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狼の山荘  作者: 東雄
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人狼と人間そして能力の決定

 いよいよ、カードを引くことになる。自分が何になるかで運命が決まるのだ。

 結城さんが声を掛けた。

「一人ずつ、お呼びしますので、呼ばれた方はカードを引き、確認の上、私に渡してください。それでは五十音順にお呼びします。

一番目は藍田さん」


 入口近くに座っていた藍田さんが立った。その顔は紅くそまり、興奮しているのか分かる。ちょっと心配だが藍田さんはゆっくり結城さんに近づく。全員が、それを注視していた。

 藍田さんが四角い箱の中に手を入れて、一枚のカードを出したようだ。こちらからは藍田さんの背中しか見えない。そういう机の配列だ。 そして私の番が来た。さすがに胸が高鳴る。私は一歩一歩、箱にゆっくり向かい、そして箱の中に手を入れた。掴んだカードをゆっくり箱の中から出して、私はカードを凝視した。カードは人間だった。ほっとした、が、人狼だったら、多分自分は三億に目がくらんで、本当に欲望の塊になったかもしれない。


 私は席につくと小さく息を吐いた。皆には私がどう映ったかだな。もうゲームは始まっているのだ。目立つ振る舞いはNGだ。しかし人間とは、さてどう振る舞うべきか、目的ははっきりしている。誰が人狼かを見抜くことだ。気をつけるべきは裏切り者と、異常者だ。

 最後の桃井さんがカードを引いた。全員背中を向けた状態なので、カードを引いた直後の表情が分からない。戻ってきた時の桃井さんは固い顔になっていた。だが、固い顔は全員だ。こんな時にヘラヘラしている人間はいないだろう。とにかく桃井さんが帰ってきて、すべてのカードが決定した。人狼2、人間5、占い師1、騎士1、裏切り者1、異常者1.嘘つきゲームの開始だ。


「すべてのカードが決まりました。つきましては、朝食後、皆様方

は部屋を決めていただいて、昼食までお休みください。なお第一回の投票は午後九時です。お忘れなく」と結城さんは皆に告げると、黙って自分の椅子に座った。


 すると左手のドアから、二人の婦人が病院で使うようなカートを押して食事を運んできて、皆に配る。食事は淡々と進み一時間ほど後には下げられた。二人の女性は来た時と同じように左手のドアに消えた。


 朝食が終わると、私は、ひとつ伸びをして立った。自然に男女は分かれる。男性は入口から見て右に、女性は左側のドアに向かった。私はこのホールには窓が無いので、玄関に行って、ドアを開けてみた。すると雪は止み銀世界が一面に広がっていた。まっさらな雪が建物の周りをぐるりと囲み、足跡ひとつ無かった。ということは私たちがここについてから誰も出入りは無かったということになる。空は雲が切れ、陽光が射して雪を鮮やかに銀色に輝かせている。その光は眩しく、私は目をぱちぱち瞬かせた。それにしてもいったいここは何処なんだろう。


 私の部屋は、ドアを開けてすぐそばのNO・7になった。部屋の表と中にインターフォンがある。部屋はひんやりとしていた。私は白の机のうえにあったリモコンでエアコンをつける。白の小さい机の上にディスクスタンドと、ボールペン、メモ帳、電話機、そして時を刻む小さな置時計があった。これから、この小さな時計に行動を支配されるということだ。また結城の番号101と書いた紙片が電話機の側にある。他の番号は分からない。電話で相談は出来ないということか。念のいったことだ。部屋には茶色の椅子が置かれ、机と椅子の側にはやや小さめのベッドが据え付けられている。


入口の真向いに窓があり、黒のカーテンを開け、多少古くなったクレッセント錠を開けて、窓を開けると見事に銀白色に輝いた樹林が見えた。ここが一週間のねぐらか、何かの研修所みたいだなと私は思った。

 そして、結城さんに部屋番号を連絡した。疲れを感じ、ベッドに横たわった私はしばらく眠ったようだった。


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