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異世界タウン take2  作者: 愛加 あかり
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異世界移住

ハルル・バレーは、ポツポツと家が点在していて、農業が盛んな土地に思える。

言葉の壁は有ったが、『ユニーバ教』と出した途端、皆が一斉に、一つの方角を指した。

マイジェイさんは、生きていて、次の村に向かったようだ。




 ツーバルは、ブリーナに1枚の銀貨を支払い、荷台の上から頭を撫でた。

 ブリーナも、クッキーが売れて、ご機嫌になり。喜んで帰っていった。


 「絶対に食べるなよ。腹壊すから」


 ツーバルは、大笑いをした後で。


 「クッキーを、作るにしても。薪が足らずに、中が生のモノがたまにあるんだ。悪気が有る訳では無い。教える両親が居ないんだよ。許してやってくれないか」


 ブリーナは、戦後直ぐに生まれたのだが。父親は、戦場から帰ってこなかった。

 母親も、ブリーナの生命と引き換えに、引き取った。

 そんな子供らを、村長の家の馬小屋を改造して、孤児を集めて育てる場所を作ったのだが。

 ブリーナは、付きに一度。馬小屋の竈を使って、数枚のクッキーを焼き。市場で売り歩いている。


 「少ない金で、小麦と薪を買い。食べられないクッキーを、大人たちは買う。たまに、ここを通る商人でも、知っている話だ」


 ツーバルは、少し悲しげに話した。


 「僕にも、お役に立てることはありますか」


 ブリーナに、同情してしまった。


 「どうだろう、ニィちゃんは、何ができるんだい」


 「今の所は、畑を耕すくらいかな。ビールの販売も出来るよ。金額が分かれば」


 ツーバルは、手を三回叩いて。


 「良い事を思い付いた。お爺さんと一緒に、この村に住まないか。弟の空き家があるんだ。このラガーを、20本で手を打たないか」


 「まず、お家の方を見たいのですが。宜しいですか」


 「そうだよな、一本銅貨300枚だもんな。 こじんまりとした、家なんだが。2人で暮らすには十分な広さだと思う」


 その後は、ハルル・バレーの中心から少しズレて、一軒の家にたどり着いた。


 会話は途切れ、交渉も出来なくなり。

 NOと言えない状況が出来上がったかのように見えた。


 実際は違った。


 お祖父ちゃんの家よりも大きく、庭も納屋も揃っている。仕事が決まれば、移住ができる。

 肝心の母屋だが、作りは石がメインで作られている。

 壁に石を重ねて積み、隙間を土で埋めて。屋根は緩やかな三角で、雪が積もらないか、振らないのであろう。玄関直ぐに、暖炉のリビングが有り。奥に3つの部屋に分かれている。

 トイレは外で、汲み取り式。お風呂は無く。井戸が敷地の中にある。


 直孝は、別なことを考えている。

 石壁だと水道の配管は難しいし、窓も少ない。床も凹凸のある地面に、木材を敷いただけだ。

 色々手直しや、電気配線も必要だが。

 月に、ビールケース8箱でも良いと考えた。

 家賃など払ったことなど無いし、払ったことなど無い。物価自体が異なる世界で、僕が決めないといけないんだ。


 直孝は、中心部に着くまでに、いろいろなことを考えた。ここに住むのは確定している。


 「獣人さん達は、畑で1日にいくら稼ぐのか教えてもらえますか」


 最初に、日当を教えてもらうことにした。

 カゴに数枚のクッキーで、銀貨一枚の値段。手作りだから、ハルル・ベリーが高価なのか。

 直孝は、覚えることが沢山ある。


 「銀貨、6枚くらいかな。彼奴等、良くサボるんだよな」


 「1万2千円くらいか、銀貨は2千円くらいかな」


 次に、熊撃退スプレーを取り出して、屋外の木にかけた。


 「動物避けの、スプレーなのだけど。いくらで売れると思う」


 「これだけ離れていても、強烈にクセーし、それに目が痛い。動物避けなのは理解したが。獣人達にも、効きそうで苦情が出るな」


 成る程、獣人達には毒なんだ。過敏な鼻を持つ獣人達には、何かの合図にも使える。

 スタンガンは、護身用だ。奪われるわけには行かない、しばらくは秘密にしよう。


 「銀貨一枚は、銅貨何枚分なんですか」


 「銅貨10枚で、銀貨が1枚。銀貨100枚で、金貨が1枚。金貨が100枚で、ミスリル硬貨1枚。まぁ、見たこと無いけどな」


 そうなると、銅貨3枚くらいが、ビール2缶なのだが。

 なんだか安く感じる。関税をかけて、マージンを取った。


 ビール1本を、銅貨3枚で様子を見ることにした。銅貨300枚が、20本で6000枚。

 つまり、金貨2枚分の家賃になる。

 物価が、安いのか、高いのかはまだ分からない。

 だが、チャンスはここに有ると思う。


 次に、村長の家に、連れて行かれた。

 荷台で寝ているお祖父ちゃんを起こして。残り少ないビールをさ持参して、挨拶をした。


 「村長、儲け話を持ってきたぞ」


 ツーバルは、残り6缶しか入っていないのに、水と氷が入ったクーラーボックスを担ぎ、村長の家の戸を叩いた。


 先程のブリーナも、3人の子供たちと汚れた人形で遊んでいる。

 男の子は、畑に出て収穫の手伝いと、獣人たちの監視をしている。


 まぁ、まだ遊びながら仕事を覚える、段階の子供達だった。

 主な仕事が、農業しか無く。まじめに働いて、農地を譲り受けないと、この集落を出される。

 奴隷に落ちるか。盗賊になり下がり、殺されるか、死刑になるかの二択だ。

 ロクな死に方はしない。

 だが、この集落には若者が少なく。保護の対象でしか無い。

 間違った事をしない為の、教えでもある。


 「何だ、ツーバル。畑の収穫はいいのか」


 ツーバルは、家の跡継ぎだから、戦争に駆り出されていない。代わりに、弟が戦場へ出向き、帰ってこなかった。


 敗戦した国からは、金貨1枚しか与えてもらえずに。


 「何だ、その目は。お前達が、役立たずを戦場へ送り出さから、国は負けたのだぞ。貰えるだけ有り難いと思え」


 ここの領主、バマーリ・ヘイリス男爵が、罵倒を浴びせながら配っていた。


 ブリーナ達も、金貨1枚を受け取ったが。村長が預かる形になっている。


 「今日ぐらいは、神様も目を瞑ってくれるよ。それよりも、『無益の書』の予備が有ったろ。商人がここに忘れて帰って、「もう要らないって」って言って、置いて帰ったやつ。こいつに渡してくれ。頼む、この通りだ」


 ツーバルが、僕の為に頭を下げている。

 『無益の書』って、何なんだ。


 「何だ、見かけねぇ顔だな、オメェさん。言葉通じないのか」


 『無益の書』とは、商人たちが使う翻訳機だ。

 言葉の壁を無くし、帳簿の代わりを果たす。

 イザコザを無くし、争いを少なくする本である。

 帳簿の余白が無くなると、商業ギルドで新しいものが貰える。商人ギルドは、年間費の中から『無益の書』の代金を頂いている。


 「はい、喋れません。マイジェイさんのような、ユニーバ教の方が、近くに住まわれているのじゃ有りませんか」


 「ここの領主が、ベーダー教の熱心な信者で、他の教えを広めないんだよ」


 「どうせ、忘れ物だろ。ラガービールと交換しないか。六本残っているんだが。手間賃として、1本を俺が貰う。良いだろ。決まりな」


 ツーバルは、村長の返事を聞かずに。蓋を開けて、ビールに口を付けた。遠慮していたようだ。


 村長も、見たことのない缶ビールの蓋を開けて、口を付けた。


 「これは美味いな。もっと無いのか、ツマミも欲しいの」


 僕は、商人のマネをして、余白に注文を書き足した。

読んでいただき、有難うございます。

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