表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狼の山荘  作者: 東雄
32/32

終章

 空は青く澄み渡っていた。雪も昨夜から降っていない、久しぶりの和らいだ光で、窓の外に垂らされていた氷柱も溶けかかっていた。

 私が玄関の外に出ると、珍しく、緑川さんが喫煙所で煙草を吸っていた。私が見ると、緑川さんは、ちょっと困ったように微笑んだ。ちょっと校令に反した、生徒のようだ。

「青木さんに、もらったの。一本吸うとだめね。また禁煙はいちから、やり直しね」

 煙草を吸いたくなるのは分かる。ゲームの結末は、皆いちおうに驚いたし、疲れてしまった。今の今まで論を尽くしていたのに、最後にテミスが選んだのは、むちゃくちゃの青木さんだ。はっきり言って、彼は何もしてはいない。仲間も、自分も守る論理は一切持っていなかった。なのに、勝ったのは彼、まったく人生はうまくいかないもんだ。そういうことが身に染みて分かった。

「彼は賞金、どうするんでしょうね」

 緑川さんは、少し考えて言った。

「悪銭身につかず。こういう賞金は、多分、あっという間になくなる。彼はそういう人よ」


 なるほど、そうかもしれないが、できるなら、慎重になってほしいものだ。彼は自分の幸運を喜ぶべきだ。本当に殺されかけたのだから。相馬純子のためにも、そうあってほしい。

「ところで、緑川さんは、赤城グループには何と言っていたのですか」と私が聞くと、緑川さんはにやりと悪魔的な表情をした。

「もちろん、グループに入りますと言っていましたよ」

 何と! 二股かけていたわけだ。

「でも灰田さん追放までですよ。そこは矛盾しなかったでしょ」

 もう一人の人狼は灰田さんだと結城さんは言った。予想通りだったが。それにしても、緑川さんは女優を目指しているのなら、大した役者になれるかもしれない。

 すると、「黒田さん」と緑川さんは私に声をかけた。

「何ですか?」

「黒田さんは、教員免許を持っているんですよね」

 ふいの質問に、少し驚いたが、頷いた。緑川さんは私の目をまっすぐ見て言った。

「先生、もうやらないの」

 これには、正直答えられない。

「分からない」

 緑川さんは「そう」というと、もう一本煙草を咥えて、すうと吸い込んでフーと吐いた。

 煙は、白い山並みを超えて、どこまでも青く高い空に向かって溶けて行った。


「運命の輪舞」章の次に「告白」章を付け加えました。すいません。よろしければ読み直してください(6月21日)

長い物語を読んでくださりありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ