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秋の日の釣瓶落とし

 仕事が終わり、職場から一歩外に踏み出すだけで、夜の闇の海に足を入れていくような感覚を覚える。

 ほんの少し前まで窓から差し込んでいた橙色の残光は、すでにどこにもなく、街はもう暗さに包まれていた。秋の日は本当に短い。まるで誰かが天井の照明を急に落としたかのように、昼と夜の境界が唐突に訪れる。


 通りを歩けば、店先の看板や信号機の灯りが、やけに鮮やかに浮かび上がって見える。昼間なら何気なく通り過ぎる光景が、今は夜の闇に沈む世界の中で小さな島のように瞬いている。風は夏の名残を残しながらも、確実に冷たさを孕んでいて、シャツ一枚では心もとない。


 ビルの谷間から覗く空は、紺色を通り越して、すでに墨汁を落としたような濃さを帯びていた。わずかに残った西の空の明るみも、釣瓶のように音もなく落ちていく。夕暮れは「移り変わる時間」ではなく、「突然失われる瞬間」だと、この季節になるといつも思い知らされる。


 商店街を抜けると、遠くに子どもたちの声が聞こえてきた。家路を急ぐのか、ランドセルを揺らしながら小走りで帰っていく姿がある。夏ならまだ外で遊んでいる時間のはずなのに、秋の影は彼らを急かすように背中を押している。


 足元に伸びる自分の影は、街灯の灯りに細く長く引き延ばされていた。その頼りない影を見つめながら、ふと、日々の時間までもが釣瓶落としのように過ぎていくのではないかという不安に襲われる。つい昨日まで汗ばむ陽気だったのに、もう冷たい風がジャケットを欲しがらせる季節になった。


 季節の移ろいは、日々の忙しさの中でふと顔を出し、こうして心に強く刻み込んでくる。

 秋の日の釣瓶落とし――この言葉の残酷さと美しさを、今日もまた肌で感じながら、夜の街を歩いていった。

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