初体験
誰も知らないレシピ。ハルルベリーのお酒。
お酒を、混ぜるのでは無く。発酵させたお酒。
直孝一押しのお酒。
僕は、前原優子と共に、エルグランドの後部座席に座っていた。
勿論、何もしてないし、するつもりも無い。
純粋に、僕の舌を馬鹿にされたから、悔しくて、秘蔵酒を、ご馳走しようとしただけだった。
「これから向かう場所は、昼夜逆転している世界で、文明はかなり遅れています」
「100年くらいですか」
「よくは、知らないが。鉄砲のない時代だ。500年以上昔で、貴族階級が残ている」
「かなり、文明は劣ってますね」
「だが、エルフと獣人がいる世界だ」
「獣人も、いるのですか。どんなのがいます」
「前原さんは、『リアル過ぎる』をご存じですか。あれが、本物の獣人です。まだ、動画は残っていたはずだが。コレですコレ」
僕は、スマホを取り出し。『リアル過ぎる』の動画を流した。
「コレなら、見た事あります。物議を醸したヤツですよね」
「そうだね、いっぱい叩かれたし、応援もしてもらった。異世界を続けるキッカケにもなった」
沢山の思い出が、そこにはあったが。
「今は、寝た方が良い。寝れる時に寝る。僕は、先に体を休めるよ」
無防備を晒し、椅子を限界まで倒して眠りについた。
異世界タウンに到着すると、大女優の前原優子でも、30分以上のボディチェックを受けてもらい。ゲートの中へ入ることが許された。
「申し分ない、パスを作らすようにします」
「本当にですよ。女性同士とはいえ、あんなに辱められるとは、思ってもみませんでした。パスとすっぽんとフグを頂かないと、気が済みません」
「ご希望に添えられるよう、善処します」
エルグランドは、そのまま軽トラの方へ向かい。
連結した後で、消えた。
異世界へ到着すると。
「そのまま、ハルルの市場の方へお願いします」
僕らには、少しの猶予しか残されてなかった。
市場へ到着すると、前原優子を連れて。ハルルベリーのおばちゃんの所へ向かった。
「こんにちは、おばちゃん。オヤツは、まだ有るかい」
「おや。今日は、ベッピンさんをお連れだね。私は、アンタが、ヒツジを連れてるより、その子を連れてる方が良いと思うよ」
「有難う、おばちゃん。僕も、そう思うが。急いで来たんだけど、今日のオヤツは終わっのかな。おばちゃんのオヤツを求めて、この子を連れてきた」
「有るよ。人のオヤツを横取りするのは、悪い癖だよ。女の子に嫌われるよ」
「ごめんなさい。アタシが無理に、お願いしたから」
「あんたのせいじゃないよ、この男は、いつも、顔を出すと。私のオヤツを、横取りするのさ」
「人聞きの悪い、ちゃんと金貨1枚払っているよ。僕は」
「そうだったかね。楽しみが、金貨に変わる。今日のオヤツは何にす、る、か、な」
おばちゃんは、嫌味を言いながら、オヤツを渡してくれた。
おばちゃんの顔は、垂れるほどニヤけている。
コレの扱いは、慣れている。
少し、硬い皮を剥くと、薄い皮だけになる。
薄い皮の中は、自然発酵したお酒になっている。
ハルルでも、おばちゃんしか知らない。
僕が、一番美味しいと思うお酒。
「プニプニの皮に包まれた、ハルルベリーのお酒です。コレを飲んで、美味しくないのなら、僕の負けです。バカ舌です。認めましょう」
僕は、そう言い。おばちゃんのテーブルからプラスチックのストローを取り。前原優子に渡した。
僕は、左手に持った、ハルルベリーを突き刺す動きをすると。
前原優子は、プニプニのハルルベリーに、先の尖ったストローを刺した。
力加減、出来ずに、ストローと周りから、果樹が溢れ。
慌てた、前原優子は、ストローの先を咥えた。
何とも言えない、芳醇な桃のお酒。酸味も押し寄せが来る。甘酸っぱいお酒。
前原優子は、ストローを咥えながら。
どうして良いのかが分からない。
取り敢えず、独占はマズイと思い。
僕に、渡そうとしてきた。
「前原さんが、堪能して下さい。その為に連れて来たのですから」
溢れてくる勢いが止まり、前原優子は、息を整えた。
「何コレ。初めての味なんだけど。切った実を、そのまま、熟成させた訳じゃないよね」
「その通り。木にぶら下がっている時に。実に、切り込みを入れるんだ。刺激で、ぶら下がったまま、熟成が始まる。黄色いうちに、傷付けるのが、ベストで。1週間で、赤くなる。柔らかくなったら、のみ頃だ」
前原優子は、東南アジアみたいに、ビニール袋からストローを出して、ハルルベリーのお酒を、堪能していた。
ここで、問題が起こった。
前原優子のブサイクメイクが崩れた。
ハルルベリーのお酒をかぶり、顔のメイクごと拭き取った。
この時点で、80%前原優子だった。
だが、他人のそら似で、押し通し。市場を散策していると。
ガーハタグ男爵に遭遇した。
「落ち着いて下さい。絶対に、顔を上げないで下さい。貴族ですので、逆らうと厄介です」
市場の皆は、手を止めて、道の端に寄り、膝を付き、頭を下げた。
貴族は、市場などに来ない。
だが、こいつは違う。
ヘイリス男爵領なのに、市場で問題を起こして、平民からお金を取る、ケチな貴族だ。
ハベルでも有名で、こいつだけ換金していた。
ディーラーたちが、何度も馬鹿にされ、苦情も上がっていた。
だが、今のバベルは、客がなく。大勝ちも出来なくなった。
そして、市場に場所を変えて、庶民を虐めている。
「久しいな、直孝殿。ハベルを失い、逃亡したかと思ったぞ」
「少々、体調が悪く、歩き回るのも困難で。本日はこれで、お許しください」
直孝は、ハンカチを取り出して、中の金貨を広げて見せた。
「良い心がけだ。皆も、見習うように」
ガーハタグ男爵は、ハンカチの金貨5枚をすべて奪い、視線に気付いた。
「ソナタ、優子に似ておるの」
前原優子は、やり取りの全てを見ていた。
優子の名を出されて、我に返り、俯いたが、後の祭りだった。
「ガーハタグ男爵様、見間違いではないですか」
僕は、違う方のポケットから、10枚入りのハンカチを取り出した。
「直孝殿、なんだその手は。邪魔だ、手をどけろ」
「出来ません。この方は、当方のお客人です。無礼が有ってはなりませんので。どうか、これで、この場を抑えて頂けませんか」
「駄目だ、そんな、はした金など要らぬ。手を退けよ」
「出来ません。この身に変えましても、この方に、指一本、傷一つ付ける訳にはまいりません。ここは、僕の顔を立ててくれませんか」
「ソナタ、顔を上げよ。儂の6番目の側室にならないか。好きな物を買ってやるぞ。どうじゃ」
「お断りさせて頂きます」
前原優子は、立ち上がり。ガーハタグ男爵にお断りを入れた。
「何じゃと。儂は、ガーハタグ男爵だぞ。頭が高い控えろ」
「姫様、なりませぬ。お控え下さい」
直孝は、馬鹿な真似をした。
違う。操っているのは、エルフだ。
面白おかしく、ガーハタグ男爵も、操っているのだろう。
「姫様だと。直孝殿、本当の事か」
ガーハタグ男爵、ビビっている。
「姫様に、指一本、傷一つ付けたら、僕が、この国を滅ぼします。国から、兵を引き連れて、この国の隅から隅で、蹂躙します」
「そうならない為に、ここは、これで勘弁して下さい」
僕は、ガーハタグ男爵に対して、頭を下げた。
「今日のところは、これで、勘弁してやる」
ガーハタグ男爵は、僕の手から金貨10枚を取り。去って行った。
ここで、歓声が上がったが。
僕は、膝から崩れ落ちた。
前原優子は、力尽きた僕の前に回り込み。
熱いキスをした。
そこで、更に歓声が上がった。留まる事を知らない、湧き上がる、地鳴りのようなモノを感じた。
僕は、やはり情けなく。前原優子が、支えてくれて、立ち上がることが出来た。
そして、鳴り止まぬ歓声の中、市場を去り。ニュータウンへ逃げ込んだ。
前原優子に、金貨20枚を預けて、誰も使っていない家へ案内させた。
警備の獣人を20人配置に付かせて、警備をさせた。
僕も、使われて無い、家に向かった。
スーリピが、アルクサンダーを葬った家だ。
焼きごて何かを使うから、匂いがナカナカ取れない。
捨てる事も、焼き払う事も出来ずに、たまに使っている。
僕は、大変な1日で疲れていたのに。
前原優子は、獣人から、情報を聞き出していた。
まず、金貨で大量のアルコールを、獣人たちに買わせて。
酒と摘みを餌に、両替された銀貨を使い、情報を得ようとしていた。
異世界の常識。ぱるるの村の事。獣人。エルフ。ハルルの住人。貴族。映画館。北条直孝。西島権蔵。マユタナ。
得られる情報は全て買い取り。100人以上の獣人のメスに。金貨20枚分を配った。
僕は、夜這いに遭った。
寝袋で寝ていると、誰か、入ってきた。
また、キスをされて、起こされた。
後頭部を強打は、していない。
「お慕いしてます。直孝さん」
前原優子の声だった。名前呼びしたのが恥ずかしかったのか。照れ笑いも感じた。
興奮もしていて、鼻息も荒い。
僕の服を、脱がしにかかっている。
「駄目ですよ。酔っているのですか」
僕は、寝ぼけながらも、前原優子を退かそうと手を伸ばした。
凄い肉感だった。服に触れていない。
「優しくして下さいね」
もう一度、デープなキスをした。
そして、前原優子は、隠し持っていたモノを出した。
最初に出したのは、紙切れだった。
「ねぇ。直孝さん。これ読んで」
前原優子は、スマホのライトを紙切れに当てて。読むように指示した。
僕は、寝ぼけていたのか、文字が小さ過ぎたのか。紙切れに、顔を近づけた。
「何ですかこれは」
「SEXの同意書です」
違う、僕が聞きたかったのは、別だった。
騙された。そんな手の込んだ事をする奴は、誰だ。
この紙は、フェイクだった。獣人のフェロモンの匂いがした。
顔を近付けて、思いっきり嗅いだ。
理性が飛びそうになる。
助けたのは、前原優子だった。
口移しで、マカすっぽんの血を飲ませてきた。
僕は、抵抗を辞めて、野獣になってしまった。
目が覚めると、ペニスに血が付着していた。
前原優子の股間からも、出血が有り。
生理では無いと言う。
僕が、前原優子を、傷付けてしまった。
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