化の力は、ほとんど制御できた。いつか、この力を完全に抑えられたら、騎士たちとも話せるかもしれない。「お前、実はいい奴だろ?」なんて笑い合える日が来るかもしれない。そんな想像に、俺は少し笑う。いや、笑えない。顔が蛇だから。

だが、この転生の旅は、ここで終わりじゃない。雲海の向こうに、新たな地が見える。危険なバジリスクから、ただの生き物に変われたなら、俺の物語はもっと広がるはずだ。追われる日々を終わらせ、自由を掴むために。俺は風に乗って、未知の地へ飛び立った。

(完)

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