僕の部屋
直孝は、前原優子に、全てを打ち明けた。
前原優子も、直孝を受け止めて、将来を誓ってくれた。
直孝は、打ち明けた事により、前向きに歩み始めた。
ヤッてしまった事を、後悔するよりも。前原優子の事を気にかけながら、東京へと向かっている。
「どうしましょう。お父さんが、赤飯炊いていたら。直孝さんは、どう思いますか」
「だから、謝罪をしに向かっているのです」
「お父さんは、謝罪をしに東京へ向かっているそうです」
「だから、何故お腹に語りかけているのですか」
「着床、しましたから」
「待って下さい。着床って、少し、リアル過ぎますって」
僕は、開いたパソコンに、ここれまでに
起きた事、これから起こるであろう事を、なぐり書きしながら、前原優子の相手をしている。
「できた」
僕は、右に座る前原優子を、見つめながら。
「朝熊へ。100億円さし上げますから、娘さんにヒットマンを差し向けて下さい」
「もう、真面目にやって。フレイも、お父さんを叱ってるよ」
『僕は、これまでの事を、全て前原優子に、話した。雪女の事、タイムマシーンを作るであろう事、僕は、30代後半で亡くなる事、前原優子さんが、タイムマシーンで、僕の童貞を奪いに来る事、長女がフレイ。次女がビクトリア。長男がブラーインになる予定。不思議な指輪。』
全てを話したら、泣いていた。
自分で、抱えたいた何かが、音を立てて崩れ、解放された。
僕は、目の前の前原優子を愛し。子供を授かり、早くして、生涯を終える。
残された、前原優子と3人の子供たちの為に、異世界を立て直し、異世界タウンを発展させないと、いけなかった。
『これが僕の業であり。運命だ』
僕と言う人間を受け止めてくれた、前原優子に、大変に感謝をしている。
こう言っては何だが、余命を告げられた感じだ。
自分を、さらけ出して、幸せを感じる事で、死ぬ事の怖さを知った。
個人では無い事に、幸せを感じ。分け合う事で、幸せを感じ。生きている事で、幸せを感じ。また、個人で無い事を知る。
何気ない日常が、僕の幸せとなる。
僕は、右手を伸ばして、前原優子のお腹に手を当てた。
「フレイは、まだまだお腹で、待機しててね。お父さんとお母さんの、楽しい時間が有るから。もう少しだけ待ってて」
「もう、楽しい時間は、後で」
前原優子は、僕の右手を握り返して、肘置きに移動をさせ。
左の肘置きに、体重を移動させて、僕に、顔を近づけた。
僕も、右の肘置きに、体重をかけて、目を瞑り、前原優子にキスをした。
「でも、京都へ行かなくても良かったの」
「大丈夫です。体調不良って事にしましたから。本日は、お休みです。それより大事な事を、しなければならないのです。2人に取って、未来の為に、すべき事です」
僕らは、東京へ向かう途中で、高速を降りた。
「大事な事だけど、今なの。今日じゃなきゃ駄目なのかな」
「善は急げ。アタシは、物覚えが酷いですから」
「それは、言い訳なの、口実なの」
「両方です。大至急、すべき事です」
「実家の俺の部屋を、確認する事が」
「中学生の直孝さんを、合法的にヤル。夫婦なのです。時間の差は、あるでしょうけど、公認です。アタシが、ショタだったら、燃えてると思います」
「十分ショタを、していた感じするよ」
「それでもです。場所の確認は大事です」
「そんなに、京都に行きたくないの」
「違います。まともに歩けないのです。直孝さんが、激し過ぎたから」
「はい、はい。僕が悪いです。理性が保てなかった、僕のせいです」
「もう。大好き。アタシを責めない直孝さんが好き。直孝さんは、アタシの事好きですか」
「僕も、好きです」
「え〜。愛が足、り、な、い」
「面倒くさい、女になってますよ」
「やだ、やだ。いっぱい好きって、言ってよ」
「大きな、オッパイを揺らして、せがまないで下さい」
「次の、配役がこれなので。『頭の悪い巨乳が、世界を救う』の、メインヒロインの牛野ミルク役です。奇抜過ぎる服を着せられているので、抵抗は有りますが、主人公が、馬鹿な役なので、セリフが覚えやすくて、助かります」
「色々と大変なのですね」
「大変ですよ。今日は、内股で歩けないので、お休みです」
「また、ここに戻るのですか。僕が悪者です。ごめんなさい」
「直ぐ謝れて偉い」
そうこうしている間に、実家のマンションに着いた。
僕が、先に車を降りて、ゆっくり、わざとぎこちなく歩く、前原さんに合わせて、手を差し出す。
「有難う」
油断を誘うような、笑顔に顔が緩む。
車を、降りてからも、腕を組み、胸を押しつかられながら、エルグランドを見送った。
大丈夫。誰もいない。皆、仕事に出ているはずだ。
学生気分のような、気持ちは無い。
説明が面倒だから、鉢合わせたく無い。
年の為に、エントランスで、インターホンを鳴らしてみる。
『ピンポーン』『ピポ、ピンポーン』
途中、連続で押してみた。
『留守のようだ』
財布から、懐かしいカードキーを取りだして、自動ドアを開けた。
そのまま、正面のエレベーターに乗り込み。5階へと向かった。
「ドキドキしてきた。誰も、居ないみたいだったね」
「皆、仕事に行っているんだろ」
「今日、家に誰もいないんだ」
「駄目よ、映画見るだけって」
「そのつもりで、家に来たんだろ」
「そんなつもり」
「一人芝居すな。お前は、高校生か」
「良いじゃない。普通に学生出来なかったから。こんなシチュエーション夢見ても」
「それでも、ベタ過ぎるだろ」
「ベタが良いの。この良さを知らないなんて、お子様だな、直孝さんは」
『チン』
僕は、言いかけた言葉を飲み込んだ。
緊張と大女優を連れている事で、騒ぎを起こしたくなかった。
静かに、廊下を歩き。人が増える前に、現場を確認させて、退散して。朝熊さんに、謝罪をしなければならない。
ここを出る時は、こんなにジャラジャラと鍵は付いて無かった。
家の鍵だけだったのに。お祖父ちゃんの家の鍵が付き、異世界の家の鍵が付き、徐々に一つずつ増えて、重たくなっている。
久しぶりに、家に帰ると。物で溢れていた。
「ただいま~」
誰の返事も無い。
靴を脱ぎ、ゆっくり中へ入った。
そのまま、奥へ行き。左の2番目の扉の前で止まった。
「ここが、僕の部屋」
ゆっくりドアを開けると、ここにも大量荷物が捨てられている。
「完全に、物置だね」
「物置に、変えられちゃってるね」
懐かしさも、思い出も無かった。
「アタシは、ベッドで横に並んで、アルバムを観るのを想像して、楽しみにしていたのに」
「今日は、時間無いから。アルバムは今度。探すの大変そうだし」
僕は、冷蔵庫にハルルベリーを置いて、家を出た。
『ただいま』と、だけ、持ってきた紙袋に書き残し。テーブルの上に置いた。
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