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異世界タウン take2  作者: 愛加 あかり
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ショットコーン

直孝たちは、林を抜けて。ハルル・バレーに入った。

見渡す限りの広大な畑が、2人を迎えてくれたが。

言葉は、通じなかった。

ジェスチャーを、交えての会話だが。通じることもなく、マイジェイさんを探した。




 なだらかな、下り坂を抜けると同時に、道がひらけた。

 林を、抜けると温かな日差しが、僕らを迎えてくれた。異世界と地球では、昼夜が逆転しているようだ。


 ハルル・バレーは、マイジェイさんが言った通り。広大な畑が広がっている。

 道の左右に、小麦が風に揺らいでいる。

 山からの吹き下ろしだろうか、少し強い風が吹いている。


 驚いたのは、人が多い事だ。牛や馬も同じで、畑で土を耕している。

 中には、色々な獣人も混じり、人々と同じ作業をしている。

 奴隷のように、扱われているようには見えない。

 僕らもそうだが、あちらもこっちを見ていて。皆で、僕らの事を指して噂している。


 時折、数人で近付いてきたり、1人で物珍しさに近寄る者もいたが、話がかみ合わないが。

 『ユニーバ』の名を出したら、皆同じ方の山を指して、説明をする感じだ。


 マイジェイさんは、ハルル・バレーを通過して、次の街に旅ったようだ。

 翻訳機がないので、何とも言えない。


 6、7人目の時に、事件が起きた。

 集落の中心に向かうに連れて、小麦からコーンに作物が変わっていた。

 僕が、車を降りて、体格の良いアゴ髭を蓄えたおじさんに話しかけられていると。


 助手席で眠っていたお祖父ちゃんが、起きてしまい。車から逃亡を図った。

 僕は、話を聞くのに大変で、ジェスチャーを交えていたのだが。


 分かる訳もなく、『ユニーバ』と、言って。

 アゴ髭オジサンも、同じ山を指した。


 お祖父ちゃんは、勝手にアゴ髭オジサンの畑に入り、太ももサイズのコーンを毟り取り。

 皮を剥いで、そのままコーンに齧り付いた。


 お祖父ちゃんは、初めての体験をして。

 荷台に積まれた、クーラーボックスから、キンキンに冷えたビールを取り出して、のどを鳴らし、コーンの砕けた粒と一緒に喉の奥に流し込んだ。


 「プハァー。これまた甘いコーンだな」


 このショットコーンは、糖度が20度以上有り、トロケそうな程の甘さを持っている。

 ショットコーンの由来は、完熟すると勝手に皮を剥き、夜中に種子を飛ばすのが由来で。

 平均で、10mは飛ばすらしい。

 種の保存法が、独特過ぎた。


 このショットコーンが、後々事件を起こす。


 アゴ髭オジサンが、お祖父ちゃんを指して捲し立てている。言葉が通じないが、大体の事は理解できた。

 そんな事つゆ知らずで、お祖父ちゃんは呑気に、ムシャムシャとコーンを食べている。

 アルコールが入ると、本来のお祖父ちゃんに少し戻り、強気になる。


 「なんじゃ、わしのビールが欲しいのか。早く言えば良いのに、Give me beerぐらいなら、わしでも知っているぞ」


 お祖父ちゃんは、クーラーボックスから未開封の缶ビールを取り出して、アゴ髭オジサンに渡した。

 アゴ髭オジサンは、キンキンに冷えた缶ビールを受け取り、驚いていた。


 『何だこれは、凄く冷たいぞ。魔法なのか、詠唱も唱えていない、魔法陣すら見えなかった。飲み物のようだが、水滴が付くほどの温度だ。不思議な乗り物に乗り、馬車では無い』


 アゴ髭オジサンが、難しく考えていると。


 「なんじゃ、プルタブの開け方も知らんのか」


 お祖父ちゃんは、もう一度アゴ髭オジサンから、ビールを奪い取ると。イージーオープンエンドを開けて、アゴ髭オジサンに返した。


 「ビールは、ラガーに限る。キンキンのうちに飲み干せ、生きている幸せを実感できるぞ」


 アゴ髭オジサンは、まだ冷たい缶ビールを、返されて。躊躇なく口を付けた。

 最初に、冷たいと感じた。畑仕事をして、のどが渇いていた事もあり、喉が次々と冷たいビールを求めて、半分ほど一気に飲み干し。

 苦味と切れ味に、アゴ髭オジサンも畑へ走り、コーンに齧り付いた。

 アルミ缶を強く握り過ぎて、変形していて。コーンを食べながら、二口で飲み干している。

 アゴ髭オジサンは、コーンを大きなカゴにいっぱい詰めて戻ってきた。 


 僕にも一つ渡して、オジサンさんから、次のビールを貰っている。

 ショットコーンは、かなりの大きさだが、粒はそれ程大きくは無く。少し硬い皮で、弾けると物凄く果樹のような甘さが、口いっぱいに広がった。

 僕は、運転もしているし、未成年だから水筒のほうじ茶で、甘さをリセットした。


 朝一のコーンは、どれだけ甘くなるんだ。そんな事を考えつつ辞められない。


 お祖父ちゃんは、助手席から荷台の上に敷いた鉄板の上に、アゴ髭オジサンと座り、ビールとコーンで仲良くなっていた。

 言葉は、通じていないが、乾杯を何度もしている。

 落ちないように、ロープを体に括り。ロープの端は、ロールバーに結ばれている。

 アルコールの弱いお祖父ちゃんは、途中から眠りについた。

 無理もない、昼夜逆転しているし、アルコールも含んでいる。

 アゴ髭オジサンは、お祖父ちゃんを支えつつ。クーラーボックスに、肘をかけてビールを口にしている。


 中心に付くと、アゴ髭オジサンと、会話が成り立った。

 「そろそろ、大丈夫かな。お前体どこから来たんだ」


 「あれ、何で会話が。ユニーバ教の方が居られるのですか」


 集落の中心は、大きな市場みたいになっている。

 露天や商店が立ち並び、見慣れないモノが大量に売っている。


 「お前さんのこのエールも、ここに並べたら直ぐに無くなるぞ。これは、いくらだ。毎日でも飲みたいが」


 「まだ、通貨の単位が分からないので。300円だと思いますよ」


 「それって、銅貨が300枚か。銀貨じゃないよな、何本も飲んじゃったよ、俺」


 「それを飲み干したら、皆にバレないようにして下さい。値段が決まっていないので」


 アゴ髭オジサンは、大分酔が回っているようだったが。ビール一本、銅貨300枚で計算して。頭を悩ませた。


 ここでも、皆が寄って来て、話しかけられた。


 「お兄ちゃん、ハルル・ベリーのジャムを使ったクッキーは、いりませんか。とっても美味しいよ」


 小さな女の子が、玩具のカゴに数枚のクッキーを入れて、物売りをしている。


 「ごめんね。お兄ちゃん、この国に来たばかりで、お金持ってないんだ」


 後ろの荷台から声がかかった。


 「ブリーナ。お兄ちゃんに、クッキーを渡してくれ。オジサンが、お金を立て替えてやる」


 僕は、運転席の窓から頭を出して。


 「そう言う訳には、行きませんよ。ビールを出したのは、お祖父ちゃんですから」


 「良いんだ、ブリーナから受け取ってくれ」


 ブリーナは、玩具のカゴごと渡して来た。


 「今日も有難う。ツーバルオジサン」


 ツーバルオジサンは、悲しげに返事を返した。


 「カゴは、後で返したら良い」

読んでいただき有難うございます。

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