表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/17

車窓にみる

久しぶりに、遠くへと電車に揺られる機会を得た

乗り始めのころは、人の世が築き上げた四角く硬き景色ばかりが、窓の外を淡々と流れてゆく

灰色のビル群は冬の光を受けて白く光り、ガラス窓には空の淡き影が映り込んでいた

車輪の響きが一定の調べを刻み、まるで時間そのものが後ろへと退いていくようである

都会だなぁ、と胸のうちでつぶやく

今なお、あの憧れの念は薄れていない


やがて東へ進むほどに、視界の先に海が姿を現した。

淡い陽光の下、蒼と銀の境に水平線が延びている

波間にきらめく白が、まるで誰かの記憶のように穏やかに揺れる

寒の季節にもかかわらず、その光景はなお人を誘うようで、思わず「まだ泳げるのでは」とさえ思うほどに魅惑的だった

潮の香がかすかに窓の隙間から入り、胸の奥をやさしくくすぐる


やがて、景色はまた変わる

田の広がる里の風情に包まれ、どこか懐かしさが胸を打つ

遠く霞む山の稜線は夕日に照らされ、わずかに橙を帯びていた

面に実った稲穂は、すでにきつね色に染まり、風が通るたびさざ波のごとく揺れている

まるで故郷の匂いが、遠い記憶を呼び覚ますようだ


やがて電車は川を渡る橋に差しかかる

昨日の雨のせいか、水面はやや濁り、流れは急を帯びていた

橋の下を見やれば、岩にぶつかる波が白き泡を立て、自然の厳しさを訴えるようである

その力強さに、しばし言葉を失う


レールの上しか進めぬ鉄の車輪

ゆえにこそ、移ろいゆく景の美を、心ゆくまで眺めることができるのだろう

いつしかこの旅そのものが、日常の疲れを洗い流すようであった

電車に乗ることが、趣味になりそうだ

そんな思いを胸に、私はまた静かに窓の外を見つめた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ