朝熊
直孝は、朝熊の公認を取り。老虎組のバックアップをする事となった。
これは、逃れられない二人の運命だった。
僕は、老虎組の事務所に来ていた。
娘の前原優子さんを傷モノけてしまった事と、1日多く預かってしまった事について謝罪して。
「娘さんを、僕に下さい」
色々、その他諸々、全てをこの土下座にかけた。
朝熊は、逆の不始末をしたとか、粗相をしたとか、不安でしか無かった所に。朗報が飛び込んできた。
「北条さん、うちの娘で宜しいのですか」
「色々と、優子さんとお話しました。多くを語れませんが、優子さんは、僕を受け止めてくれました。次は、僕の番なんです。娘さん。優子さんを、僕の嫁に下さい」
「お父さん。アタシからも、お願いします。運命なのです。直孝さんを、支えられるのはアタシだけです。お願いします」
優子は、直孝の後ろで、頭を下げた。
「不束者の娘ですが。末永く、宜しくお願いします」
「僕なりに、優子さんを幸せにします」
「式は、どうするつもりだ」
「お父さん、まだ早い。私も、仕事は続けるつもりだし。週一だけど、休みは異世界タウンで過ごすつもりよ。直孝さんのお祖父ちゃんの家が空いているそうだから、そこで、週末婚から始めるつもり」
「お母さんには、伝えておけよ」
「暇を見つけて寄るつもりだけど、当分先の話よ。今は、ドラマが入っているし、向こうの食材を色々と試したいから、忙しくなりそう」
「北条さん、親の私が言うモノではないが。優子の料理だけは、絶品ですから。期待してて下さい。変な物は絶対に出しません」
「お父さん。アタシのハードルを上げないで。直孝さんは、口が肥えてるから、タダでさえ自信無いのに。プレッシャーにしかならない」
「優子さんの、愛情がタップリ入った料理なら、不味い理由無いじゃないですか」
2人は、首を振った。
「勿論、優子さんのお料理は、美味しく頂く予定です。本心です」
「変な物を、作らないようにします」
これで、老虎組のバックに、異世界タウンが付いた。
国内だけでなく、海外にも顔が利く。
関東の平和は、老虎組が抑える形になった。
また、エルフが無理難題を持ってきた。
違う。頼んできた。
『オッパイが欲しい』と、言ってきた。
しかも、男だと言う。
エルフは、男女共に筋肉も無く。胸も、尻も、ペッタンコなはすなのに。
海外研修で、シリコンの胸を学んだらしい。
エルフは、スルメとビールで、収まっていたのだが。最近は、バルト三国へ研修へゆく度に、多くを学んで帰ってくる。
今回は、大阪の西成へ問題エルフを連れていき、緊急手術となったのだが。
他のエルフたちが、この行動を羨ましく思い。
西成の男を、異世界に呼んだ。
姿を消していたエルフたちが、自慢するかのように市場で現れ、ボインボインになった胸を自慢している。
問題となったバベルを解体して、女性専用の美容整形の店を西成から来た、咲山に任せた。
ネオバベルは、半分を手術室にして。個室を大量に設けた。
手術をして、直ぐに退院とならずに。
1週間のダウンタイムが必要で。
術後の2、3日は、患者の苦情に追われて。
胸だけでなく、お尻にもシリコンを入れて、大きく見せることが大事だった。
美容整形の噂は、千里を走り。シリコンが、砂金の3倍の金額で売れ始めた。
下級の貴族であればあるほどに、娘を良い所へ嫁がせようと、金をかけた。
下級の貴族たちに負けまいと、中級の貴族たちも、ネオバベルに通い。
地下の下着売り場が、サイズアップに伴い。再び脚光浴びた。
特に、ドレス用のヌーブラは、商人たちにより。娼館でも、裏取引された。
益々、異世界タウンは、勢力を強め。
面白くないガーハタグ男爵が、市場で幅を利かせるようになり。獣人の警備が始まった。
獣人たちの鼻頼みだが。
ガーハタグ男爵が市場に近づくと、獣人が市場の中を走り。店じまいを始めて。
蜘蛛の子を散らしたように、誰もいなくなった。
ガーハタグ男爵領からの送金は乏しく。
市場での収入が減り。
映画館に居座り。毎日、金貨5枚をせびりに来ていた。
こうなると、ガーハタグ男爵の寄親、探しが始まった。
特区、異世界タウンでは、前原優子が通い妻をしている。
「御免下さい、こちらに、西島権蔵さんは居られますか」
宅配便の人が、お婆さんの家を訪れた。
「は~い。少々、お待ち下さい」
エプロン姿の前原優子が、古びた民家から顔を出し。若いお兄さんが、緊張している。
ここ、異世界タウンでの事は、口外してはならない。宅配便のお兄さんは、良く知っている。
「前原優子さんですよね。サインして貰っても宜しいですか」
「ハンコでも、宜しいですか」
優子は、朱肉と認印を手にしている。
「はい。大丈夫です」
宅配便のお兄さんは、ペラペラのレシートを差し出して。
優子は、慣れない手つきで、西島の認印を押した。
「あの、違うんです。トラックの中に、色紙を持ち歩いているので、サインを頂けますか」
宅配便のお兄さんは、レシートを受け取り。
もう一度、サインを要求した。
「日時を書くのは、控えても宜しいですか。サインだけなら構いませんよ」
「はい。口外しませんし。家宝にします」
お兄さんは、トラックに走り。
真ん中の椅子を倒して、裏から大量の色紙を取り出さして。真ん中辺りから、スッと1枚取り出した。
真っ白で、折り目も付いていない。
マジックも、数本用意されている。
ここは、異世界タウンで、世界中の著名人が集まる場所の一つだった。
「お待たせしました『相模くんへ』で、お願いします」
『さがみくんへ』となり。
書き慣れたサインを、キュキュと鳴らし。
『頑張ってね』と、付け加えられた。
相模は、大事そうに抱えて。何度も頭を下げている。
優子は、一度手を振っただけで、キッチンに戻った。
「もう、ウサギのお肉、少し焦げちゃったじゃない」
キッチンには、照り焼きの香りが広がっている。
与田さんの照り焼き兎肉を、フライパンで調理していた。
「先ずは、お手並み拝見」
優子は、鶏肉と異世界の兎肉の違いを確認すべく、試食をしようとしていた。
「おはようございます。直孝さん」
僕は、照り焼きの匂いに釣られて、10時に起きた。
ギリギリの朝5時まで、異世界で働き。食事を取らず寝てしまったから、お腹が空いていた。
優子は、冷蔵庫へと走り。直ぐに戻って来た。
「お食事にしますか。私を、召し上がりますか」
優子の手には、スッポンの血が握られていて。
僕に、選択権はなかった。
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