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異世界クラウドファンディング 〜研究室の殺人事件から、舞台はドバイ、そして異世界へ〜  作者: 稲盛 皆藤


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獣人属の村

「センパーイ、何キョロキョロしてるっすか、こっちっすよ、後で資料お渡ししますから、

 今はとりあえず着いてきて下さい。」と井口君はまるで歩けるようになった赤ちゃんが

初めてのお出かけに出たように、周りの見える物全てに気を取られていてなかなか着いて

来ない石黒に歩を進めるように催促をしていた。


 先ほどまでのオンポロテントから数キロは離れた高床式倉庫がたくさん立ち並ぶ村の

ようなところに案内された。目に付くのは頭に猫や犬やウサギなどの耳が付いていた

決して地球ではハロウィンイベントなど以外では見られない獣人たちの住んでいる村

のようだった。


 石黒は異世界の全てに興味津々で、土を平らに押し固めただけの道路の道端に

咲いている花、樹木、昆虫などの有機物や石ころなどの無機物に至るまで全てが

新鮮そのものだった。

 対照的に井口君は相変わらず、取り巻きの獣人の可愛い女の子たちとずっと一緒に

居て、井口君の廻りにまとわりつくかのようにベタベタとくっ付いて来ていた。

 新参者の石黒先輩のこともいろいろ質問しているようで、時折視線を石黒先輩に

当てては質問していたので、そのように推測できた。


 言葉は異世界語で石黒には全く分からなかったので、井口が必要に応じて通訳して

くれていた。

 異世界語は、アトラン語というこの世界での共通語ということらしかった。

 何故アトラン語というのかはその時は特に気にならなかったのだが、異世界語を短期間で

習得している井口に石黒は驚愕するしかなかった。

 井口には地球時代からコミュ力お化けとしてその特技は研究室内でも有名だったので、

その特技が異世界でもどうやらプラスに働いてくれたようだった。


「ここでっす。着きました。」と井口君は石黒を高床式倉庫の一つに案内した。

「ここ、井口君の家?」と石黒は20畳以上の広々空間の室内の広さに驚き目を丸く

しながら聞いていた。

「ええ、まあ俺んち、いや、俺たちの家ですかね。」とベタベタとくっついていた獣人属の

女の子たちを手を広げておどけて見せた。

 本当に井口君のコミュ力には驚かされるばかりか、ホントにマジでモテモテだった。


 それから一晩中、二人は語り合った。合間の時間には煮炊きした野菜や肉を出して

もらったようだったが、口に合う食べ物で良かった。


 井口君はこの世界のことをいろいろ教えてくれた。

 現地の知識もいろいろ仕入れてくれていた。

 アトラン語の例文集みたいなツールも見せてくれた。

 地球の大西研時代でのふざけた井口君からは想像できないレベルだった。

 やるべきことを、ここまでやれる高いポテンシャルの持ち主だった。


 石黒からは、地球での苦労をいろいろ井口君に愚痴った。

 勝手に装置の電源を切って井口君をこちらの世界に閉じ込めた松本教授への恨みを

力に変えて、井口君の救出をモチベーションにやってきたことを事細かに話した。

 もちろん大西研での全ての実験データが無になったことや、自宅では水道も

止められてまさに死ぬ寸前まで行ったこと、ドバイの研究施設から再起を図って

ようやくこちらの世界に来れたことなどを井口君に聞いてもらった。


 井口君のポテンシャルはこんなものでは収まらなかった。

 井口は新しい商売を思いついたらしく、どこか既視感があったはずなのにそれとは

似てもにつかない商売の仕方だった。

 それは横幅5メートルほどの長い長方形の水槽に、おでんの具をいれて、お客さんが

セルフで自由におでんを取れるスタイル、精算はお手製の大きな天秤を使っていて、

分銅何個分かで、おおざっぱな計り方で店員とのお金のやり取りをしていたのだった。

 この世界には、電気が無かったので、もちろん電子レジなどはあるはずもないので、

天秤を使った量り売りは、それだけでも井口君の発明品として周囲から尊敬されていた。

 もう一つの5メートルほどの長方形のショーケースには、いろんなおかきが種類ごとに

置かれていて、こちらは汁っけは無いがこれもセルフの量り売り。何とも豪快な販売方法だ。


 まだまだ井口君のポテンシャルは無限の広がりを見せていた。

 こちらの世界では科学技術ではなく魔法技術が発展しているようだった。

 いろいろと試作中の発明品も見せてくれた。

 動力源に反重力魔法を使用したドローンも試作中で、ドローンに傘を被せて手を使わなくも

勝手に頭の上に付いてきて雨を防ぐ新しい発想の傘などはとても科学者らしいアイデアだった。



 この異世界には、人属、 獣人属、 魔属が暮らしているとのことだった。

 今では各種属間の大きな戦争は起きておらず、魔法中心の魔属、体術剣術中心の獣人属、

魔道具中心の人属が上手く均衡を保っているとのことだった。

 地球人の科学者たちが聞いたら腰を抜かすような衝撃の内容の一つではあったが、

人属は約12000年前に地球のあの幻のアトランティス大陸から移り住んだらしく、

みんな西洋人の顔をしているとのことだった。

 大西研の石黒や井口たちの発見より前にその異世界のゲートを通って来たとのことであった。


 アトランティスは魔道具文明が主流だった。

 もう一つ衝撃の事実らしいことには、その魔道具の暴走で地球のアトランティス大陸を

沈没させてしまって滅んでしまったとのことらしかった。

 魔法の技術は、もともと人間属には無かったのだが、アトランティスから転移してきた

古代人たちがこちらの異世界に魔道具を持ち込んだということだった。

 そのアトランティス大陸から来た人間属の末裔が治めているアトラン国では、

魔法の知識や技術が学べるとのことだった。


 井口君はアトラン国に何度か行ったことがあるらしく、人間属であれば国内への

出入りに制限は無かったので、簡単に入国できたとのことだった。

 その時に入手した簡単な魔法の書物も二、三見せて貰うことはできたのだが、

何せアトラン語で書かれていたので、今の石黒に読むことは出来なかった。

 井口君もまだ、翻訳までは手が回っていないとのことだった。

 パッと見は、アラブ圏の言語に近い印象の文字で書かれていたので、今度助手の

アブラとサイダにも試しに送ってみようかと考えた。


 こちらの世界では獰猛な動物や魔物たちが徘徊しているらしく、街へ行くには自衛手段は

必須だった。

 剣術の訓練は、取り巻きの可愛い獣人の女の子たちが相手をしてくれるらしく、

獣人属たちは体術や剣術に長けているようだった。

 井口君はもう一人でも外を出歩ける程度の実力は身に付いたとのことだった。


 おんぼろテント周りにはたまたま獰猛な魔物が出没しなかったため、そんなことに

気がつかなかったが、地球と同じように考えているといつでも死ねる土地らしかった。


「あれ、女の子たち急に居なくなったけど、何かあったの?」と石黒は不思議に思って

井口に聞いてみたことがあった。

「ああ、獣人属は昼寝をするんですよ、太陽の下で。

 光合成してエネルギーチャージしてるみたいですよ。」と普通に井口が答えた。

「えー、まじか、人が光合成するって?」と石黒は大いに驚いたが、井口君にはもう

普通のことのようだった。


 この異世界は石黒にとって、一瞬一瞬が驚きの連続であった。


 翌日には、定時連絡を入れるために例のおんぼろテントに戻ることにしたのだった。

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