運命の出会い(前)
運命の人は、意外な人の娘でした。
直孝は、前原優子をファーストフード店で見つけて。玩具を渡した。
僕は、東京の料亭に呼ばれていた。
南川が、どうしてもと言うので、日時を合わせて、東京へ向かったら。先に着いてしまった。
100億は、大金では有るが。捨てた訳では無いし、湯水の如く湧く金も有ったので、大した問題は無い。
使い道に、困っていた金の方が正しい。
銀行へ預けると。通しを勧められ。
通しをしようとすると、国債を勧めてくる。
国債なんて、100億、200億突っ込んでも変わらないだろ。
通しをするなら、自分の会社にやるよ。何故他人を助ける。
銀行なんて、自分で創業した方が、お金を回せる。そんなレベルだ。
僕は、静岡の田舎から、車で来ていた。
余裕を持って行動していたから、時間が余ってしまった。
取り敢えず、料亭へ入るのも許されず、久しぶりに、ファーストフード店へ入った。
お昼を過ぎた時間だったが、少し賑わいを見せていた。
原因は、新作玩具を狙ってのことだった。
大の大人が、子供たちに混ざり。お子様セットを購入していた。
僕も、その中に混ざった。
大して、興味を持たなかったが、流行りに乗った感じだ。
大して、お腹も空いたなかったし、お子様セットの玩具もノリで、買った感じだ。
僕らしくない。
サーモグラフィーを出したら。一人付いていた。
そして、ポテトを食べ進めていると、新たな、エルフを見つけた。
それは、偶然だった。僕以外に、エルフが付いている人を見たのは始めだ。
命令して、人に付けた事は有ったが。
このエルフは違う。元々、女性に付いているエルフだ。何故か、断定できる。
女性の前には、大量の玩具が並び。お子様セットは、周りの子供に分け与えていた。
僕は、大手を振り。エルフに気付いて貰おうとしたが。
エルフも、女性と同じように、玩具に夢中だった。
僕は、女性に近付き。未開封の玩具を彼女へ渡し、その場を後にした。
芸能人を初めてみた。
しかも、大女優を。周りから、少し浮いた存在だったが、騒がれても居なかった。
皆、玩具に夢中だ。
僕は、緊張のあまり、声が掛けられず。そのまま、逃げる感じで、ファーストフード店を後にした。
十中八九、運命の人だと思う。
だが、確証もなければ、楽しんでいるのを、邪魔も出来ない。
あの場で、サインなんか求められないし。
色紙も、持っていない。
疑いを持ち始めたのは、歩道を歩き始めてから。
ドラマなら、追いかけて来るはず。
中二病の極みだ。自尊心が砕ける音がした。
適当に、カフェに入り。スマホを見ながら時間をつぶした。
2時間ほど、時間をつぶし。
僕は、18∶00になったのを確認して、料亭へと向かった。
10分ほど徒歩で移動して、料亭に着き。部屋へ案内されたが、誰も来ていない。
部屋まで案内されたから、間違いでは無いはず。
僕は、南川へ確認の電話を入れた。
「南川さん、どう言う事ですか。貴方まで来ていないとは、ふざけていますか」
「今回は、朝熊組長が外してくれと、連絡を受けまして。朝熊に、全てを任せたのですが、連絡を取ってみます」
僕は、中居に見られながら、電話をしている。
手の平を見せ、飲み物のオーダーを欲しがる中居に対して、申し訳なく思いながら、待ってもらっている。
一方中居は、キャンセルなのか、不安を抱いていた。
南川の方から、連絡が入った。
「朝熊の方は、料亭の入り口に居るようなのですが、会わせたい人が居るとかで。その方が遅れているようです」
「分かった。それなら、もう少し待ってみるよ。こっちの方は、気にしないで良いから、事故の無いように、お願いだけしてて下さい」
僕は、先方に気を使い。電話を切り。
「もう少し、待ってもらえますか。表には、来ているのですが。連れを待っているみたいです。ごめんなさいね」
「さようですか。また、揃いましたら、お声がけ下さい」
中居は、戸を静かに閉めて、姿を消した。
僕は、座っていた座布団を直し。
一度立ち上がって、定位置に有るかを確認して、下座に席を変えた。
それぐらいは、許されるだろう。
僕の些細な虐め。遅れるほうが悪いのだから。
もう一度、中居さんを呼び、ビールを頼んだ。
「ビールを、大至急頼めますか」
中居さんも、僕が席を移っている事を知り。
「直ぐに、お持ちします」
手慣れた対応を見せた。僕以外にも、こういう事をする奴がいるのか。
世の中広いと思わされた。
中居は、ビールを準備して。そそくさと、部屋を出た。
一人で、手酌ビール。
威圧感は凄いな。
15分ほど遅れて、朝熊が、焦って部屋へ来た。
お連れの方は、前原優子。
大女優様だった。
「遅くなり、大変申し訳ありません」
部屋の敷居を跨がずに、廊下で頭を下げた。
大物女優の前原優子も、頭を下げている。
「遅れて、申し訳有りません」
エルフも、両膝を付き頭を下げていた。
サーモグラフィーでしか、分からない。
「そんな事をされたら、コチラが困りますから、ささ、席に付かれて下さい」
「いえ。北条さんが、お席を移るまで、このままでいたいと思います」
凄く、お店に迷惑な方だ。
「面倒くさいな。分かったよ」
僕も、大人気ないし。下らないと思いはしたよ。だけど、何も無しは、気がすまない。
小さな反抗たろう。
ビール瓶とコップを持ちながら、席を移動した。
12畳程の部屋、調度品は、それなりの坪と掛け軸で、花瓶に花が飾られていた。
「遅れて、すみませんが。お食事を運んでもらえますか」
朝熊は、中居に声をかけて、料理を頼み。部屋の敷居を跨いだ。
襖を閉めたのは、前原優子だ。
直ぐに頭をこちらに向けて。
「遅れたのは、アタシのせいです。朝熊は、関係ありません。処罰なら、アタシが受けます」
「たかが、10分15分遅れた、だけで。何を要求したら良い。後々、逆恨みされるだけろ。僕の仕返しは、下座に座るくらいの、小心者だ」
「ご謙遜を。常人が、老虎組を半壊なんて出来ません」
「あれは違う。私は、願っただけで、やったのは違う奴だ。後で説明する」
料理が運ばれ、中居が部屋を退出してから、朝熊は、問題発言をした。
「コチラは、前原優子さんで、私の娘です」
「はぁ゙〜」
「宜しいのですか」
「問題無い、北条さんには、全てお話するし。前々から話していた通り、お前を、担保として、北条さんへ預ける。すまない」
「えぇ、それは、聞いてます。聞いてますが、納得はしてません。そこは、聞き入れて下さい」
「はぁ゙〜、待て待て。何を、言っている。担保って何。人質なの。前原優子が。正気か、馬鹿オヤジ」
「誰、彼に預ける訳では、有りません。北条さんだから、預ける訳で。信用しています」
「少し、考えさせてくれ」
僕は、酢の物に手を付けて、噎せ返した。
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